| ■おっぱいチューチュー 前々からソウシハギの面白い習性を皆さんにご紹介しようと思っていたのですが、どういうわけか叶わないでおりまして、いつしかスッカリと忘れてしまっておりました。それがですね、つい先日のことデス。飼育するには最高のサイズの個体を採集することができ、これをリーフ・タンクに収容したところ、思ったとおりの行動を私に見せてくれました。最近物忘れの良い(?)syunさん、またまた忘れてしまわないうちにお話しておきましょう。 その前にソウシハギについてちょっとだけ。(画像はこちら) ソウシハギはカワハギの仲間で、幼魚の頃は流藻や漂流物に付き、成魚は2フィート(約60cm)以上になります。腸に毒(シガテラ毒アルテリン)を持つことがあるそうですから、むやみに食べちゃうのはちょっと危険です。 さて、採集したのはC県の某漁港。 土曜日の朝6時頃に到着して、いつものように怪しい格好で漁港の探索を楽しんでおりますと、眼下の大きな流藻にたくさんのマツダイが身を寄せているのに目が止まりました。1cmほどの小さな個体から10cmはあろうかと思われる中型まで、それはもう「マツダイだらけ!」と言っても良いくらい。これだけマツダイが集まると、もう気味が悪いですね。私は少しばかり鳥肌が立ってきちゃって、 (うう、ぶるぶる。こりゃちょいと場所替えをしようっと!) と網を持ち直したときでした。同じ流藻の下に小さなソウシハギがいることに、私は気が付いたのでした。 もともとが細長い体つき。全体的に枯れた柳の葉っぱのような色合いで、こんなのが流藻の中に隠れていたって、チョッとやソッとでは見分けがつきません。でも私には見えたのです。 そこで持っていた網を延ばしてこれを掬って見ると、体長約4cmの手ごろなサイズ。と同時に私の脳裏には、「ソウシハギの奇妙な習性」の姿が浮かんできたのでした。 私が以前に飼育していたソウシハギは何時も「何か」に身を寄せておりました。これはもちろん自然の海でも普通に見られる幼魚の習性なのですが、水槽飼育となると、ある時は水温計に、またある時は水中ポンプのコードにと、その身を寄せることになります。そしてその有様といったら、必ず口の方を「身を寄せる物体」にくっつけるようにしているのです。説明がうまくありませんね。ちょっと下の画像を見てください。私の言おうとしていることがお分かりになるでしょうから。 ![]() はい、このとおり「くっついて」ます。 これはパワーヘッドのコードにくっついているところ。 他に水温計、pHセンサーなどに身を寄せます。 これをちょっと離れたところから見ていると、「身を寄せる物」の一部分を咥えているようで、ちょうど赤ちゃんがおかあさんのおっぱいを飲んでいるように感じられてならないのです。 可笑しな風貌の甘えん坊、そんなところでしょうか?可愛らしいですね。 さて最後に。 「大きくなっちゃったらどうするか?」 ですか? 大丈夫。だって寝るときは本当に何かを咥えて寝てるんですから。そこを捕まえて別の水槽に移せば良いのです。 (99.08.01) |
| ■垂れ下がる白い糸 私という男は「数」には頓着しないタイプです。採集に行っても、気に入った種類を適当な数だけ持って帰ります。いえ、極端な話、たった1尾でも好みの魚が採集できれば良いのです。 これが初体験の魚が採れちゃったりしたら、いったいどうなるのでしょう?初球ホームランまたはノーホイッスル・トライというのは、私にも経験がありませんが、 (あ、もういいや、早く帰ろっと!) という気持ちになってしまうのでしょうね。 これにはきっと二つほどの理由があるんだと思います。 ひとつは、 (早く家の水槽に入れてみたいなぁ!) という気持ち。二つめには、 (今の満足したままの感じを、採集を続けることで褪色させたくないなぁ・・・) そんな気持ちが働くのだと思います、きっと・・・。 さて、学生の頃に通った某磯でのお話です。 漁港の堤防の向こう側には、左右に長く延びる磯が広がっておりまして、私たちはそこに着くと、プールというプールを、それこそ「舐める」ようにして丹念に覗いて歩くのでした。 私たちはこの磯で数えきれないほど多くの死滅回遊魚たちと巡り会っています。スズメダイに始まり、ベラ、ヤッコ・・・。おそらく私はその全ての名前を、漏らすことなく述べることができるでしょう。ここで起こったことの全てが、素晴らしい思い出として、たとえそれがどんなに些細なことであっても、脳裏に強烈に焼きついているからです。 そうやって長いこと通い詰めた磯ともなると、 (どこそこの棚の下には必ずチョウチョウウオがいる) とか、 (あの岩の陰にはイソギンチャクがいて、きっとクマノミが入っている) ということが分かってきます。私たちはそういった場所を隅から隅まで探索をするのでした。 ある日のこと、私はお気に入りの穴ぐらを、次のような期待をもって覗いてみました。 (今日もヒバシヨウジのペアがいるかしら?) ところがその日は見当たりません。試しに仰向けに近い姿勢で天井辺りを見てみましたがやっぱりいません。そこであきらめて別のプールへ移動しようと頭を少し傾げたときのことでした、私は今まで見たことのない奇妙な光景にブチあたりました。 天井から下に向かって伸びる、白くて長い糸のようなもの。それは4本あって、見事な放物線を描きながら水中に垂れ下がっています。いったい何なのでしょう? 私は息が続かなくなって、いったん水から顔を上げました。そして顔を伝う滴を手で拭きながら、もう一度自問してみました。 (今のは何だったのだろう?) 私は息を整えると、もう一度そこを覗いてみることにしました。 (まだ白い糸は残ってるかなあ・・・) なんて思いながら。 そして「ヒューッ」とばかりに大きく息を吸い込んで、再び顔を漬けたところ、さっきと同じ場所にあった「糸」が少しずつ移動を始めました。広げることも狭めることもなく、まったく同じ間隔を保ちながら・・・。私がひらめいたのはこの瞬間でした。 (も、もしかしたらオトヒメエビか!?) そしてもちろん予感は的中。「糸」に見えたのはオトヒメエビの長く伸びた触覚であったのです。まるでガラス細工のような繊細さと、紅白の配色の妙。これが生きたエビだなんて、本当なんでしょうか? 私がこれを、それこそ壊れものでも取り扱うようにして採集したのは、発見してから随分と経ってからです。なぜって、もちろんじっくり観察するためです。魚のようにひゅーんと逃げてしまう心配はありませんからね。そして私は、無事ハサミを欠損することもなく、ペアを網に入れると、大きく満足のため息をもらしました。 これが私が初めてオトヒメエビを採集したときの顛末ですが、バケツに移したペアにあらためて目をやったとき、私は本当に、 (このまんま帰ってしまいたい!) そう思いました。 A君なんかおいてけぼりにしてね。 そう、あれほど苦労してやってきた磯なのに・・・・。 (990811) |
| ■謎のままの「リー水槽」? 高校生の頃であったと記憶しておりますが、ある日のこと、A君の家に遊びに行った時に、私は1葉の白黒写真を見せてもらったことがあります。もう記憶のほどは定かではありませんが、それは洋書の類の挿入写真のひとつでした。挿入写真だっだと思うのは、その写真が私の脳裏に英語の注釈とセットになって焼き付いているからで、付け加えて言うと、ひどく古びた写真であったようにも思い出せます。 さてその写真には岩のようなものが沢山入った水槽が写ってるだけで、しかも写真のサイズはトテモ小さなものでしたから、どんな魚が泳いでいるのだかもチットモ判然としない・・・。おおざっぱな感想としては、 (ずい分と躍動感のない水槽だなぁ) というものでした。 さてA君は私に見せる前にその注釈を訳していたらしく、高校生の語学力とは思えないほどに具体的な説明をしてくれました。思うにきっと気迫で読んでいたんでしょうね。そういうことってよくあるじゃないですか?知ろうとする気持ちで読むとスラスラ読めちゃうことって。 しかしその写真にさほど興味を感じなかった私は、彼の説明を右の耳から左の耳へとやり過ごしてしまいました。だから結局私の頭の中に残ったのは、その水槽が ・どこか東南アジアのオジサンが維持しているものらしいこと。 ・かなりな「手抜き」水槽で、水換えをほとんどしていないこと。 そして、 ・それでも十分に生物が飼えるのだ ということくらいなものであったのです。 それからン十年後・・・ 転勤から戻ってきた私が、ふたたび以前のようにショップ巡りを週末の日課にしていた頃(私の赴任先には、当時専門のショップがなかった!)、マリン・アクアリウムの世界には今までとは違った新しい流れが起こっていました。それは無脊椎水槽の台頭です。今まで困難だといわれていた珊瑚の飼育が一般のものとして浸透し始めていたのです。正直に言って、本以外で初めてそれらの水槽を見たとき、私は少なからず衝撃を受けたものです。 (イボヤギを飼育した経験はあるけど、こんな風な無脊椎動物の楽しみ方もあったのか!) そしてやはりこの頃だったでしょうか?『ナチュラル』とか『ベルリン』といった言葉を一部のマリン・アクアリストたちが口にするようになったのです。もちろん私もその末席を汚すものとして、小さいながらも無脊椎動物の飼育に踏み出したのはいうまでもありません。 そんなある日、やはりA君の家に遊びに行ったときのことでした。彼の「実験室」に並べてあった本を何気なく手に取り眺めていると、TMAという海水魚専門誌の創刊号に目が止まりました。私はそれを手に取ると、ペラペラとページを繰ってみました。そして、すでに黄ばみかけたページを読み進むうちに、何だか予感めいたものを感じはじめました。やがて巻末に近づいたとき、私は過去の記憶のほとんどを思い起こすようなページに行きあたって腰を抜かさんばかりに驚いたのです。そこにはン十年の昔に見せてもらったのとまったく同じような光景が写っているではありませんか! それは、かの『ナチュラル』システムの父、リー・チン・インの水槽であったのでした。さらにそこには、リーさんご本人の写真まで! ふとA君を探すと、彼はコーヒーの用意でもしてくれているのか、その姿はありません。そこで私はいつも自分が座る椅子に腰をおろし、ゆっくりとそのページを読んでみることにしました。 それは、わずか数ページの記事でありましたが、大変に興味深い記述の連続でした。書かれていたことで最も驚いたのは、リーさん本人が日本に来ていたことです。そして彼が傷心して帰国して行ったなんてことも書かれています。 さて、しばらくしてA君がお茶の用意をして部屋に戻って来たときに、私は次のように尋ねてみました。 「ねぇ、コレ、リー・チン・インの水槽じゃないか?この写真ってさぁ、ずっと昔に見せてもらったヤツだろ?」 私は自分の記憶が正しいことを確かめたくて、ちょっと気負い込んだ口調でした。 するとA君は意外な言葉を返してきました。 「確かにリー・チン・インの水槽だけどさ。でも君にそんな写真見せたっけかなぁ?」 と、実に頼りなげなのです。 この答えを聞いて私はいささか不安になりました。 (もしA君が見せていないのだとしたら、私の記憶にある水槽はいったい誰の水槽だったのだろう?) そのことをA君に話すと、彼は次のようなフォローをしてくれました。 「もしかしたらさ、Exotic Marine Fishにも載ってたかもしれないなぁ?」 私はこの言葉に飛びつきました。 (そ、その本だったら、家にもあるじゃないか!) もはや私はA君と話をしているどころではなくなりました。 (早く帰って確認しなきゃ!) そこで私はそのTMA創刊号を借り受けると、いれてくれたコーヒーを飲むのもそこそこに、一目散に帰途についたのでした。 帰宅してからというもの、私はA君の答えを確かめようと、かのExotic Marine Fish を読み漁ってみましたが、リーさんに関する記述はあったものの、彼の水槽写真は結局のところ見つかりませんでした。 (あの日見せてもらった水槽写真はいったい?・・・) という疑問は未だに解決されてはいませんが、でもやっぱり「リーさんの水槽」だったに違いない・・・そう思う私は頑固ものでしょうかね? (990818) |
