| ■キンセンハゼに疲労困憊 私が今までに何回となく訪れている遠征先に「X」という島があります。ここは採集家にとっては、まったく「パラダイス」のような島です。というのも、小さな島にも拘らず、あらゆる場所が「採集適地」であるからなのです。 私たちはその島に行くと、大抵は次の3パターンの採集を楽しみます。 先ず一つ目は漁港での防波堤採集です。これは1日に3回ほど行います。1回目はまだ薄暗い中、ホテルの食事を摂る前の一仕事です。2回目は磯で遊んだあとの帰り道。そして最後は就寝前の「見回り」です。最近ではこの見回り作業というのがとても楽しいですね。懐中電灯で水面を照らしていると、得体の知れないプランクトンどもが集まってきて、彼らの饗宴というものは、見ていて本当に飽きないものです。 二つ目の楽しみ方は、もちろんタイド・プール採集です。「X」という島は、大潮どきともなると、左のような磯に無数のタイド・プールが出来ます。私たちはそのプールを、それこそ一つずつ丁寧に覗いて歩くのです。(絵は「下げ始め」のイメージですが、完全に引ききると、そこには、それはそれは長大な磯が広がります。「一つずつ覗いて歩く」と言いましたが、それはきっとホンの一部の話に違いありません。 「まだ見ぬプールがあるに違いない!」 私はそう思うから、何度も出かけてしまうのであります。) ここのタイド・プールには私のお気に入りのベラやスズメダイがワンサカとばかりに取り残されていて、ご覧のような地形であることも幸いするのでしょう、追い込む方角さえ間違えなければ、狙いを付けた獲物の大半は難なくgetすることができるのです。 島の大部分はこんな磯でありまして、一つの場所に飽きると着替えもせずにレンタカーに乗り、次の場所へ、そこが飽きるとまた次へ・・・。と、まあそんなことを繰り返すのデス・・・。うう、そんなこと書いてると、また行きたくなってしまいます。駄目だ、この辺にしとかなきゃ・・・ 話を戻しましょう。「X」島採集の三つ目のパターンは、海水浴場の先に広がる砂地混じりの磯採集です。ここの面白さは今まで述べた場所とは違った魚達がいるということでして、季節にもよりますが、例えばキツネベラ、ハシナガベラ、ギチベラなどの稚魚の姿を見ることができます。それと面白いハゼも沢山見られるのです。今日はその中の一つのハゼについてお話いたしましょう。 それは98年の秋のことでした・・・。 腹ばい状態で進んでいた私は、急に角度を増した海底の傾斜に思わず息を呑み込んでしまいました。もともとガバと潜ることをしない私の得意はやはり浅場です。つまり深場を得手としない私がいきなり初めての深場へ迷い込んでしまったわけで、少々気持ちが動転してしまったのです。私は一瞬、 (あわわ!) なんてうろたえたものでしたが、気持ちを落ち着けてよくよく見渡してみると、水深は2メートルくらいで、まったく恐れるに足らない場所であることが分かりました。それにどうも大きなプールであるらしい・・・。 安心した私は、その場所を少し探検してみることにしました。でもザッとみたところでは、比較的大きな魚しかいません。それもお気に入りの魚種ではありません。そこで眼の下の少し張り出した岩棚の下を覗いて見る事にしました。そして軽く息を吸い込んで水中に没したのです。 1度目。この時私は何も発見することができませんでした。2度目の挑戦。これも駄目でした。そして3度目、今度は大きく息を溜めました。すると、岩棚の奥の垂直に切り立った壁に何やら黒っぽい「小魚」の気配があります。 (!!!) と思う間もなく、それは小さな穴の中に逃げ込んでしまいました。息の続かなくなった私は再び水面に上がり、今度は今までよりも大きく大きく息を吸い込みました。そして再挑戦です。 私は幸運だったんでしょうね。再び岩壁に視線をやったとき、そこにいたのは私の大好きなキンセンハゼだったのです! 勿論私はこれを捕らえようと思いました。そこで持っていた網を近づけたのです。が、やはり想像していた通り近くの穴の中へヒョイとばかりに逃げ込んでしまいます。私は息が続かなくなると水面に浮かび、呼吸を整え挑戦を繰り返しました。でも何度やっても駄目。さらに困ったことに、彼が逃げ込む穴は別のところに出口があるらしく、そこから逃げてしまうじゃありませんか! 私はいったい何度同じ動作を繰り返したでしょう?でも結局私は諦めざるを得ませんでした。時間にしたら30分ほどのことでしたが、私は完全にヘバってしまって、 「ヒイハア、ゼイゼイ!アヘアヘ」状態になってしまったのです。 わはは、情けないですね。 いるのが分かってるのに捕まえられない・・・。これを読んでくださった採集家の皆さんは、このもどかしさを分かってくださるでしょうね。 何か良い手立ては無いものでしょうか?教えてください、お願いします。 でもね、薬を使うなんてのは勿論イケマセンですよ。そりゃ邪道中の邪道です。やっぱ真っ向勝負でいかなけりゃ・・・。ねえ? ![]() この子におちょくられて、syunさん疲労困憊。 でも、ちゃんと妙手は考えてある。 (00.01.09) |
| ■撮影不調? 2000年に入ってからはどういうワケか体調がスグれませんで、HPの更新も滞りがちになってしまいました。 どちらかというと「独りよがり」でやってるページですから、 (あまり楽しみにしている人もいないべえ?) などと思いつつ書いてるワケなんですが、しばらく書いてないと、逆に不安になっちゃうもので、そこで、 (今までの自分のペースに戻しちまえば、少しは体調も良くなるんじゃないか?) と、まあそんなことを考えながら、ちょっとばかり面白いお話をしようかなんて思って・・・。 相棒のA君から、 「頼む!手伝ってくれ!」 そんな電話が入ったのは、99年の暮のこと。 「何じゃらほい?」 と私が事の次第を尋ねますと、 「プテラポゴンの子供が生まれそうなんだ。それでね、今度の週末にサ、『出しちゃおう』と思ってるんだ。でさ、その時の様子をビデオに撮っておこうと思ってね。だから君に手伝って欲しいのさ。」 という答え。 「えへへ?そりゃあ面白そうじゃないか!分かった、じゃ今度の休みの日に行くよ。」 というわけでその休みの日、私が彼の家を訪れますと、A君は熱帯魚用の白い網を片手に私を出迎えました。そしてかのプテラポゴンのいる水槽の前まで私を案内すると、 「このまま放っておいても自然と孵っちゃうんだ。でも他にも魚がいるし、自分で食っちゃうこともあるからね。ちょっと残酷かもしれないけど、少しショックを与えて早めに出しちゃおうというワケさ。」 そう説明をして私にビデオ・カメラを手渡したのです。 「先ずは捕獲だ。まだカメラは回さなくていいよ。」 彼は言って、もう一方の手に小さなプラスチック・バットを持ち、実に器用にプテラポゴンを捕まえ、前もって用意していたボールにそれを移しました。そして、 「はい、カメラ頼む!」 と私に合図を送りました。 「えー、これからプテラポゴンの子供を出します・・・。」 ウィーンという軽いモーター音とともに、A君の解説が始まりました。私はカメラを回しながらも、だんだんと興奮してきました。カメラのファインダー越しには彼の手が「大写し」で映ります。そしてその手がやさしくプテラポゴンを包むようにして、水面で少しばかり上下に揺らした時、A君は次のような口上を述べました。 「ハイ、出ます!」 私は思わずゴクリと唾を飲み込みました。が・・・。 出ません・・・。 「あれ?おかしいな。じゃもう1回。ハイ、出ます。」 が、やはり出ません。で、結局何回も同じ事を繰り返したのですが、やっぱり出ません。プテラポゴンは苦しそうにもがくのですが、ただもがくだけで、その口からは1尾の仔魚も出て来ませんでした。 そしてA君は諦めたようにつぶやいたのでした。 「うーん、ちょっと早かったのかもしんない・・・。」 その言葉は随分とガッカリしたようでした。