| ■こだわりの「タイド・プール」 私にはお気に入りのタイド・プールがたくさんある・・・このことは以前にもお話していますね?今日は、その中でも私が異様なまでに「こだわって」いるプールのお話を致しましょう。 そのプールのことを知ったのは、私とA君が、S先生(easy dose it -2-参照)のお供として遠征した先の磯でした。 その時私は、どういうワケだかA君とは離れて行動しておりまして、あっちこっちのプールで面白い魚を捕まえ、 (さあ、ひと休みをしようカナ?) と、腰の降ろせそうな場所を探していたところでした。そして、日陰が欲しかったこともあって、近くに見えた小山の陰に涼を取ろうと、そこまで足を運んだところ、私は大変に大きなプールが存在することに気が付きました。 そこで近くまで歩み寄って眺めてみると、それはエメラルド色の水をたたえた、プールというよりも「池」と呼んでも良いほどの大きさのものでした。細波すらも立っていない水面は、まさに鏡を張ったという表現がピタリ。美しいというのを通り越しちゃって、ちょっと恐いくらいの静けさを漂わせているのです。 周りを見渡すというと、どうやらそこは、その辺りでは一番高い場所であって、そのことからはおおよそ次のような事実が想像できるのでした。つまり、その磯にあるプールの中では最も早くに姿を現わし、最も遅くまで姿を隠さないプールなのだということなのです。 私は屈み込んで、その水面に指を入れてみました。なぜかというと、長時間外海と隔絶されてしまうプールであるならば、きっと水温が高くなっているはずだと思ったからです。ところが人差指に感じる温度は意外なまでに冷たくて、今度はそのことから、相当な深さを持っているらしいことがわかるのでした。 (なるほど、だからこんなエメラルド色をしているのか!コレは何か潜んでいるかもしれないぞ!) 私がそう思いながら、漬けていた指を水面から上げたときのことです。指先から滴り落ちたしずくが水面に小さな波紋を作って、二すじ三すじその輪を広げて消えたその時、ちょうどプールの中央付近に、黒くて細い物体が水底からプカリと浮き上がるようにして現れました。そしてそれは、ちょうどマッチ棒を半分に折ったくらいの大きさの、明らかに魚の姿でありました。さらになおも目を凝らしてみると、それはクロユリハゼの稚魚なのでした。 私は思わず 「やった!ロケットだ!」 と小さく叫ぶと、持っていた網で、これを掬いにかかろうとしました。ところが困ったことに、私の網では柄が短すぎて、中央付近にいる彼のところへなんか遠く及びません。私は大いに弱りました。かと言って、深さも相当にありそうで、まるで深井戸のようなところへは、恐くて入って行けません。当時の私のスタイルときたら、「海水パンツにゴムぞうり」ですからね。そんな格好で不気味なプールに入るだなんて、恐ろしくて恐ろしくて・・・。 結局私が2、3度網を伸ばしているうちに、こちらの気配を察したクロユリハゼは、再び水底へ姿を隠し、もう私の眼前に現れることは2度とありませんでした。私は大きくため息をつくと、うなだれながらA君の元へと戻っていったのです。 それ以来、私はこのプールに対して異様な「こだわり」を抱くようになりました。が、そう簡単に行けるような場所でもありません。やがて社会人になり、学生の頃に住んでいた場所を挟んで180度方向の違う地方へ配属になり、私の「こだわり」はだんだんと薄らいで行ってしまいました。 ところがです、「気は通じる」と言いましょうか、転勤から東京に戻ってしばらくしてからのことでした。私は妙な具合で再びその磯に出かけるチャンスを得たのです!そしてまっ先にそのプールに向かって行ったのは言うまでもありません。そして・・・ 当時とまったく同じたたずまいで横たわるそのプールは、やはり細波すら立っていなくて、水はじっと静止したままでした。ウェット・スーツに身を包んだ今は恐怖心もありませんでしたが、それでも恐る恐る足を漬け、さらに中央に進んでみると、やはりその昔私が想像したとおり、深くて足がつきません。ぐるりを見回すと、周囲の岩壁は「裸」そのもの。そこには泥状のものがうず高く堆積しているばかりです。つまり生物的な様相が少しも感じられないのです。私は少しガッカリしながら、それでもなお、泳いだり潜ったりを繰り返して観察を続けていると、少し霞んだ視界の先に、私は、なな、なんとクロユリハゼのチビ助がいることに気がついたのです! この時の私の気持ちが分かりますか?それはですね、「びっくり!」というよりも、「やっぱり!」だったのです。この違い、分かりますよね? この時の遠征では、私はこのプールで他にも珍しい魚を捕まえたのですが、その話はまた別の機会に譲るとして、それ以降私は毎年そのプールを観察することにしています。単なる水溜りにしか見えなくても、そこは私にとっては行きつけのお土産屋さんなのですから。 そう、タイド・プールは偉大なのです。 ![]() 小高い山陰(やまかげ)の大きなプール。実はですね、99年8月にも観察に来ておりまして、 ゴマチョウの500円玉サイズ(上の写真)をしっかりと「ごっちゃん」になりました。 やっぱりタイドプールは面白い! (990829) |
| ■食べない採集家 これも以前にお話したことがあると思いますが、私は採集の合間にはめったに食事を摂りません。「お腹が空かない」というのが先ず第一の理由ですが、熱中しちゃって食事のことなんか忘れちゃうというのもその理由の一つです。それに、採集するときは「帰るまで食事をしない」というパターンに慣れてしまっているので、なまじ中途半端に食べようものなら、お腹の具合が悪くなってしまうのです。私は何度かひどい目にあったことがあるので、 (それだったら最初から食べない方がイイヤ) と思ってしまうのですね。極端な時には、家を出てから帰ってくるまで、口にしたのは液体だけだったなんてことも、実はしょっちゅうなのであります。 さて私とH氏とSさんが採集遠征に行ったときのことでした。出発する日の夜8時頃にファミリー・レストランで食事を摂った私たちは、交代で運転をしながら、目的地へと向かってただひたすらに走り続けました。途中幾度かPAに寄って、車の燃料と自分たちの水分補給をしたものの、すぐにまた車を走らせるということの繰り返しです。 そうこうするうちに夜もしらじらと明け、車窓には見慣れた景色が見え始めました。この頃になると、もう心は水の中です。私たちの頭の中には「魚」の一字しかありません。後部座席にいた私なんか、もうごそごそと荷物をいじり始めています。運転してるSさんも、助手席のHさんも、なんだかそわそわしているのが分かります。この辺になると、もう3人とも子供ですね。手がつけられません。 やがて目指す磯に着くと、一人は早速に着替えを始めていますし、もう一方はというと、しゃがみ込んで子供用のボートを顔を赤くしながら膨らませています。準備の遅い私も、遅れをとるまいと必死になって身仕度を急ぎます。そして誰からともなく水の中へ・・・。さらに飽きて来ると今度は場所替え。また飽きてくると、別の場所へ・・・。こんなことの連続。気がつくと辺りは薄くらくなっています。 そこでやっと私たちはその日の宿に向かいました。昨夜から交代で運転したり、その後は水に入りっぱなしということもあって、3人とももうクタクタです。私たちは宿に着くと、少し遅めの夕食を予約して、部屋で体を休めることにしました。 それからやっと食事です。湯気の上る白いご飯と、あつあつの味噌汁。真っ赤な紫葉漬をパリパリと頬張ると、舌の付根からはじゅんじゅんと、ほっぺたが痛くなるほどに唾液があふれてきます。 さて、しばらくの間、3人とも無言でご飯を頬張っていたときのことです。私はとんでもない事実に気がつき、箸を休めるとともに、向かいに座っていたSさんに問いかけてみました。 「ねえ、ボク等、まともな食事するの12時間ぶりじゃない?」 私は昨日の晩にファミ・レスで「ファイアー・キムチ丼」をヒイヒイ言いながら食べていた事を思い出したのです。 するとSさんが、ニヤリと笑って答えました。 「はは!syunさん、何言ってるの?12時間じゃないよ、24時間だよ!」 どうやら私の頭は、疲労のために、すっかり回転を停止してしまっていたようですね。 「あ、ほんとだ。あはははははは!」 気恥ずかしさのあまり、思わず笑ってゴマカシタのは言うまでもありません。 しかしですね、この話にはオマケが付いておりまして、それを紹介して今日のお話の終わりにいたしましょう。 それは、フロントに、 「明日の朝食は何時にいたしましょう?」 と聞かれた時の私たちの結論です。 「朝ご飯はキャンセルします。」 どうです?いや、どうしようもないですね。 どうか決してまねをなさらぬよう。 (99.09.10) |
| ■息子の初陣 99年の磯は、 (お、こりゃ好調な滑り出し!) なんて思っておりましたのに、それ以降は「鳴かず飛ばず」の状況です。本格的シーズンの9月に入っても、いまいちパッとしませんねぇ。だいたいこのシーズンになれば、仲間の何人かは「大物」をgetしたという話で大いに盛りあがるハズなんですが・・・。 磯で会う同好の士に、 「どうですか、今シーズンは?」 とお尋ねしても、大概は、 「いや、いませんねぇ。」 と言ってかぶりをふるばかりです。 私自身はどう思っているのかと申しますと、「いない」のではなく「変なのだ」と思っておるところなのでありまして、それにしてもこの「寄りつき」の変テコさはどうしたということなのでしょう?普段はあまり見かけないゴマチョウ(それも結構デカイ!)を見つけたり、 「捕まえたよん」 なんて仲間もいらっしゃる状況の一方で、 「チョウハン、アケボノがいねえ!」 と嘆く仲間もいらっしゃる・・・。 ほんと、どうしちゃったんでしょうね? さて9月も半ば頃のこと、新しい仲間にプレゼントをするフレキシ網を制作しながらも、 (今度も多くは望めないかな?) 少々暗い気持ちでおりましたところ、中学2年の息子が珍しくも側に寄って来まして、 「おとーさん、今度魚採りに連れてってよ。」 と頼むではありませんか。それも、 「ちょっとサ、本格的にサ、魚を採ってみたいんだけどサ・・・」 ですって。 そんなわけで、今日は「仲間」としての息子の初陣についてお話しましょう・・・・・・。 息子の頼みに、 「行っても採れるとは限らないぞ。それでも行くか?」 私はそう釘をさしました。私にも息子に採集をやって欲しいし、できるなら長く楽しんでもらいたいという気持ちがあります。だから、 (そんなに甘くはないのだ) ということを知っておいて欲しかったのです。 すると息子は、 「それでもかまわない」 と言います。 「よおし、久々に一緒に行くか?」 私は少しテレ臭い気持ちになったのですが、本音を言いますと、トテモうれしくなったのでした。 さていよいよ当日の磯。私のお古のウエット・スーツを来た息子を見ると、これが結構サマになっています。さしずめsyunさんのミニチュア版です。で、息子を従えて水に入って行きますと、これがまあ、やれ、 「ダメだよ、おとーさん、深いところは行かないでおくれよ。」 だの 「もっとゆっくり進んでよ。」 と、それはもうウルサイこと。こちらもちっとも仕事になりません。 ところがしばらくして、 (何かきっかけになる魚でも捕まえてくれれば、少しは大人しくなるんだけどなぁ・・・) そう思いながら、後から来る息子を振り返ろうとしたところ、私は左目の一隅を白い影がよぎるのに気がつきました。 (お、フウライの豆だな?) そこで私は、そのフウライを岩の下に追い込んでおいてから、息子を呼ばわりました。 「おーい!T彦。こっちへ来てごらん。」 そして到着した息子に網を構えさせ、岩の下を覗くように合図をしました。すると息子も気が付いた様子。興奮した目つきになったのが私にも分かりました。 「いいか?網は動かすなよ。お父さんが追うから、お前はじっとしてるんだ。いいな?」 私がそう言うと、息子も (分かった!) とばかりに、シュノーケルをくわえたまま、コックリと肯きます。 さあて、私が岩の下に手を入れて、ソーッと追いますと、ツンツンとフウライの頭が見え隠れします。息子はというと、一心に網を見つめています。そこで追う手を更に進めますと、フウライ君、難なく息子の構えた網に入って行きました。この瞬間、息子の大きな声がシュノーケル越しに聞こえました。 「や、やったあ、おとーさん!やったぁ!すげえ、すげえ!」 そして、余程うれしかったのでしょう、移動する途中で何度も何度もイケスを覗き込んでいます。 そんな息子を振り返るとき、私は遠い昔、M半島のタイド・プールで生まれて初めて豆チョウを捕まえたときのことを思い出してしまうのでした。 (あの時の気持ちを、今この瞬間にこの子も味わっているに違いない!) 私はそう思うと、とても懐かしいような気持ちになったのでした。そして心の中で呼びかけたのです。 (よく頑張ったね!) いいですね、「海」って。 また連れて来ようっと! ![]() 私のウェット・スーツを着せて、ついでにポロシャツ付けさせたら、 なんと、こんな風になっちゃった。明らかにsyun's jr.です。 ちょっとシャツが長いのがだらしなかったね。 でも良く頑張った! また採りに行こう。もちろんお母さんは連れて行かないさ。 邪魔だものな。分かるだろ? (99.09.14) |
| ■mさんの因縁話 今日はちょっと因縁めいたお話です。でも怖くないから大丈夫。 mさんという仲間からメールを頂いたのは、つい最近のこと。出勤前のメール・チェックのときに、見知らぬ名前の差出人から来たメールを見つけて、私は一瞬、 「今読むべきか?」 と悩みました。腕時計を見ると、あと15分で午前7時です。これから魚に餌をやらなければいけませんし、まだ残っているコーヒーも飲み干さなければなりません。靴を履くのがちょうど7時ですから、私は大いに慌てていたのです。おまけにその日の夜は、有楽町で採集仲間のOFFがあります。間際になってから焦るのはいつもの私のパターンでして、 (えーっと?店の電話番号が書いてあったSさんのメールはどれだったかな?プリント・アウトしとかなきゃ!) と、とにかくせわしなかったのでありました。 ところがそのmさんのメールには、何かこう、そのままにしておけないような雰囲気がありました。PCの画面の下半分に表示された本文が、私はなぜかしら気になってしかたがなかったのです。そこで私は思い切って、頂戴したメールの本文を読んでみることにしました。 (まあいいや、いつも30分前には職場に着くんだから。メールを読んでから家を出ても十分間にあうさ・・・) 結果的にはこれが良かったんですけどね。ふふふ。 さて私信をそのまま紹介することはネチケット違反ですから、ここではその主旨だけしかお話できませんが、それはおおむね次のような内容のものでした。 mさん、その昔TMAという専門誌の「水槽プレゼント」コーナーみたいなものに応募をしたことがあるそうです。で、実はこの水槽、私の「列伝」でもご紹介している I さんの自作水槽だったそうです。しかしmさん応募をしたものの、武運拙く落選。するとしばらくして、製作者である I さん本人から直々に連絡があり、 「別の人に当たちゃったのは残念だけど、一度海で会いましょう」 ということに。そして実際に海で会い、I さんはmさんに岸壁用の網を作ってあげるという約束をしたのだそうです。 ところがその後 I さんから何の連絡もないままに時が過ぎて行き、mさんもいつとはなし I さんのことを忘れてしまったそうです。が、たまたま訪れた私のHPで、すでに I さんは雲の上であることを知り、それで私にメールを下さったという訳。その理由は次のように締めくくられた言葉に切々と顕れていました。 (自分の「物語」を完結させたい!) 読み終わった時、私は時間のことなど、半ばどうでもよくなりました。 そこで「差出人に返信」ボタンを押し、続いて今日のOFF会場の所在地と電話番号を書いて送ったのでした。 (出勤間際のメールで失礼。I さんの「その後」を知る人が何人か来ます。時間があったらぜひ来てください。) 私の文面はそんなものであったと思います。 さて、私がスタート時間よりも30分ほど遅れて会場に着きますと、もうすでに宴会は始まっており、雑誌社の編集者2人を交えた総勢10名ほどがわいわいがやがやと談笑しています。その中には、やはり今回初めてお誘いした「兄弟採集達人」もいらっしゃいましたが、彼らも、もうすでにすっかり打ち解けているご様子。私は安心してウーロン茶をたのむと、もう一度参加メンバーを見渡してみました。もちろん、 「mさん来てるかな?」 それが気になったからです。 ところがいません。 (やっぱ朝一のメールじゃ無理かなあ?) なんて思っておりますと、 「あのー?」 と私に声を掛けて来た人物がいました。 そうです、mさんであったのです。メールを読んで、来て下さったのです! 私はそこで挨拶もそこそこに、A氏を紹介しました。私が I さんのことを知ったのは、そもそもA氏の話がきっかけであったからです。 それからしばらくの間、mさんは熱心にA氏から I さんのことを聞いているようでした。また、同席していたH氏とも同じことを話していたようです。そしてそれが一段落すると、mさんは納得するような笑顔を浮かべておいででした。それは、 (やり残した仕事がやっと片付いた!) そんな雰囲気でした。 私はその様子を見て、今朝のことを思い出しておりました。そして次のような感慨に襲われました。 (こ、これは I さんの「引き合わせ」に違いない!) さらに私のその思いは、mさんの次の言葉でいよいよ強くなったのです。 「いやあ、たまたまこちらの方に仕事があったんですよ。」 どうです、このお話?随分と因縁めいた話だとお思いになりませんか?ところがさらにです。この因縁話にはもっと驚くべき事実があったのでした。 それはOFFから数日後、mさんと採集に行く約束をして、同行のMさん(大文字だからね。間違えないでね)を助手席に乗せ、海に向かって車を走らせていたときのことです。 実はこのMさんも I さんとは少なからず行き来のあった人でした。そこで私は先日のmさんの話をしてみたのです。するとMさん、次のような衝撃的な事実を話してくれたではありませんか! 「S(私の本名)さん!、そ、その水槽当たったの、ぼ、僕なんですよ!」 もちろん当日そのことをmさんに告げ、Mさんをご紹介したのは言うまでもないことですが、しかしそれにしても恐ろしいまでの「因縁話」でしたね。採集という趣味がマイナーなものであることを割り引いたとしても・・・。 I さん、きっと雲の上からmさん、Mさんを引き合わせたのにちがいありません。そう思いましょうよ。ね、m、Mさん? (99.09.20) |
| ■木片魚と戯れた日 変わった泳ぎ方をする魚といったら、みなさんどんな魚を思い浮かべるでしょうか?私でしたら、そうですねえ・・・以前にもご紹介した「コノハベラ」ことススキベラでしょうか。もちろん他にも沢山いますけど・・・と過去の記憶をたどっていたら、ある魚のことを思い出しました。 今夜はそのお魚さんのお話をいたしましょう。 私が初めてその魚に出会ったのは、今から4年ほど前の晩秋のことでした。家族をホテルに残し、たった一人で出かけた磯というのは、実はまだ一度も入ったことのない磯。私はその脇をレンタカーで通るたびに、いつも (おお!良さそうな雰囲気じゃん!) と思っていたのですが、どういう訳か縁がなくて、ただ通り過ぎるばかりであったのです。 さて、そんな期待感に胸を躍らせ、準備万端いざ進んで見ますと、その磯ときたら意外なことに魚影が薄くて、私は少々ガッカリでした。たまに見えるチョウチョウウオも、どれも大きなものばかりで、仮に捕まえることができたとしても、私の家の水槽ではもてあましてしまいそうです。もちろん採って帰ろうなんていう気持ちは起きません。 それでも小一時間ほど粘ってはみましたが、やっぱり状況は変わりません。 (うーむ、こりゃ期待はずれだったなぁ) 私は場所替えをすることに決めました。そこでふと来た方向を振り返ってみると、山陰(やまかげ)に停めた車が随分と小さく見えるではありませんか。思わぬうちに遠くの方まで来てしまったということですね。 私は一人苦笑いを浮かべると、Uターンの態勢に入りました。と足もとの少し張り出した岩棚の下に、何やらジッとしている木片のような物体に目がとまりました。色は濃茶、大きさにして約3cmほどです。これが水中で停止しているように見えます。しかし潮どまりの時間でもない、つまり多少は水の動きがあるのに、チットモ移動しようとしない。言い変えると、自らの意志でそこに止まっているように見えるワケ。 最初私には、それが枯れたアマモの切れ端のように見えました。色といい、その薄っぺらさといい、他に適当なものなど思いつかなかったのです。 しかしこういう時ってのは、意外と「第六感」みたいなのが働くものでして・・・ (いちおう念のため・・・) なんて、自慢のフレキシ網をその物体に近づけますと、あらら、コレが、スィーッとばかりに移動を始めました。 (???、!!!) 私の頭は、それを見た瞬間に目まぐるしいほどの回転を始めました。インプットされている「絵」と、その物体の「かたち」とのマッチング作業がスタートしたのです。 ところがこの作業は虚しくも空回りに終わりました。その物体が何であるかの結論が出ないのです。そうこうするうちに、その物体は、今まで「縦」だったのが、次第に「横」の態勢になり、それに伴い逃げる速度も早くなって行きます。慌てた私は、 (ええい、正体なんて捕まえてから確認すればいいや!) と、本気になって追いかけ出しました。そして・・・ からかわれ、見失うこと数度。やがて20分ほど経ってから、私はやっとその物体を網に収めました。そして白い軍手の上で「それ」を確認。私はそれがヘコアユの稚魚であることに気が付いたのでした。 (どうしてヘコアユであることが分からなかったんだろう?) でも私には、すぐにその理由に気が付きました。それはですね。もちろん自然の海では見たことのない「初対面」のお魚さんであったこともあるのですが、何よりも私の頭の中のヘコアユは、いつも群となっていたからです。単独でいるときの姿を、私はこれっぽっちも知っていなかったのです。 結果としてはヘコアユ1尾というこの日の採集でしたが、もちろん私が大満足であったのは言うまでもありません。 (「ちょっと変わった」魚が採れれば良い) これが私のモットーですし、また私の頭の中に1枚の重要資料が増えたことになりますものね。 木片魚と戯れた1日。これも私の忘れられない思い出の1日なのであります。 捕まえた個体は3cmほどのサイズだった。 緑がかった濃茶色をしていて、アマモの切れ端のよう。 逃げるときは体を横にして進んだ。 コンコルドみたいでカッコ良かった! (99.09.29) |