それはその後、お茶を飲みながら話している間もズッと続いているように見えました。 私はそんな彼の様子に、 「もう何回も孵ってるんだろ?じゃ、またチャンスがあるさ。様子を見て、また声を掛けておくれよ。」 とエールを送って彼の家を辞したのでした。 そして数週間後・・・。今度は実に明るい声で電話がかかってきました。 「あはは!生まれた!見に来いよ!」 そして再び訪れたA邸・・・。 30センチ水槽のガンガセの刺の間には、生まれたばかりのプテラポゴンが十数尾・・・。いや、可愛らしいったらありゃしない。 そしてA君の晴れがましそうな顔ときたら・・・。 良かったね。ほんと。 あれ?でも今回の撮影はどうしたのかな?いけない、また聞き忘れて帰って来てしまいました。憶えてたら、確認しておきましょう。 ![]() バンガイ・カージナルフィッシュの異名を持つ。 生まれたての頃はまるでヘリコプタのような体型だ。 数年前に日本で流通しはじめた頃には、注目を集めたものだが、 新種として記載されたのは1933年と、意外と古いのだ。(注) 最近では多くの人が孵化に成功している。 クマノミと比べたらはるかに簡単。 一度挑戦してみると良い。 (注)IOPダイビングニュースVol.9 No.6より |
| ■新種じゃなかったの? 以前にもお話したことがあるように、採集家の誰でもが持つ夢に「新種の発見」というものがあります。とは言っても私のようなタイド・プール派採集家にとっては、それは99.99・・・パーセントも不可能な話で、あの広い海の干満の差で出来る、言わば「水溜り」みたような場所では、そうそう「珍魚」に巡り合えるものではありません。 さて新種の話で私がいつも思い出すのが、スミレヤッコの話です。これはご存じの方もいらっしゃるとおり、故安田富士朗先生の発見によるものですが、知らない人のためにちょっとだけ、私の記憶を辿ってそのいきさつをご紹介しておきましょう。 安田先生がこの魚に初めて出会ったのが1960年代後半の11月、場所は石垣島と竹富島の中間あたりの場所であったそうです。この時は運悪く採集することができず、結局カラー写真を撮っただけで終わったらしいのですが、その後2年近く経ってからのこと、今度はなんと伊豆大島でこの魚に再会。しかもこれを採集することが出来たというのです。 この時の先生の感激はいかばかりであったことでしょう!? それは先生が後に述懐していらっしゃる言葉に読み取ることができます。 「その時の感激は、ちょっと口ではいいあらわせないものがあった。何年ぶりでの恋人との再会、いや私にとっては恋人でもこんなに感激はしなかったであろう。網の中に入った魚を、まるで宝物のように研究室に持ちかえったのを覚えている。」 (ダイビングワールド社「珊瑚礁の魚」沖縄編 安田富士朗著) 私は研究者でもなければ、専門家でもない、ただの魚採りのオジさんではありますが、この言葉には、同じ採集家の立場として、異様なほどの共感を覚えてしまうワケなのであります・・・。 閑話休題。 実は私にもそれに近い体験があって、それは家族と出かけた海でのこと。息子と一緒に、防波堤の上から海面を覗き込んでいたところ、私たちはコンクリートの岸壁の下の平らな岩場に小さなタイドプールがあることに気が付きました。そして私はその中の岩陰に、今まで見たこともないようなちょっと変わった小魚を発見したのでした。 「お父さん!なんか変な魚がいるね?」 息子も私の様子に気が付いたようでした。 「そうだね?採ってみようか?」 息子は興味津々といった面持ちで頷き返しました。 「ウン!そうだね!」 私はそれがスズメダイの仲間であることは、目を通って背鰭に向って走るコバルトのラインで見てとっておりましたから、チットモ慌てることがありませんでした。この種は遠くに逃げることはありません。しかもタイド・プールです。私はいとも簡単にコレを捕まえることができました。 