| ■謎の物体、今度は「O」(オー) 99年の採集シーズンもいよいよ大詰めの時期が近づいて来ました。採集家の諸氏も最後の追い込みに余念のないことでしょう。私もホーム・フィールドに通うのは大体10月いっぱいですから、余すところあと1ヶ月。週末ともなると、天気や潮の具合などにはあまり頓着せずに出かけてしまうのです。 加えて長男が採集(とりわけ岸壁採集)にハマってしまいましたので、ここ1ヶ月の週末は「皆勤賞」の精勤ぶりです。 もちろん、今日も今日とて、行って来ました。磯と防波堤! ところがデスね。まあ、風はビュービュー、波は高いは、磯採集の水中の視界はほとんどゼロ。おまけに遠くの空では雷ゴロゴロで最悪のコンディションです。トゲ、ナミ他を捕まえたというだけで精一杯。同行の長男なんぞは稲妻に恐れをなしたか、水の中に入ろうとしません。従って彼の成果はゼロ・・・。 さて唐突ですが本題です。だって面白い収穫があったんですから、それをお知らせしなけりゃいけません。 今も述べましたとおり今日は最悪のコンディションでした。私は (これ以上頑張っても駄目。残りの時間は防波堤に切り替えよう!) と判断しました。そこで道具を片付けて水から上がろうとしたその時でした、ミョ〜な物体が私のマスクの前を通り過ぎるのに気が付きました。悪コンディションの中でも、色は真っ青、光の加減でピラピラと輝いているのがわかります。そしてそれは自らの意思で動いている風はなくて、波に押されてスーッという感じで、アッという間に視界から消えてしまいました。 (今のは何だったのだろう?) 訝しく思いつつも、もう既にその物体の姿はないのですから仕方がありません。私は水から上がって、待っている息子のところへ歩きはじめました。と、足もとの波打ち際を見ると、さっき私の目前を通りすぎたのと全く同じものが、なな何と無数に打ち上げられています!小は直径1センチのものから、大は3センチくらいのものまで、至るところに! 「コイツだったのか!」 私は軍手を嵌め直すと、これを一つ拾いあげました。何故軍手を?とお思いですね?だって、それは明らかにクラゲの姿だったんですから。刺されたら怖いじゃないですか。(実を言いますと、私はその後うっかりコイツに触れてしまいました。やはりちょっとビリビリ来ました。) えーっとそれから・・・。ええい、今日はくだくだしい説明を抜きにしましょうね。ちゃんと写真を撮りましたから、それをご覧にいれます。とくと物体「O」をご堪能ください。 体が「まん丸」なので、X、Yのアルファベット・シリーズで「O」(オー)と名づけましたが、果たしてなんというクラゲなんでしょうかね?また眠れなくなりそう。誰か教えて! コレが上から見た物体「O」(オー)。クラゲという前提での説明になるが、体の周囲と触手が非常に鮮やかなブルーで、中央は灰色。これは直径が約1センチ。他にもっと大きなヤツもいた。写真では触手が水平に開いている状態。観察していたら、ときどき触手をすぼめる仕種する。不注意にも素手で触れてしまったのだが、触手が2,3本、小指に張り付いて、本体から離脱してしまった! これは一緒に入れていた小魚(たぶんヒイラギ)を捕食している様子。うまくひっくり返ってくれたので面白い写真になった。捕食したのは生きた状態のもか、それとも死魚なのかは不明。生きている魚を食うのだとすれば、やっぱ刺胞毒を持っているのだろう。美しい割には恐ろしいヤツだ。おお、こわ。私はコレをベルリン・タンクのサンプで飼うことにした。どうなるか?乞うご期待。 あなたが刺した小指が痛い・・・ (99.10.03) |
| ■鮮烈!クギベラ 99年10月に遠征した南国Mの海は誠に素晴らしいもので、水に入った途端、黄色いチョウチョウウオが乱舞する様を目にした時には、私はマッタクうろたえてしまうほど。関東近辺を根城にする自分にとって、そこはまるで別世界のようでありました。 トノサマダイというチョウチョウウオなんぞは、こちらのホーム・グラウンドでは年に1度、いや数年に1度、いやいやもっとかな・・・?・・・いずれにしてもそんな頻度でしかお目にかかれない、言ってみれば雲上人がごときお魚さんなワケなんですが、それがウジャウジャという感じで泳いでいるんですから恐れ入ります。スミツキなども似たようなもので、きっとMの海の仲間たちの目にはナミチョウ並みに映るのでありましょう。ああ、うらやましい! 同じようなことは他の種の魚にも当てはまることでして、例えばベラに関して言えば、こちら関東ではお馴染みのニシキベラやカミナリベラ、ホンベラなどの姿に混じって、コガシラベラやヤマブキベラ、カノコベラ、トカラベラなどのベラがかなりの高い確率で混じっています。面白いところではクギベラ。これは関東近辺でも見られるベラですが、これのかなり成長した個体、つまり吻が少し伸び始めたものを多く見かけます。この辺りになると、 (さすが南国!) といった趣になってきますね。 さてこのクギベラなんですが、これの成魚はTVにもよく出て来ますし、若魚などはショップに入りますから、その特徴はよくご存じですよね?そうです、あの吻の尖ったベラですね。みょ〜に長い吻のツンツク泳ぎのベラさんです。でもその幼魚が実際にはどんなであるかを知っている人ってのは案外少ないんじゃないんでしょうか? そこで今日はクギベラ幼魚について少しだけお話しましょうね。 先程もお話しましたとおり、クギベラの一番の特徴はその長く伸びた吻にあります。和名の由来はその長い吻を「釘」に見立てたものなのでしょうが、ちなみに英名はバード・ラス(Bird Wrasse)で、これは鳥のシギやサギから連想するものなんでしょうね。 さてそれほど特徴的なこの吻なのですが、幼魚ではこれがまったく普通のベラと変わりがありません。「見た目」には普通のベラなのです(よおく観察をすると、ちょっと違うのがわかりますがね)。ところが大きく違う点がありまして、それは、 (これが同じ魚なのか!?) と思うほどの美しさなのであります。 うまく表現できるかどうかは分かりませんが、体の上半分が濃い黄緑色、その下に焦げ茶のラインが入り、下半分がまぶしいほどの「白」。この白さがまた鮮烈!むしろ「銀」に近い感じで、これを水中浅いところで見ると、私などは思わず目を細めてしまうのです。 しかもこれを水槽に入れても色褪せることがありません。餌付きもよくて丈夫。さらに面白いのは、成長する過程の中で、例の吻になって行く様を観察できるという点です。これは他のベラでは味わうことのできない楽しみ方です。 どうか機会があったら一度このベラを捕まえて飼育してご覧なさい。きっと面白い体験ができますよ・・・って言いたいんですけど、これが結構すばしこくて難しい!でもそうやって捕まえるから、これがまた愛着の湧くところなんですけどね。 Mの海ではこの幼魚が少なくて、吻の出た若魚ばかりだったのは、きっと時期的なものなんでしょう。残念ながら連れて帰ることは出来ませんでしたが、まあ待っていてください。そのうち鮮烈な画像をお目にかけますから・・・。 ![]() クギベラの幼魚はこんな感じ。 他のベラの群れにいてもスグ分かるほど良く目立つ。 体の下半分の「白」がそれはそれは眩しいくらいなのだ! (99.10.31) |
| ■通称「ジミー」 引き続きベラのお話をします。 私がこの子に初めてお会いしたのが、上野水族館(当時)近くにある老舗ショップ「H」でありました。確か汗をかきかき駅からの道を歩いた記憶がありますから、その日は暑い夏の盛りであったのでしょう。 私は首元の汗をハンカチで拭きながらドアを空けると、いつものように店内の小型水槽の中にいるお魚さんを物色し始めました。もちろん店内には大きな水槽もあって、そこには赤・青・黄色の美しい魚が沢山泳いでいるのですが、水槽が大きいだけに大きい魚しか入っておりません。大きな水槽をもたない私には、大きなお魚は飼えません、いえ買えません。従って大きな水槽の中は見ないことになります。 さて幾つかの水槽を、それこそ重箱の隅をつつくように覗いておりますと、私の目に見慣れない魚の姿が飛び込んで来ました。話しが横道に逸れますが、この「H」には偶に面白い「混じり物」が入ることがあって、私はそういう魚を探すというのがトテモ好きなのでした。さてさてそのお魚さん、大きさは1.5センチくらい。私にはそれがひとめで「ベラ」の一種であることが分かりました。しかし肝心の名前を知りません。私はここで少々弱りました。本当は、ちょっと格好を付けて、 「あの、この○×ベラをください。」 とやりたかったんですけど、その「○×」が分からないのですから・・・。 しかし、こういうチャンスはそうあるものではありません。もしここで変に格好をつけて買わないで帰ったとしたら・・・。今度来たときにはきっといないでしょうからね。 そこで私は勇気を出して店員さんに聞いてみることにしました。 「これは何というベラですか?」 するとすかさず、 「カノコベラ。800円です(これは良く覚えてる!)。」 という返事。私はすぐにこれを袋に入れてもらったのは言うまでもありません。 以上が初めての出会いの顛末です。 で、2度目の出会いというのが、えへへ、「海」だったんであります。 それは南の島でのことでした。私の頭の中には、既に「予備知識」としてのカノコベラがありました。だから、ともすれば見失いがちなシチュエーションの中、彼を見分けるのは非常に簡単なことでした。またこの手のベラを採集するには慌てる必要はありません。追いかけていても、一瞬ジッとする時があるのです。下手に脅かすのは禁物です。慌てず騒がず追い詰める・・・それがコツなのです。 さて、このカノコベラ、稚魚の頃は、濃い茶の地に黄色いライン(というよりスポット?)の一風変った美しさを持っているベラで(だから「鹿の子」なんでしょうね。でもバンビの印象はありません)、またその頃はとても可愛らしいものです。関東近辺でも、数は多くはないものの採集可能なベラですが、これは相当に「目を皿」状態にしなけりゃならんでしょう。もっとも南に行けば当然その数は多くなりますがね。 しかしいかんせん大人になると、他の多くのベラがそうであるように、黄色のライン(スポット)も後退して、どーも地味〜なベラになってしまいます。英名では Dusky Wrasse。向うの人たちには、薄ぼんやりした印象なんでしょうね。Nick Name は、ジミー?そんなわけないですね。 飼う(採る)ならやっぱり稚魚。これに限ります。 ![]() カノコベラ。 大きくなると黄色いラインが細く白くなっちゃう。 飼うのだったら稚魚に限る。 (99.11.06) |