ところがです。捕まえてみてコレをシゲシゲと観察してみると、どーも今まで一度も採集したことのないスズメダイでした。発見した当初は、 (クロメガネかな?) なんて思っていたのですが、コレがぜんぜん違う。色は濃紺で、雰囲気的にはデビル・ダムセル(ネオンスズメダイ)の若魚といった感じですが、もっとシンプルなのです。 「ありゃりゃ?こりゃ新種かもしれないぞ!」 そして私は安田先生よろしく、これを宝物のようにして家に連れて帰ったのでありました。 捕まえた魚はスズメダイ、飼育に難儀をすることもありません。私は自宅の水槽で腰を落ち着けてこれの観察と同定に努めました。が、手持ちの図鑑を見ても、幼魚の写真自体が少なくて、しばらくの間はその正体が分かりませんでした。 私はだんだんと複雑な気持ちになってきました。 (うーむ、正体が分かって欲しくもあり、欲しくも無し・・・) でも結局分かっちゃったんですねこれが。水槽飼育で大きくなるうちに、「スミゾメスズメダイ」であるってことが・・・。 私が体験した「新種発見もどき」のお話は今のところコレくらいのものです。あとは皆知ってる魚ばっかしですが、それがどんな魚であれ、網に入った時っていうのがまた楽しくて、延々とこの趣味は続いて行くものなんだなあということは、やっぱり安田先生の言葉がそれを表しているんじゃないかと思うのでアリマスね。 ![]() collectingのpageにも載せといたけど、 これがスミゾメスズメダイ。 ちょっとデビル・ダムセル(ネオンスズメ)に似てるよね。 (00.01.28) |
| ■ヌラリクラリ 本来は南の海の住人なんですが、関東以南でも採集することができる魚に「ミナミギンポ」という大変に美しいギンポがおりまして、今日はそのお話。 私が捕まえたのは、今から数年前のこと。このとき私は別の魚を追いかけておったのですが、運悪くソイツを逃がしてしまって、 (あ〜らら、失敗。さてどうしようかしら?) なんて辺りを見渡していたところ、私の右手の中層に、何やらヌラリクラリとする生物がいることに気が付きました。 それはオレンジ色をした細長い魚で、波に抗うように、一定の場所でヒョロヒョロとした運動を繰り返しておりました。大きさは4センチくらい。そのときは正体はハッキリとは分かりませんでしたが、魚には間違いがありませんでした。 (お、これは丁度良いサイズだ!) そう感じた私は、早速にこの魚に戦いを挑むことにいたしました。 そこで網を構えて近づきますと、逃げる様子もありません。 そして尚も近づくと、私にはそれが何者であるかやっと分かりました。 (おや!ミナミギンポ?これは珍しい!) 私は嬉しくなって、彼を網に入れようとしました。ヌラリクラリと泳ぐ様を見ていた私は、これが簡単に捕まえられると感じていました。 しかし意外にもコレが思うように行きません。網を近づけて、 (ハイ、最後の仕上げ!) なんて思っておりますと、実に器用にこれを掻い潜ります。でも遠くに逃げることはありません。少し離れたところでヒョロヒョロのヌラリクラリ。再び網を近づけていっても同じこと。しかしまたも網に入れることが出来ません。で、そんなことを何回か続けていると、そのうちに私の方もムキになってきます。でもここで荒っぽく出ると、取りかえしのつかないことになります。そこで私は戦法を変えました。そうです、コチラが有利な場所に追い込んでしまえば良いのです。 そしてやがて追い込んだ入り江のような場所で、私はこの子をやっと網に入れることができたのです。 さて家に帰って図鑑で確認(これが可笑しいですよね。だって100%ミナミギンポだっていう確信があるのにも拘らず、必ず確認しちゃうんですから・・・。贔屓のチームが勝った翌日のスポーツ新聞を読むような感じなんでしょうか?あるいはやっぱり自信がない、そんなところかもしれません)してみると、やっぱりミナミギンポです。そして最後の最後に確認です。 「生息範囲:熱帯域」 やっぱりこれですね。温帯域で採った熱帯域の魚・・・。 私は何だかトクをしたような気分になって眠りについたのでした。 ![]() 細長〜い体でヌラリクラリと泳いでいた。 長虫系の動きだったので、最初はちょっとビビッた。 でも以前にも捕まえたことがあるので、 その残像は頭の中にシッカリと入っていた。 (00.03.31) |