| ■古代魚?タナバタウオ 「採集」の対象魚としてまっ先に思い浮かべるのは・・・、それはやはりチョウチョウウオの仲間でしょうね。そして次はヤッコの仲間でしょうか?まあこの2種は採集家にとっては「双璧」でありまして、この子たちを捕まえることこそが我々の「お仕事」なのだ・・・と言っても、それは決して過言ではないでしょう。 でもですね。なにもその2種にこだわる必要なんかチットモないと、私なんぞは思うワケでして、私がいつも口癖のように申し上げているとおり、ベラやハギ、スズメダイなんてやつらも、これはこれで非常に面白いのであります。 南方系のスズメダイの稚魚なんて、まったく可愛らしいじゃありませんか!ベラも然りです。ツユベラの1センチ、2センチサイズを見てご覧なさい。その紅白の鮮やかさといったら、まあちょいと言葉には表せないほどのものなのです。 でも海の中にいるのは、奇麗で可愛らしい魚ばかりではありませんよね?中には変テコなヤツもいるものでして、で、これもまた「見方」を変えて採集してみると結構楽しめるものなのであります。 というワケで、今夜ご紹介するのはそんなお魚さん、「ナカハラタナバタウオ」です。 タナバタウオというと、多くのマリン・アクアリストは「シモフリタナバタウオ」を連想されることでしょう。もちろんナカハラタナバタウオもその仲間ですが、こちらの方は随分と小さくて、シモフリの方はいつも水中に浮かんでいることが多いのに対して、こちらはジッと底にいるのがほとんどのようであります。 色は黒に近い「紺」とでも言いましょうか?かもし出す雰囲気は非常に暗く、ギョロリとした目、広い口には魚食魚の獰猛さを感じ取ることができます。 ではこの魚のどこが変テコなのかと申しますと、それはその姿格好にあります。 私には魚の形態を専門的な用語を使って表現する知識はありませんが、私なりにたとえて言いますと、 (各ヒレがデフォルメされたように大きくて、どれも力強い。まるで古代魚のようである・・・) ということなのです。 例えば胸ビレ。ウチワを携えているようです。付け根も随分と太くなっています。また背ビレの条。これも太くてトゲのように突き出ています。そして尾ヒレ。これもまた異様に大きい・・・。全体的に、そうです、進化をやめた古代魚の風貌なのです。 で、このお魚さん、かようにグロで色気がないだけに、マリン・アクアリストたちはちっとも見向きもしません。いや知らない人の方が多いでしょう。 ところがです。 (こんなの知っているのは、専門家以外じゃ自分くらいなものかしら?) なんて思って一人「通」ぶってほくそえんでおりましたところ、あるダイビング雑誌に、この魚のことが出ておりまして、私はスッカリうれしくなってしまいました。というのも、初心者ダイバーがこの魚を見つけて大騒ぎになることがあるそうなのです。 「シ、シーラカンス見つけた!」 関東以南のタイド・プールでお目にかかれる「シーラカンス」。ゴロタ石の陰などに潜んでいますが、あなた採りますか?うふふ・・・。 ![]() 各鰭がトテモ大きくて力強い。 観賞価値はゼロに近いけれど、姿カタチを楽しめる魚。 でもちょっと怖い・・・ (99.11.08) |
| ■アクロヌルスよ永遠に 我々採集家たちの間では、チョウチョウウオの幼生期、すなわちトリクティス期のことを「カブト」と呼び、いわゆる「豆チョウ」の段階とは区別するのが普通であります。この頃のチョウチョウウオというのは頭デッカチで目が大きく、いかにも赤ちゃん然としていて、 (ホンマに育つのかいな?) と、非常に頼りない感じさえするのであります。 でもまあ、そういうチビ助を育てあげるというのも、これまた醍醐味なのでありまして、ブラインシュリンプを飲み込むのに難儀をしていた子が、人の姿を見つけて餌のおねだりをするようになるまで成長したりすると、 (ああ、やっぱりこの趣味やってて良かった!) なんて思うワケですね。 さてチョウチョウウオに「カブト」の時代があるように、ハギの仲間にもそれに良く似た時代がありまして、それは「アクロヌルス期」と呼ばれております。これはどんな風かといいますと、例えば身近なニザダイを例にとりますと、まず内臓が透けて見えるほどに透明であります。つぎにその格好。なんと表現して良いやら、非常に特異な形をしております。 以前に義兄を連れて採集に行った時のことでした、遠くの方で、 「おーい!syunちゃあーん、珍しい魚を捕まえたぞー!」 と言うので、こけつまろびつ駆けつけたところ、何のことはない、それはアクロヌルス期のニザダイであった・・・なんていうのは、採集家の誰もが経験しているような笑い話でしょう。 ヒレナガハギの場合などは特にそれが顕著で、体の透明なのはまだしも、その形ときたら、まさに異形のものです。なんてったって「ひしがた」に角ばっちゃって(easy dose it -1- part -2- 「ヒシガタウオ」参照)ますからね。整理してたら、それに近い頃の写真が出てきましたのでご覧にいれますが、 どうですか?変テコですねえ! もちろんシマハギやニジハギにもそういう時期がありまして、こちらは角張ってなくて、まん丸です。これも非常に面白くて、シマハギなんてえのは、まるで50円玉銀貨のようですらあるのです。 さて実はですね、私にはやってみたいことがありまして、それはどんなものかと申しますと、1本の水槽に、この「シマハギ50円玉」をワンサカと泳がせてみたいというものです。きっとアフリカのサバンナを疾駆するシマウマの子馬の群を水槽内で再現できると思うからなのです。でも自分の水槽でガラス越しに威嚇しあうシマハギを見るにつけ、 「やっぱ無理だよな・・・」 私の気持ちは萎えてしまうのです。 タイド・プールに何尾も入ってじゃれ合うのは、やっぱりその「時期」だけのものなんでしょうね。 と、今娘が、私の横をワーワー、キャーキャー、ドタドタと通りすぎて行きました。この子もちょっと前までは可愛かったんですけどねえ・・・。 ああ、アクロヌルスよ永遠なれ! (99.11.13) |
| ■もう一人の「サザナミ」 従然なるままに、何の計画性もなく、ただ脳裏に浮かぶ「想い出話」を書き続けているうちに、「syunさんの採集記」ももうすぐ100話になってしまいます。でも自分に「気負い」みたいなものがないので、どちらかというと、 (あれ?随分と書き留めてきたものだ) というのが正直な感想です。 え?そんなこと書くなんて、syunさん、もうネタ切れかって?じゃんねんでした。私の頭の中には、まだまだ沢山の「在庫」があります。どうぞご心配なく。 さて先日のことでした。Mの海から連れてきた「ちゃじゃみゃみやっこ」の観察をしておりますと、 (サザナミヤッコにサザナミフグ・・・えーと、あ、サザナミハギだ!) 私は変な符合にちょっと可笑しくなって、思わず笑みをこぼしてしまったのです。なぜかと言いますと、「ちゃじゃみゃみ」の入っているエリアには「サザナミ御三家」が勢揃いしていたからです。そこで私は思ったのです。 (おおそうだ、サザナミハギの想い出も書いておかなけりゃ!) てなワケで今日はサザナミハギのお話です。 採集を始めたばかりの、ニザダイやアミメハギを追いかけていた頃を過ぎると、私としても、当然のことながら、たまにはもうちょっと変わった魚が欲しくなります。そんなときにふと頭に浮かぶのがこのサザナミハギでした。採集家がそのターゲットを広げて行く中で通過して行く魚。サザナミハギはそんな魚ではないでしょうか? その私が初めてこの魚を網に入れたのが高校2年の夏。ホーム・グラウンドに出かけた私は、だだっ広い磯を、海水パンツにゴムぞうりといういでたちで歩き回っておりますと、足もとに人工的な「水たまり」があることに気が付きました。それはおそらく海老篭か何かを沈めておく場所なのでしょう。どこの磯にも一つや二つは見つけることのできる、そう、あの四角い「穴」でした。 もちろん私は水中眼鏡でそこを覗いてみることにしました。そして腹這いになって顔を浸けてみますと、一つの壁に丸い、これも人工的な穴が見えます。そしてどうもその穴は、海藻のたなびく様から想像すると、少し先の外海と繋がっているらしく、一定の間隔で海水が入り込んで来ているのが分かりました。 そしてなおも観察を続けていると、海水が入り込む度に、小魚たちも一緒に入って来るようなのです。私は面白くなって、しばらくは顔を浸けたまま、その様子を楽しんでおりました。すると! 私はニザダイやカゴカキに混じって、欲しかったサザナミハギのチビ助がいるのを発見しました!で、私はどういう行動に出たかといいますと、手に持っていたタオルで壁の穴を塞いでしまったのです。さあ魚たちの慌てふためくこと!私は思わずニンマリといたしました。 (げへへ、もうこれで逃げられないぞ!) ところが困ったことがありました。というのも、その四角い「水たまり」は、人が立って入るのが精一杯の広さで、腰を屈めることもできないようなものであったからです。でも諦めるわけには参りません。そこで私は腹這いの姿勢を少しずつ穴の中へずらして行きました。もちろん両手には網を持っています。けれどももう一歩のところで届きません。私は更に体をずらしました。と、私の体はズボリッ!と穴にはまってしまいました!慌てたのは、今度は、私の方です。もがいて体勢を立て直そうとしたものの、いよいよ体はハマリ込んで行きます。そしてとうとう私は穴にはまったまま「逆立ち」の格好で直立してしまったのです! そんなに長い時間ではなかったものの、私は一瞬 (死ぬんじゃないか?) と思ったほどでしたが、ようやくのことで穴から這いでることができた私はというと、背中は傷だらけ、腰のあたりも妙に痛くてしかたがありません。幸いだったのは誰にも見られていなかったこと。まったく「犬神家の一族」のワンシーンのような有様であったのですから・・・。 さて懲りた私は、もうサザナミハギのことなんかどうでもよくなって、網を片付けて別の場所へ行こうとしました。と、その網の中を覗いたところ、なな、なんとどういうわけか、そのチビ助が入っているではありませんか!怪我の功名とはこのことです。もがきながら網を動かしているうちに、偶然にも飛び込んで来てくれたのでした。 私は誰も見ていないのを確かめると、照れ笑いをしながら、そのサザナミハギを携行イケスに放り込みました。 そしてそれを太陽にかざしながらつぶやいたのです。 (ああ、やっと君を連れて帰ることができるよ!) サザナミヤッコもサザナミフグも可愛いんだけど、こういう想い出があるから、私はもう一人の「サザナミ」がトテモとても好きなのです。お話をしたワケが分かりましたか? ![]() 目を見張るような美しさはないけれど、 私は和製コーレ・タンと呼んで愛でておるのであります。 (99.11.17) |
| ■逃(のが)した魚のなんとやら 私のベスト・パートナーといったら、これはやはりA君をおいて他にはいないわけで、高校生の時分から、シーズンになると必ずと言ってもよいほどに一緒に海に出かけておりました。すでにお話しているように、同じクラス、同じ野球部でしたから、もうほとんど朝から晩まで一緒です。振り返ってみると、親と一緒にいるよりも長い時間を共有していたのではないかと思います。 そんな私たちですが、たまには行動を別にすることもありました。もっとも「別々」とはいっても、そこはそれ、やっぱり行先は決まっていましたがね。さて今夜は、珍しくも私がA君抜きで海に行ったときのお話をいたしましょう。 それはやはり今から30年ほど昔のことでした。 しばらく離ればなれになっていた中学時代の友人たち4人とナンパ目的(私には別の目的がハッキリとありましたが)で出かけたのは I 諸島のN島。海亀の産卵でも有名な島です。 ここに決めたのは友人たちのリーダー格、K君でした。K君というのは、頭が良くてスポーツマン。やることもどこか人と違うところがあって、そのころからK応大付属高校でグライダーに乗って大空を滑空しておりまして、彼から見れば、波打際で魚を追い求める私の趣味なんぞ、まことにチンケなものに思えたことでしょう。でも私はチットモ恥じることはありませんでしたがね。 それはともかく、久しぶりに一緒に出かける旅行だというのに、K君たら昔のまんまの親分風。 「テントはSが持て。食料はsyun、お前だ。あとの細々したものは、T、お前だぞ。ナンパは俺に任しとけ。」 ですって。 さて、寝るのも忘れて昔話に花を咲かせていると、いつのまにか夜も明け、我々の乗った船は目指すN島の沖合いに碇を降ろしました。ここからは木造のハシケです。そしてこれがかなりのオンボロ船でして、船倉なんて、まるで時代劇にでてくる牢屋のよう。 (こりゃ島に着くまでに沈んでしまうんじゃないか?) そんな雰囲気であったのです。 だから無事桟橋に着いて、明るい太陽の下に出た時には、随分とほっとしたものでした。 さ〜て、こういう場所に着いちゃったら、あとはもう私の独壇場です。なぜって、シチュエーションを想像してご覧なさい。 ・青い空 ・小さな古い桟橋 ・透きとおった水 ・白い砂 ですよ! 私は、 (待ってました!) とばかりに自分の荷物からサランの携帯網などの採集道具を取り出すと、あとの荷物は全部友人たちに預けて、海の探検にまっしぐらです。まあ友人たちもその辺はある程度は心得ていて、別段怒る風もありません。