| ■隻眼のツバメウオ 学生の頃にアルバイトをしていた「Y」というショップでは、割烹料理店の水槽をセットすることがよくありました。タイやイシダイなどを泳がしておいて、板さんが網で掬って料理するアレですな。 そういう水槽は、刺身になるようなサイズの魚を泳がしておくワケですから、一般家庭にあるような大きさの水槽ではありません。最低でも2mとか3mの水槽でないと用を足しません。従ってそういうところへセッティングに出かけると、大抵が「1日仕事」になっちゃって、結構辛い仕事なのでありますね。これが熱帯の魚だったらまだ励みも出るというものですが、扱うのは食用のデカイ魚ばかり。いくらお魚好きのsyunさんでも、尻込みをしようというものです。 とは言ってもそこは「お仕事」です。私は嫌々ながらもF氏やN先輩のお手伝いとして付いて行っておりました。と、ある時のことでした。私は面白いことに気がついたのです。それは水槽に泳ぐアジの眼のことでした。 それはどういうことかと申しますと・・・。 水槽のセッティングが終わって、別のイケスや活魚用のトラックからアジを移して様子を見ていると、眼の欠落したアジがいることが多いのです。それも完全に欠落して空洞のようになっている個体から、「かさぶた」のようになっているものまで幾つかのパターンがあるようです。中には、 (あれれ?眼が再生してるんじゃないの?) と思えるほどに、あたかも眼のような動きをする「かさぶた」を持つアジまでいるではありませんか。これはどういうことなんでしょう? さて、私の家の魚水槽には98年のシーズンに防波堤で捕らえてきたツバメウオがいます。このツバメウオ、食欲旺盛で今では5倍くらいの大きさになってしまったのですが、水替えを忘れていたのが災いしたか、ポップ・アイに罹ってしまい、その後の手当ても及ばず片目を無くしてしまいました。私は彼の空ろな眼窩を見るたびに、 (もうちょっと早く気が付いていれば!) そのことばかりを悔やむのでした。 ところがです。ある日のこと、彼の窪んだ眼窩を見たときに、その奥にある白い「根」のようなものがクルクルと動くことに私は気が付きました。 (こ、これはあの時と同じだ!) そう、昔私が割烹料理店で見たあのアジ君と同じなのです。疑問の「?」が私の頭の中をグルグルと回り始めたのは言うまでもありません。。 (これはどうしたことなのだろう?) 皆さんはどう思います?魚の眼は再生するのでしょうか?それともそれは「義眼」のようなものにすぎないのでしょうか? 私は、 (そんな眼にしてしまって、ごめんよ・・・) と申し訳無く思う反面、 (これから先、どういう展開になって行くのだろうか?) そんなことが気になって仕方なくなりました。 (結果をつきとめるまで、前にも増して面倒を見てあげよう) それが私にできるせめてものことなのでしょうね。 (00.03.31) |
| ■奥様達はヤド君がお好き 私には「まりん」という名の、まもなく5歳になる娘がおります。もちろんmarineの「まりん」というワケなんですが、今思うと、 (ちょっとマズイ名前だったかな?) と悔やまれてなりません。 だって娘時代までは「まりんちゃん」で通用しますが、 (これがバアさんになっちゃった暁には、どう呼ばれるんだろう?) なんてことを想像して御覧なさい。皺くちゃの梅干ババアが「まりんバアさん!」ですか?そりゃないですよねえ。恨まれること必至です。