私のことはほっておいて、ずんずんとキャンプ地へと歩いて行ってしまいました。 残された私はというと・・・。 岸壁に付いていた、体長2センチほどのシマキンチャクフグ(下の絵)と、小指の爪ほどのミナミハコフグなどをget。テント設営を終わった頃を見計らって、友人たちのところへ向かったのでした。 ![]() シマキンチャクフグ 背鰭にトゲがあるのはノコギリハギ テントを見つけた私がその傍らにバケツを降ろすと、K君とT君が興味深げに覗き込みました。 「ありゃー、可愛いなぁ!何だコレ?」 二人ともびっくりした様子です。我々のやり取りに気がついたS君も、間に入って、しきりに魚の動きを見つめています。実は彼らは、私が魚を採るということは知っていましたが、その魚がどういうものであるのかを知らなかったのです。 「へー!お前の趣味ってこういうことだったんだ!」 驚く友人たちを見るときの私は、おそらく「勝ち誇った」ような顔つきをしていたのでありましょう。 さて今日の本題です。 結局私はナンパに一切参加することなく、二泊の離島生活を「採集」三昧に過ごしたワケですが、さていよいよ東京に帰る日のこと、荷物を背中に、桟橋でハシケを待ちながら海面を覗き込んでいた私は、大変にショッキングな情景にブチ当たりました。といいますのは、私の足もと深さ50センチほどのところに、ハタタテダイの赤ちゃんがポツンと一人戯れていたのです。 (網があれば採れる!) 私は迷うことなく荷物を地面に降ろすと、その紐を解き始めました。が!そのとき、 「こらー!何やってる!後ろに人が並んでるんだ!もたもたしてないで、早くハシケに乗れ〜!」 という係員の声。そして周りの人たちの迷惑そうな顔・・・。友人たちの、 (お前、いー加減にしろよな) という六つの目。 その後どうなったかですか? それはどうぞ題名でご想像くださいましな。あーあ、逃した魚のなんとやら・・・。 (99.11.20) |
| ■まっきっき 採集を始めるまでに私が海の魚に対して抱いていたイメージというのは、ざっと次のようなものでした。 ・皆食い物である ・生臭い ・大きい それが高校生になって初めて観賞用の海水魚を目にした時の私のショック! ショップの水槽や飼育書で見る魚の、それはまあ色鮮やかなこと!赤・青・黄色、そして純白・・・。 「海にはこんな綺麗な魚がいるのか!」 これが正直な感想でしたね。 でもその頃は現実感というものがあまりありませんでした。つまり、 (それらは遠い南の海にしかいないものだ) という先入観があって、自分の生活している世界と、それらの魚とがすぐには結びつかなかったからです。だからA君や彼のお兄さんに「採集」の手ほどきを受けたときも、 「ほんまにそういう魚が取れるのかいなあ?」 というのが実際のところでありましたね。 それでも海に行ってみると、ショップの水槽の魚ほどではないにしろ、そこそこ美しい魚が採れたりしたものですから(それも近場で!)、これがまあまた面白くなっちゃって・・・。 そうして経験を重ねて行くうちに、最初のチョウチョウウオをget。さらにトゲ、フウライ、アケボノ、セグロ。そしてついにはサザナミヤッコ・・・。私はドンドンと「深み」にハマッて行ったのです。 でもね、私には一つだけ満たされない思いがありました。それは、 「まっきっきの黄色い魚が欲しい!」 ということでした・・・。 そんな満たされない思いを胸に抱いていたある年の初秋のことです。久しぶりに訪れたホーム・グラウンドは、いつものように沢山の魚たちが私を迎えてくれました。チョウチョウウオの類だけでも、赤くて白くて青い(この表現、分かりますか?)トゲ。まん丸のアケボノ。赤黄色のチョウハン・・・。私はそれらのうち、適当なサイズをgetしながら、場所を移動して行きました。(この時は、ちょっと珍しいシコクスズメなんてのが採れたりしましてね、私はよおく憶えておるのです。) と、私の右横を見なれぬ魚が一瞬のうちに通り過ぎて行きました。が、すぐに見失ってしまいました。でも私の瞼にはその「色」がしっかりと焼き付いていました。それは、なんの模様もない、プレーンな「まっきっき」。もちろん私はそれが何であるか、おおよその見当がついていました。 (ツンツク泳ぎと、とぼけた顔!あいつだ!) こういう時ってのは、慌ててはいけません。 「バシャバシャ探し回るのは禁物である」 ということは、もう経験として私に備わっています。そこで私は30分ほどを別の場所で遊ぶことにしました。そうして再び戻ってみると・・・。えへへ、やっぱりいましたね、彼が。 私はそっと水に漬かると、徐々に彼との間隔を狭めて行きました。幸い私のことには気がついていないようで、しきりに岩肌を突付いています。と、私の存在を察した彼は、顔を上げるなり、ビュンッと飛び跳ねるようにして逃げ始めました。そこで私は両手を広げると、彼を浅瀬の方へ追い込んで行きました。そこはちょうど入り江のような場所だったので、追い込んでしまえば、それはもうこちらのものなのです。 やがて極めて浅い場所に逃げ込んだ彼は、小さな岩の陰に隠れました。そして私たちの「追いかけごっこ」は終了したのです。 網に入った「まっきっき」。それはやっぱりモンツキハギでした。 この時の私の嬉しかったこと! 透明なイケスに移した彼をシゲシゲと見る私の顔は、相当にダラシなかったことでしょうね。いやいや彼に劣らず、とぼけていたかもしれません。 あ、いけない。久しぶりに欲しくなってきちゃった。でもそれは来シーズンのお楽しみですね。 ![]() 例年なら秋口から姿を現す美しいハギ。 99年は初夏から姿を見かけた。変な年だった・・・。 この色がなかなか長続きしないのがチョット残念。 (99.11.23) |
| ■目指せ全国区「セダカスズメ」 既に何度も申し上げているように、私はスズメダイの極小サイズというのがタマラナク好きなのでありまして、今でこそシマスズメやイソスズメの類は採りませんが、これがチョイと「色物」であったりすると、迷うことなく網に入れてしまいます。私がメインに活動する関東近辺にも、毎年夏になると、結構な種類の、イワユル「南方系」のチビ助が流れて来るものでして、これだけをターゲットに採集をするのも、また楽しいものなのです。 ちょっと思いつくままに例を挙げてみても、 ・ミヤコキセン ・ネズ ・シコク ・メガネ ・ミツボシ ・オジロ ・イワサキ など、南の島に行ったらゴチャマンと見られるスズメが流れてきます。これらはほとんどが南国的な風貌をしておりますね。(あたりまえと言えばアタリマエ) 一方で、本来は南方系なんだけれども、趣の変わったスズメダイも流れてきます。例えばハクセンスズメ。これはかなり地味ですが、背中の眼状斑と体央をよぎる白い線が印象的な魚です。そしてまた忘れてならないのがセダカスズメという魚で、今日は「彼」について少しばかりお話をいたしましょう。 このセダカスズメダイ、幼魚の頃は体の前半が抹茶アイスのような緑色、後半はピンクがかった白の、大変に日本的情緒を持ったスズメダイです。背鰭の頭部側に眼状斑があって、特に稚魚の時代にはそれが良く目立ちます。初夏に見られる稚魚は中層を、少し大きくなる盛夏には水底あたりを行動範囲にするようです。 これは他のスズメダイにも当てはまることですが、小さな頃にはあまり移動することをしませんので、見つけたらこっちのものです。岩の下などに追い込んでおいてから、片方の手で追ってご覧なさい。簡単に捕らえることができるでしょう。 でもこのスズメ、イマイチ知名度が低いのはいったい何故なんでしょう?採集を始めたばかりの人ならともかくも、歴戦のツワモノでさえ、 「ありい?ねえsyunさん、この魚、なんていうの?結構奇麗じゃん?」 ですからねえ。 で、改めて山渓のフィールド・ブックスのページを繰ってみましたら・・・。ありました、ありました、セダカスズメ!でもこれじゃあ分かりませんね。だってこの写真、かなり大きくなっちゃったヤツですもん。確かにセダカスズメではありますけどね、別物に見えちゃいますゼ、こりゃあ。この写真見て、 (おっしゃあ!今度見つけたら捕まえてやろう!) なんて思う人いないよね。 まあ、スズメダイの場合、大きくなっちゃうと悪くなるのが大半です。多くの採集家はそんなこと百も承知。敬遠されれば知名度も上がらない。そんなところが理由でしょうね。 でも、くどいようですがね、ちっちゃい頃はホントに奇麗なんだから! ねえみんな、もうちょっと注目してあげてもいいんじゃない? ![]() こんな感じ。 水の中ではこの緑が映えるのだ! 来シーズンは君の画像を載せてあげるからね。 (99.11.27) |
| ■変なヤツ ニジギンポ 採集を始めたばかりの頃によく捕らえていた魚に「ニジギンポ」という魚がいます。色は茶色で、お世辞にも美しい魚とは呼べないのですが、どことなく表情に愛嬌があって、魚というよりも何か別の生物のような雰囲気を持った、まあ実に「変なヤツ」なのです。 さて変なところは雰囲気だけじゃなくて、実はその生態にもありまして…。 私が通っていたM半島の某磯。海水パンツにゴムぞうり、頭には麦わら帽子というお決まりのスタイルで干潮どきの磯をほっつき歩いていた時のことです。とある岩場の突端近く、私の目に大変に美しい物体が映りました。それは真黄色の傘のようで、波の当たり具合によって、微妙にピクッと動きます。そうです、それはイバラカンザシなのでした。 (おやおや、こんなところに珍しい!) 私はソッと指を近づけてみました。すると案の定、その傘はヒュッとばかりに引っ込みます。そしてしばらく時間を置くと、まるで様子を見るかのような仕草でノコノコと出てきます。私はすっかり面白くなって、5分間ほどもそんな遊びを続けておりました。 それでもやがて飽きてきて、 (あ、いけない魚採りに来たんだっけ。) 私はマスクを掛け直すと顔を水に漬け、グルリを見まわしてみました。と、私の右横には海藻の茂みがあって、その中に何やらいる模様です。 (アミメハギかな?ちっちゃいヤツだったら採って帰ろうっと!) などと、その海藻を手で掻き分けてみると、おやおや、そこには実にヘンテコな魚がいるではありませんか。 角張った顔と、横に広がってしかもちょっと出っ張った口。キョロキョロと動く目。それも立ち姿で!私は大いに興味を感じて、ソッと網を差し出してみました。ところが「彼」は逃げようともしません。いや逃げようとしていたのでしょうが、動作が非常にゆっくりとしていて、そんな風には見えないのです。 私は一応用心しながら尚も網を近づけました。そしてそれを海藻の枝ごと包み込むようにして網に入れたのです。あまりにも簡単でいささか拍子抜けのした私ですが、さて肝心の名前を知りません。そこで今度はコレを網に入れたまま、少し離れたA少年(当時。もちろん私も)の所へ進んで行きました。そして彼の姿を見つけると、 「ねえ、コレ、なんてえの?」 と聞いたのです。すると彼は私の質問には答えずに、 (あそこを見ろ!) というような仕草をしました。 彼の指差す方向をマスク越しに見ると、そこには何のことはない、水底にジュースの空き缶が転がっているだけです。 (何言ってんだろう?) 私は一瞬訝しく思ったのですが、もう一度その空き缶に目を移してみると!ああ、面白い。今私が捕まえたばかりのと同じ魚が、その空き缶の穴からこちらを見ているではあ〜りませんか! 「ニジギンポだよ」 水から顔を上げた私に、A君も笑いながら答えました。そして付け加えたのです。 「可笑しなヤツだろ?」 それ以来、私はどういうわけかこの「変なヤツ」がお気に入りになってしまいましてね。 今でも海に行くと、 (捕まえて帰って、空き缶マンションの図を再現してみようかな?たまにはそんな遊びも良いかも知れない!) なんてなバカなことを一瞬考えたりするのです。 もちろん連れて帰ることはあっても、空き缶を水槽に入れるなんてことはしやしませんがね。えへへ…。 ![]() 決して美しくはないけど、愛嬌のある魚だ。 今でこそチョウチョやヤッコを追いかけ回してばかりいるが、 こういう魚のことを忘れちゃ駄目なのだと自分に言い聞かせている。 こういう魚のお蔭で今の自分があるのだから。 (99.11.30) |