まあ、その頃には私はこの世になく、天国だったら「魚命救助」で表彰されているか、地獄だったら「お魚拉致の罪」で百叩きの刑を受けていることでしょうから、関係ないといえば関係ないことなんですけどね。 前置きはコレくらいにしておきますが、近所には娘と同じ位の子供たちが沢山いて、彼女らの遊び場所が毎日毎日私の家の前!しかも子供だけじゃありませんからね、これが。当然お母さんたちの井戸端会議場ともなるワケで、この騒ぎが尋常じゃない。日曜の朝なんてのは、皆父チャンが家にいることのストレス発散とばかりに、ワーワーきゃあきゃあ、それはもう喧しいこと! さてある日曜日のことでした。例によって例のごとく、朝もはよから娘たちと彼女ら主婦たちがギャハギャハと大騒ぎをしておりますと、一瞬の静けさが訪れたではありませんか。 (やれやれ、やっと解散かい?) と私がホッとする間もなく、ピンポ〜ン!というドアホンの音。そこで私が玄関に出ますと、彼女らのボス格と思しきオネエサマがニコニコと笑みを浮かべながら次のようなことをおっしゃいます。 「ねえ、ご主人?ご自慢の水槽見せてくださいません?」 私は一瞬、 (どうしようか?) と思いましたね。だって部屋の中にはデカいポリバケツや自作の工具などが散らかっています。それでなくてもシーズン中は海にばっかり行っちゃってる変なオジさんで通っている私です。そんな部屋を見られて、コレ以上の悪評を立てられるのは嫌ですからね。でも、 (ここで断ると、娘やカミさんの肩身もせまかろう・・・) というわけでもないのですが、数人の後ろで申し訳なさそうな顔付きでいる家内の視線を感じた私は、 (これもご近所付き合いかもなあ?) そう思って、快く彼女らの見学を受け入れたのでした。 (リーフ・タンクなら女性受けするかな?ここは一つ「お魚採集」に関する薀蓄でも傾けてやるか?) 私は有無を言わせぬ彼女らの雰囲気に気押されながら、薄汚れた玄関の魚水槽を背中で隠して、 「ま、まあ2階にどうぞ」 と、2Fの居間へと通したのでした。と、水槽の前に陣取った彼女たちは期せずして驚愕の叫び声を上げました。 「キャー!!!ヤドカリが沢山いるわよ!」 さらに、 「あらやだ、見て見て!カニさんもいるワ!」 「あらほんと!でもなんか黒くて恐いわね。」 そして極め付きは、 「やっだ〜!なにコレ?この黒くて『うんこ』みたいなやつ。え、ナマコ?嫌だ気持ち悪い。あら『うんこ』がウンコしてるわ!!!」 (お、おまえらなあ・・・。見るとこ間違えとらんか?・・・) リーフ・キーパーなら、私がどんな思いをしたか?想像がおつきでしょう? 結局彼女たちは、ヤドカリとカニとナマコに興味を示しただけで、私が苦労して採集してきたチゴベニハゼやヨスジハゼ、ヒバシヨウジなどには目もくれることもなく、 「あ、いけない。子供たち放ったらかしだわ!さ、みんな帰るわよ!」 というボス格オネエサマの号令のもと、ものの5分もしないうちに再びドヤドヤと階段を降りて帰って行ったのでした。 台風一過、呆然と立ち尽くした私には次の言葉を漏らすのが精一杯でした。 「つ、疲れた・・・。」 ![]() 奥様方のお気に入りはやはりヤド君だった! そりゃそうデス。動きがユーモラスだものね! |
| ■秘技「クマノミじゃらし」 99年の暮、某誌主催の忘年会に出席をする前に、我が朋友Sanさんと秋葉原をうろついていたときのこと。ガード下の狭いお店に「レーザーポインタ」なるオモチャを見つけた私は、迷うことなくコレを子供のお土産にと買い求めました。 「レーザーポインタ」とは、レーザー光線を照射する人差し指大の懐中電灯みたいなもので、プレゼンテーションなどで行われるスライドショーのときによく使われるアレです。いつぞや野球の投手の目に当てた悪い奴がいて、スポーツ新聞なんかで騒がれたことがありましたっけ・・・。 さてこういうオモチャというのは、結局のところは本人が遊んでみたいから買うというのが実のところでありまして、私はこれを車のキーホルダーに付けて持ち歩いては、色んなところで遊んでいたのでありました。 