| ■寸胴!「サラサハゼ」 南の磯のタイド・プールを覗いていると、必ずと言って良いほどに出会うハゼがおります。それは「サラサハゼ」というハゼで、こちら関東に当てはめてみると、アゴハゼなどに相当する魚でしょう。 要は至極ありふれたハゼであるワケなんですが、そこはそれ、南の磯の住人だけあって、やはりこちらのアゴハゼなんかとはチョイとばかり趣を異にします。 うまく説明できるかどうか?はなはだ心もとないところですが、少しばかり説明を試みてみますと・・・。 色はほぼ灰色(図鑑では茶色っぽいでのですが、強い日差しのもとで見ると、ほとんど白です)。頭部から尾部にかけて数条の横縞。ところどころ黒点をちりばめているのが、アクセントと言えばアクセント。まあ、決しておしゃれな魚ではありません。 でもこのハゼの最大の特徴は、その体型にあります。彼の格好ときたら、驚くばかりに「寸胴」であるのです。 私の遠征先のひとつにA島がありますが、この島のタイド・プールには、いつのシーズンにもコイツがいます。岩棚の下の砂地の部分に、砂をハグハグさせながらジッとしているのが普通ですが、たまには砂底を離れてホバリングをしている姿も見かけます。彼が頻繁に見せる、背中の刺を立てたり、畳んだりというしぐさはハゼ特有の「警戒のポーズ」かもしれませんが、顔つきがとぼけているせいか、私という捕獲者がいても、あまり切迫感がありません。つまり大変にノンビリ屋に見えるわけですね。 さてその「寸胴さ」ですが、これは何と表現したら良いんでしょう?普通のハゼを仮に「八頭身」と例えるならば、これは「六頭身」とでも言うべきか?くどいようですが、とにかく「寸胴」なのですよ! で、大きな個体というのはチョット気味が悪いほどなのですが、小さい頃は、逆にその寸胴さがチャーム・ポイントとなって、それはそれは大変に可愛らしいものなのであります。縞模様も鮮やかでね! その姿は、さてご覧のとおり。寸胴サラサ、雰囲気は伝わったでしょうか? ![]() 寸胴のサラサハゼ。 アカハチなどと比べたら色彩的な観賞価値はグッと落ちる。 でも小さな個体は実に可愛らしい。 砂をハグハグする行動は、他の底生ハゼと同じ。 ベルリン・タンクには向いてるかもしれない。 (99.12.02) |
| ■南海のシマリス 私が高校生の頃にアルバイトをしていたYというショップにはコンスタントに入荷するスズメダイがおりまして、当時「フタオビスズメダイ」と呼ばれていたその魚は、黄色の地に黒のストライプが鮮やかな、大変に精悍な感じのするスズメダイでした。 もともと「黄色」の好きな私は、初めてこのスズメを見たとき、色合いはもちろんのこと、その「格好良さ」にスッカリ心を奪われてしまったものでした。普通我々が海で見たり採集したりするスズメダイとは明らかに違って、背鰭および臀鰭の刺が後方に向かって長く伸びており、小型ジェット機のような「鋭さ」があったからなのです。 私はバイト代を戴くと、その中から代金を支払い、幾度かこの子をお家に連れて帰っては、60センチ水槽に収容して大事に大事に飼ったのです。 (大きくなったらどうなるか?) およその想像はついてはいましたが、そんなことろも気になっていたのです。そしてそうです、そのスズメダイは黒くてつまらない魚になってしまったのですがね・・・。 さて、数年前のことでしたか?南の磯へ採集遠征に行ったときのことでした。私にはガバと潜る技術はありませんので、いつもホーム・グラウンドでそうするように、そこかしこの岩肌を舐めるようにして覗いておりましたところ、ふと視界に飛び込んできた魚がおりました。黄色の地に黒のストライプ!ああ、懐かしの「フタオビスズメ」です。 それは小さくて小さくて、ちょっと脅かすと、ピョイという感じで傍らの枝珊瑚の中に隠れてしまいました。こういうシチュエーションではほとんど採集は不可能です。私は悩みました。 (あああ!どうしよう?) でも駄目です。もう私は「スイッチが入っちゃった」状態です。 仕方なく私は待つことにしました。じっと、じっと。ところが相手もじらすものでして、まるでからかうように頭部を見せては、またすぐと引っ込んでしまいます。 「そこにいるのに採ることができない!」 私はもどかしさに気も狂わんばかりになりました。 じれた私は無理とは分かっていましたが、何度かソッと網を近づけてみました。でもやっぱり駄目。彼は枝の間を実に器用にすり抜けては移動をしてしまうのです。まるで梢を渡るシマリスのよう。黒のストライプによって、その印象は益々強くなりました。 (持久戦か?) 半ばそう思い始めたときでした。急転直下、私に幸運が訪れたのです。枝間を逃げる彼が、縄張りを荒らされたと勘違いした別の黒いスズメダイに追われて、私の目の前に勢い良く飛び出してきたのです。 (千載一遇!) 私は一瞬のうちに、一方の岩壁に彼を追い込みました。そして勝負はついたのでした・・・。 でも軍手の窪みで泳ぐ(つまりそれほど小さいということ)彼を眺めたとき、私にはあの昔の精悍さのイメージは少しも甦りませんでした。あまりにもカワイ過ぎたものですからね。 私は掌をそのまま横に移動させると、そっと彼を海に帰すことにしました。体をくねらせながら指の間から逃れて行く彼を見守りながら、 「さよなら」 そう言ったかどうか?今の私にはどうも記憶がありません。 ・・・・・・・・・ ちょっとカッコ良すぎる ending でしたね。リリースした理由を言いますと、 (大きくなっちゃったら困るんだもの・・・) これが正直なところなのでした。 ああいけない、今の名前を言い忘れておりました。 その名は「ヒレナガスズメダイ」。どうです?絵にするとシマリスに見えるでしょう?可愛いですね。 ![]() ヒレナガスズメ・・・その昔は「フタオビスズメ」と呼ばれてた。 一番可愛いのはやっぱりこの時期で、 これを通りすぎると、黒ずんできてつまらない魚になってしまうのだ。 (99.12.06) |
| ■「水中釣り」は無理かしら? 私が年に2、3度ほど訪れる南の島の遠征先に「K」という磯があります。海沿いに延々と続くカミソリ堤防(「春のうららの隅田川・・・」の両岸に延びる堤防を「カミソリ堤防」と呼びますが、ちょうどあんな感じの味気ない堤防です)の下には広大な磯が広がり、干潮時には至るところにタイド・プールができて、その中にはいつの季節にもお気に入りの魚たちが私を迎えてくれるのでした。 いつかの年の春先でしたでしょうか?私とA君がそこを訪れた時のお話です。 無数と言っても良いくらいのタイド・プールを、二人とも別々に覗いていたところ、気付かぬうちに二人は同じプールの中に来てしまったようでした。私はそこに来るまでに、ツユべラ、カンムリベラやトカラベラの稚魚を捕まえておりましたから、もうウハウハの余裕しゃくしゃく状態です。 (へへ、Aおじさんの成果はいかに?) なんて、少しからかってやろうという気持ちで彼のいる場所まで進んで行きました。 するとA君は、私のことにはちっとも気付かぬ様子で一生懸命に網を動かしているようです。きっと何か面白い魚でも見つけたんでしょう。でも水面から顔を上げないでいるのは、まだそれが網に入らないからで、そう気付いた私は用心深くフォローの態勢を整えました。 そうして、ちょうどA君に並ぶようにしたときでした。彼は片手で私を制すると、もう片方の手である一点を指し示しました。そこはちょうど岩棚の真下で、周囲の砂底には沢山の小さな穴ぼこが空いていました。A君の指し示すのはそのうちの一つの「穴」でした。 ここで私にはある程度の予想があったのですが、案の定、思っていたとおりのことが起こりました。その穴の中からは、エビのハサミが見え隠れして、しきりに砂をかき出しているのです。 (あ!テッポウエビ!ということは?) そうなのです。 (共生ハゼ!) 私はシュノーケルのマウス・ピースをちぎれるほどに噛み絞めました。 そして待つこと数秒。穴の中から半分ほど姿を現したのは・・・。 何だと思いますか?ネジリンボウ?いいえ違います。ダテハゼ?違いますねえ・・・。じゃクビアカハゼ?じゃんねんでした。 もったいぶるのもここまでにしましょうね。黒い体の頭部にクリーム色の幅広の帯・・・それはオドリハゼなのでした!A君はこれを捕まえようとしていたのです。 でもね、こういう魚は簡単に採れるものではありません。偵察役のエビ君がすぐに私たちの気配を察してしまい、 (変な奴等が来たぞ!) とばかりに、オドリハゼに危険信号を送るワケですからね。 結局姿を拝んだだけで終わった私たちでしたが、やはり気持ちはおさまりません。帰りの車の中、 (いったいどうしたら彼を捕らえることができるのか?) この話で盛りあがらないわけがありません。 A君曰く 「カニ網かセロビンみたいなのに餌入れといたらどうかなあ?あ!そうだ!君の作った『ギロチン捕獲器』!あれ良いかもしんない!」 私の曰く 「よせやい、糸持って待ってるのかい?そんなの格好悪いよ。採集家たるもの、そういう『騙し』は良くないよ。やっぱりさあ、正々堂々行かなくちゃ・・・。」 とここまでしゃべった時、私の頭に妙案が浮かびました。 (釣りだ!) つまり「水中釣り」ってわけです。小さな釣竿と針の仕掛けで穴の入り口あたりで待っていれば釣れるんじゃないかと思ったのです。 私はこの考えにスッカリ有頂天になってしまって、そのことをA君に話してみたんですけどね・・・。 「なんでい、それじゃ『ギロチン』と同じじゃねーか。」 なるほど言われてみればそのとおり。 でもねえ、 (格好は悪そうだけど、やってみる価値はありそうだな・・・) 思い始めたら止まらないsyunさん、こたつに入りながら娘のおもちゃ箱を引繰り返しては、 (おもちゃの釣竿どこだっけ?) 探しまわるこの頃なのでした。 ![]() オドリハゼ。 果たして釣れるか? (99.12.09) |
| ■劇的!コブダイ ベラ科の魚に「コブダイ」という大変に大きくなる魚がおります。その名は成魚の姿に由来するもので、既に図鑑などでご承知のとおり、その雄のグロさときたら、前額部がコブのように張り出して、気持ちが悪いというか何というか、非常に醜悪な魚であります。(私は釣りをやらないので、詳しいことは知りませんが、夏は美味で刺し身にして食べるそうですね。) ところがこの幼魚というのが、親の姿からは想像もできないほどに奇麗で可愛らしく、もちろん私はそんなことはとうに知ってはいましたが、実際に捕まえたときには、写真とは違うその美しさに、これはもう息を呑んで立ちすくんでしまうほどでした。 他にも、そういう親と子で姿が異なる魚って、沢山いますよね?ショップで見られる魚にも、思いつくだけで、 ・サザナミヤッコ ・タテジマキンチャクダイ ・カンムリベラ ・イロブダイ ほらね、結構いるでしょう? でもね、どれもコブダイには適わないでしょうね。これだけ「劇的」に変身する魚なんて、私は他にはすぐに思い浮かびません。 さて私が彼を捕まえたのは、今から何年前だろう?情けないことに、私の記憶は既におぼろげで、どうもハッキリしません。O島だったか、H島だったか・・・。ホーム・グラウンドでなかったことだけは確かです。覚えているのは、キラキラと輝くタイド・プールの水面の向こう側に、赤に近いオレンジの魚を見つけて、夢中で追いかけて採集したことだけです。 それまでの知識では、深いところにしかいないものだと思ってましたから(今でもそのイメ−ジは変わりませんが)、その時の私は幸運に恵まれていたんでしょう。タイド・プール派の私が、そんなに深く潜るなんて、できない相談じゃありませんか、ねえ? 今でこそベラやスズメに興味の対象が移ってしまった私なのですが、当時はやっぱりチョウチョウウオをメインに追っかけてましたからね。気持ちがそっちの方に傾いてたんでしょう。改めて振り返ってみますと、O島、H島で採ったカガミチョウとかシラコダイのことなんてのは、同じ時期の思い出なんでしょうけど、不思議としっかり覚えているのですからね。 このコブダイ、もう三十年近くも海で生の姿を見てないので、私のメモリからはほとんど消えかかってしまって、その残像なんてかすかにしかない筈です。もう採る自信なんてチットモありません。 薄れかけた残像を修復するには、こうやってイラストにしてみるのが、今の私にできるせめてものことなのでしょうね。 ![]() コブダイ。またの名をカンダイ。 コイツの変身ぶりを観察しようと思ったら 相当デッカイ水槽がなきゃ駄目だろう。 (99.12.13) |