そうして暫らくたった日のこと、私に対抗しようと考えたのか、真似ッ子「まんごろう」の息子が同じようなオモチャを買ってきまして、しきりに居間の壁にレーザー光を当てては喜んでおります。で、私がふとそれの入っていた箱を見ると、次のような注釈文が書いてあります。 「猫などのペットの遊び道具としても使えます・・・。」 (おお!) 私は閃きました。つまり、 (こりゃ、魚にも使えるかも!?) ときたワケですね。 さあ、私は自分のレーザーポインタを取り出すと早速にリーフ・タンク内のライブ・ロックにこれを照射してみることにしました。すると分厚いガラスを難なく透過した光は、ゴツゴツした岩肌に赤い小さな斑紋をクッキリと浮かび上がらせました!さすが300m先をもポイントできるだけはあります。 と・・・。 なんとこの光に、採集してきてから4、5年も経つカクレクマノミが反応したのです。それも瞬時に。どうもエサか何かと思ったのでしょう。私はいよいよ面白くなって、今度はその光を上下左右に、果てはグルングルンと動かしてみました。そして面白いじゃありませんか、カクレクマノミときたら、まるで猫がじゃれるようにしてその光を追い掛け回すのです! 私と、その様子を盗み見ていた息子は、それこそお腹を抱えて 「あはは、あはは!」 の大笑い。いやはや楽しいのなんのって・・・。 以来私たち親子は、このオモチャのことを「クマノミじゃらし」と呼ぶようになったのでアリマス。 大体700円から900円くらいの代物です。一度試してみます?んなアホなこと真似する人なんていませんよね? (00.03.31) |
| ■妻への「疑念」 2000年の3月末、私は長年勤めた会社を退職いたしました。退職に至った背景については『語らい』に書いたとおりですが、それまで勤めて来れたのも家族の協力があってこそ・・・。そこで私は決意をしました。 (けじめを付ける意味と、家族慰労の気持ちを込めて、南の島に行っちゃおうっと!) てなワケで、私達家族は採集道具を携えて南の島へ行って来たのであります・・・。なんか変な家族・・・。違うか?私が変なだけ? さてその珍道中の様子は別の機会にご紹介するとして、今日は帰って来てからの裏話です。 旅行(遠征?)から帰って2週間が過ぎようという頃、私が玄関に新たに設置した水槽の手入れを行っていますと、 Ring Ring! ・・・電話が鳴りました。 (電話というものは、どうして人が熱中しているときにばかり鳴るのだろう?) そんな思いを抱きながら、濡れた手で受話器を取り上げ耳に当ててみると、向こう側からは妙にくぐもった男性の声が聞こえて来ました。 「あ〜、もしもし?Sさんのお宅?」 私が 「はいそうです。」 と答えると、 「あ、そう・・・。」 抑揚のないその声は続きます。 「あの、K子さんはいますか?」 K子というのは私の家内の名前なんですが、私は訝しく思いましたね。普通かかってきた電話というのは、必ず相手の人は自らを名乗るじゃないですか。それなのに、この電話の主はそれもせずに、いきなり家内を出せというのですから。私は少々むかっ腹が立ってきて、ぶっきらぼうに返しました。 「K子は私の家内ですが、ご用件はなんでしょう?」 すると意外な展開が私を待っていたのです……。 「あ、こちら『南の島警察』の者ですがね。おたくご主人?」 私は全く予期していなかったその言葉に、今度はいささかうろたえてしまいました。 (ま、まさか?カミさんが犯罪でも犯したか!) こちらの狼狽に気づいたかどうかは分かりませんが、電話の向こうの声は続きました。 「あのね、今月の〇〇日、おたく、こちらの『南の島』にいましたね?」 (う、今度はアリバイだ・・・。いよいよヤバイ。どうしよう・・・。) 私の心中にたちこめた暗雲は大きく膨らむばかりです。 「『南の島空港事務所』からの届け出によりますとですね・・・」 (ゲ!土産物の万引きか?そういや帰る時、なんか荷物が多かったんだよなあ・・・。) もう駄目、私の心臓は破裂しそうです・・・! が・・・、あまりにもあっけない幕切れが二人のやり取りに訪れました。 「小銭入れ落としてませんか?金額は900円。」 そして私は情けない声で答えたのです。 「あ、それ、家内のじゃなくて、私のです・・・。」 旅行というものは、何かと携行品が多くて困りますね。チケットやら財布やら、小銭やら・・・。どうしてあんなに小物が多くなるのでしょう?それはまあ致し方ないとして・・・。帰って来てポケットをまさぐってみたところ、小銭入れが見当たらない。 (どこか荷物の中に紛れ込んでいるのだろう。そのうち出てくるさ。) と思っていたんですが、説明によると、家内が座っていた飛行機の座席の間に挟まっていたらしいんですね。ズボンの後ろポケットにでも入れておいたのが、何かの弾みで落っこちたのでしょう。それをお掃除のオバサンが見つけてくれたというワケです。 「いちおう確認ですから、小銭入れの形状について説明してください。」 ホッとする間もなく答えた私の説明はまことにもって恥かしい内容でした。 「は・・・、い、色は、く、黒で、ボタンで留めるものです。中には布で仕切りがしてあって……、大きな破れ目があるはずです……。」 と、いままでの事務的な話ぶりはどこへやら、『南の島警察』のおまわりさんは、笑いながら言ったのです。 「あはは、ほんとだ。確かに破けてますね。いや分かりました。いちおう書類を付けて送りますからね。受け取ったら確認をしてください。では・・・。」 あ〜良かった!カミさんが犯罪者じゃなくって・・・。 さて実は私、家内には『南の島警察』から電話があったことは話してありますが、抱いた「疑念」のことは秘密にしております。そんなことしゃべったら、タダじゃすみませんからね…。 (00.04.15) |
| ■春の風景 トンネルを抜けてしばらく歩くと、左手に海が見え始めます。ナップザックを背負って歩く私の胸の鼓動はだんだんと早くなってきます。足の運びが少し軽くなって来たのは気のせいでしょうか? なおも歩みを進めると、視界をわずかに占めていた海原も両眼いっぱいに広がり、磯の香りが鼻孔をくすぐります。海面に反射する春の日差しががチカリチカリと目を刺しました。 (着いた!) 朝早くにT駅を立って2時間弱。やっとのことで着いた磯。駅から20分の道のりは背中を汗で濡らすには十分の距離。まだ盛夏にはほど遠い時期にも拘らず、私のTシャツはグッショリと重くなっていたのでした。 既に漁を終えて陸に上げられた数隻の船の脇を、躓かないよう、転ばないように気を付けて歩き、やがて荷物を下ろしたのは漁師さんたちが網を繕うテント小屋。 身支度は簡単。招く波音を聞きながら、上着を脱いでタオルを腰に巻き、大事な部分を隠して海水パンツにはきかえると、目指すポイントにまっしぐら。 つま先で冷たさを計り、 「うう、つべてえ!」 と一人呟き徐々に水に浸かります。すると辺り一面は海藻畑。マメタワラ、アカモクなどの褐藻が、「おいでおいで」をしています。 くすぐったさを堪え、両手で海藻を掻き分けると、そこにはキヌバリが。少し先の岩陰にはタカノハダイ。足を突っつくのは、まだ透明さの残るカゴカキダイの稚魚です。おっと、ゴロタ石の天井にはさかさまに張りついたウバウオが・・・。そしてその脇にはアオウミウシ。おやおや、掻き分けた海藻の枝間にはキヌカジカにアサヒアナハゼ。妙なダンスを踊っているのはワレカラでした・・・。 …………………… 高校生の頃の思い出が甦ってきました・・・。まもなく5月。こんな風景を味わえるのはもうすぐのことですね。 シーズンはゆっくり、ゆっくりとやって来るのです。 ![]() 採集家にとってキヌバリは春の風物詩だ。 もうすぐ会える日がやってくる・・・。 ところでこのキヌバリ、 日本海産と太平洋産で違いがある。 知ってた? (00.04.18) |