| ■湧き上がる拍手 99年のシーズン後半、私は幾人かの仲間と「憧れ」のMの海に行って来ました。以前からmailのやり取りをしていたN氏、K氏、T先生から、 「Mには素晴らしい海がありますよ!」 そうお聞きしていたこともあって、「Mの海」そこは、私にはもう行きたくて行きたくて仕方のなかった「海」なのでありました。 確かに皆さんがおっしゃるように、それはもうスゴイところで、こちら関東ではめったにお目にかかれないお魚さんたちが、 「いらっしゃい〜」 とばかりに私たちを迎えてくれました。 「今年は魚が少ないですな…」 そうおっしゃるK氏でしたが、私は大満足。来れただけでも幸せ。同行の仲間たちもそんな気分に浸れたのに違いありません。魔力に採りつかれたH氏などは後日再訪したほどでなのですからね。 さて今日は「Mの海採集行」の最終日のとっておきの思い出話をご紹介いたしましょう。 その日ホテルに迎えに来て下さったK氏、S氏に連れて行ってもらったのは県南の磯。黒潮洗う海岸線を南下すること約1時間半で目指す採集場所に到着です。ところがこの日は風も波も強く、生憎のコンディション。 「こんな日は水に入っても無理でしょう…。いつもなら最高の場所なんですが…」 K氏は波頭の立つ海面を見ながら、残念そうにそう呟きました。 でも私たちの正直な気持ちは次のようなものでした。 (せっかく来たんだから、ちょっとだけでも水に入りたいなあ…) するとK氏、S氏は、私たちの気持ちを察したか、 「じゃ、もう1ヵ所だけ行ってみましょうね。」 というわけで覗いたのが、某小学校下の磯。幸いにもちょうど干潮に近い頃で、波の影響もあまりなく、私たちはそこでしばらく遊ばせてもらうことになりました。 磯に下りて行くと、すでに何人かの磯遊びの人たちが来ています。その中に、熱帯魚用の白い網を持ったジャージ姿の年配の「お母さん」がいらっしゃいまして、なにやら一生懸命に魚を捕まえようとしている模様。K氏が尋ねるかどうかしたのでしょう、話を聞くとどうもサザナミヤッコの稚魚を追い詰めて、あともうチョイのところだということです。 それを聞いて、我々遠征者が色めきたたないわけがないですね。それぞれ網を手に行動を開始したのは言うまでもないことでした。 そうして小一時間ほどもそこで遊び、4人でサザナミヤッコ4尾を採集の後、さていよいよ引き上げようとしたときのことでした。私は急にさっきの「お母さん」のことを思い出しました。 (ずっとあのまんまだけど、サザナミ採れたのかなあ?) と…。 そして、ちょっと様子を見に行こうと岩の上に立ちあがったところ、今まで屈んでいた格好の「お母さん」の腰が、遠目にもピンッとばかりに伸びるのが見えました。 そして黄色い声が辺りにこだましたのです。 「きゃー!採れた〜!」 と、回りを取り囲んで様子を見ていた仲間たちから湧き上がる拍手、拍手…。パチパチパチ!照れに照れるお母さん、嬉しさのあまりか、ジャボンッと尻餅です。それを見て笑い転げる仲間たち…。そしてKさんの嬉しそうな顔…。 ああ、なんという微笑ましい光景なのでしょう! 私は一人遠くから拍手を送りながら、呟きました。 「おめでとう!」 って……。 そしてMの海の仲間たちがスッカリ好きになってしまったのでした……。 私が、 (Mの海で一番嬉しかったのはこのシーンだったかな?) と記憶に残る「湧き上がる拍手」のお話、いかがでしたか? いやあほんと、魚採りって、本当に楽しいものなのですよ! (99.12.16) |
| ■カンムリベラの夢 学生の頃によく遊びに行っていたS先生のお宅でのこと。しばらくの間採集談義に花を咲かせ、さてオイトマしようと腰を浮かせた時でした、S先生は私達に向かって、 「今度サ、塾生たちとWの磯に採集に行くんだけど、君達も行ってみるかい?」 と、再び腰を落ち着かせてしまうような「お誘い」をしてくれたことがありました。そのお誘いがほとんど唐突なものであったにも拘らず、私達の返事がもちろん「YES」であったのは言うまでもないことです。 それからというもの、私は遠征の事前打ち合わせでA君の家に遊びに行くたびごとに、 「ねえ?Wにはどんな魚がいるんだろう?」 といったことを確認することしきりでありました。もちろんS先生からは、 「こちらにはいないチョウチョウウオ。それから、そう、サザナミヤッコが採れるんだよ。」 程度のことは聞いてはおりました。でも私はもっと別のことを知りたかったワケで、A君に本当に確認したかったのは、 (カンムリベラの稚魚はいるのであろうか?) ということであって、私がくだくだしく「どんな魚が?」と繰り返し聞いていたその理由は、裏返して言うと、 「ああ、いるいる、絶対いる!」 という答えを期待していたからであったのです。 ところがA君の答ときたら、いつも、 「う〜ん、サザナミがいるんだから、カンムリベラもいるんじゃないの?」 と、分かったような分からないような、はなはだ頼りないものでしたがね・・・。 かくして私にはイライラが募って行き、考えることとといったらカンムリベラのことばかり。図鑑で生息域を確認したって、どうもピンときません。やがては夢にまで見るようにさえなってしまったのですが、これが不思議、夢の中ではカンムリベラを探し回る自分があるのに、肝心のベラ君が一向に登場しないのです。カンムリベラを知らないワケじゃモチロンありません。逆です。あの白い地に小さな黒点と赤い大きな点・・・。だから欲しくて仕方がないのですからね。 遠征の日時が近づいてきても、この状態は変わりません。あるときは海藻の茂みの中、またある時は岩棚の下を覗く自分、しかしそこには何もいない・・・。 記憶の糸を手繰り寄せてみますと、そのまま遠征を迎えてしまった私は、結局のところカンムリベラを捕まえることができませんでした。夢の中でやってみたように、岩棚の下を覗いてみたりもしたのですが、見つけることはできないまま。Wの遠征では幻の魚となってしまったのです。 さてそれからしばらく後のH島遠征で、私は念願のカンムリベラを捕まえることができました。伝家の宝刀「稚魚専用網」の中で泳ぐ彼を見たとき、私の心には一つの区切りがついたようで、とても安心したような気持ちなったものでした。 (ああ!これで姿の見えないカンムリベラの夢を見ることもないだろう!) とね。 ところがですね、私は未だに「カンムリベラの夢」を見ることがあるのです。それはW遠征時の前の夢と少しも変わっていない、いやマッタク同じ・・・。そう「姿の見えないカンムリベラの夢」なのです。 これはいったいどうしたことなんでしょうかね? ![]() 私が見る夢には一向に姿を現さない。 採ったことは数え切れないほどあるのに・・・。 捕まえる前の夢だったから、 どういう状態でいるのかを知らなかったためだと思う。 まだ見ぬものへの「夢」、それ自体が強烈すぎたからに違いない。 |
| ■インターネットと仲間と私 気が付いてみたら、今回のUPでちょうど100話目となるようですね。そこで何かキリの良いお魚さんのお話でもしようかと思ったんですけど、やーめた。それは今後のお楽しみということにいたしましょう。 で、今日は「インターネットと仲間と私」というお話。こうやってHPを公開してるワケですから、たまにはそんなお話も良いでしょう?どうぞお付き合いくださいな・・・。 さて・・・ 転勤から戻ってきて大分経ったある日のこと、A君から投げかけられた次の一言。それが私とPCとの、そもそもの出会いでありました。 「パソコン通信の海水魚仲間の集まりがあるんだけど、君も一緒に行ってみないか?」 その誘いを受けたとき、はじめは、 (PCと海水魚なんて、どこで結び付くのだろう?) そんな感想しか持たなかった私ですが、川口のPさん宅に集まった仲間たちの話を聞くうちに、意外や意外、私は、 (やや!これは面白いことになるかも知れない!) といった、「ヒラメキ」を感じてしまったのでした。 その帰り道、私はA君と別れると、家の近くの本屋に駆け込み、1冊の本を購入しました。それは「Air Craft徹底活用術」という名の本でありました。そして家に着くと、押入の中にしまい込んでいたノートPCを引きずり出して・・・。 かくして私とPCとは、「抜き差しならぬ」関係に陥ってしまったのです。 さて私が押入から引っ張り出してきたPCというのは、CPUが386、メモリ2MB、HD10MBというノート型PCで、OSはMS−DOSのV3.0。もちろんモデムなんかは付いてません。画面だってカラーじゃないんですよ! 私がそれまでPCに抱いていたイメージというのは、 「電卓の大きいヤツ」 こんなものでした。だから電話の線を繋いで使うことなんてチットモ知りません。それが初めてニフティに繋ぐことに成功して、画面に仲間達のメッセージが現れたときの「喜び」というか「驚き」!私は目の前に広がる新しい世界を知って、興奮にうち震えたものでした。 当初私がハマったのが、FAQUA(エフ・アクア)の「海水部屋」という会議室でのやりとりでした。もちろん海水魚の飼育ネタが中心ですが、これがもう面白くてタマラナイ。それから1年ほどの間、私の生活はFAQUAを中心として回って行きました。 しかし、その私にもマンネリの時代がやってきました。そう、文字だけのやりとりに限界を感じはじめたのです。当時FAQUAには「採集の部屋」なるものがあって(今もあるかな?)、もちろん私もそこでの発言を繰り返しておりました。また、今の「easy dose it」の原型らしき「採集魚シリーズ」みたいなものを続けてみたりもしていたのです。でも何か物足りない思いがあったんですね。簡単に言っちゃうと、 「文字だけじゃトゲチョウの赤さを伝えられない!」 ってとこでしょう。 そこで私が興味を持ったのが、インターネットの世界です。そう、「HPの公開」でありました。 (トゲチョウの赤さを伝えたい!) また、 (「採集」を通して、仲間たちと「経験の分かち合い」がしたい!) この想いだったのです。 そして・・・ 見よう見マネでHPを作り、これを公開してから、はや3年の月日が経とうとしています。 で、どうなったかと申しますと・・・ いやあ素晴らしい世界じゃありませんか!私が想い描いていたとおりの展開が私を迎えてくれたのです。古い仲間、新しい仲間との触れ合い、分かち合いの連続です。私は今、この楽しさを謳歌しているというワケなのですね・・・。 さてそんな仲間たちにご挨拶。 先ずはこの1年、お世話になりました。また海でお会いしましょうね。 まだ海でお会いしていない仲間達、来シーズンは海でお会いしたいですね。はやく「こっち」にいらしてくださいな。お待ちしてます。 新しい年が、「採集家」にとって良い年でありますよう・・・。 では、また。 (99.12.29) |