| ■トビウオ大編隊と釣り少年 2000年の某日、某漁港での出来事でした。 既に夏休みに突入したその日、シーズン前には考えられないことですが「いつもの漁港」脇の道路は車で満杯。橋の上さえ「駐車場」になってしまうほどの混雑ぶりです。 (あやや、いつもの場所が…) 私は嘆きつつも少し離れた市営の駐車場に車を停め、隣でビデオ・カメラの準備をしているA君を放っておいて、一人静かに支度にかかりました。 実は、この日私には密かに狙っている獲物がありました。それはハリセンボン。その日よりも少し前の日に同じ漁港で捕まえたハリセンボンが、色も赤くてとってもキレイだったのが忘れられなかったからでした。 支度と言ったって、片手に竿、もう一方の手に直径60cmの網。それと肩から斜に掛けた携行イケスという至極簡単なものなのですが、こうしないと雰囲気が出ません。 (もう一度、ハリセンボンを!) という下心がありますからね。先ずは気持ちから自分を盛り上げる必要があるのです。私はそんな格好で、ビデオ・カメラの動作確認をしながら歩くA君を尻目に、目指すポイントへと歩を進めました。 さて着いたポイントの周辺はというと、これまた釣り人で満杯の有様。親子連れから単独の人まで、岸壁にズラリと並んでいるのでした。そして彼らの足元には冷凍の撒き餌が捨ててあって、昇る朝日に溶けたそれは赤い水溜りをそこかしこに作り、サンダル履きでは余程用心しておりませんと歩けないのです。おまけにその悪臭ときたら…。でもここまで来て帰るわけには参りません。私達は彼らの邪魔にならないよう、赤い水溜りを踏まないよう、注意深く進みました。 ところがこの日はどうしたことか、面白い魚の姿が見当たりません。まさかこの人達がハリセンボンを釣ったりはしないでしょうし、大体私達が探しているのは流藻の下や、その付近にいる「ヘンテコ」な小さな魚なのですから、そもそも釣りの対象となるワケがないのですものね…。 それでも私は何とか見つけてやろうと自慢の眼を凝らしたりしたのですが、やっぱり駄目。私はA君に向って提案をしようとしました。 「ねえ、ここにはいないからサ、アッチのコーナーに行こうよ…」 とその時でした、A君が、赤い水溜りをガニ股で器用に飛び越えながら、小走りに近寄って来ました。 「ちょっと、ちょっと!トビウオのカ、カタマリ!」 その声はかなり興奮した模様です。で、彼が発見したという「カタマリ」の居たと思しき辺りに行ってみますとコレが見当たらない…。 「アレ?おかしいなあ…、この辺に居たんだぜ…」 もちろんこういう場合には絶対にウソを言わないA君のことです。だから私も必死になって探してみたのです。でも再び「やっぱり駄目」なのでした。実はこういう場所というのは、見つけたら目を離してはいけないのが鉄則。遠くに逃げたりはしませんが、保護色や擬態、海面の光の反射などで見失ってしまう場合が多いからです。流藻系の採集で「勝ち」をおさめるには、 ・絶対に網とバケツを持って歩くとこと ・見つけたら目を離さないこと なのですからね。つまり私達はそれをスッカリ忘れてしまっていたのでして、ああ情けない…。 さてしばらく探しても見当たらないので、諦めの良いA君はサッサと次の場所へ進んで行きましたが、残された私はというと、ど〜も消化不良のままです。そこで「駄目もと」と足元に目をやったときでした…。なにやら虫のようなものが、水面に屯してます…。尚も目を凝らすと、その「屯」していたものが何かの拍子に、一斉に同じ方向へと移動を始めたのです。スーイ、スイと…。 「トトトト、トビウオの編隊だ!」 私は小さく一人ごちました。上から見えたトビウオは、背中が灰色(に見えた)で例の翼は銀と茶色の斑!それが20尾ほどかたまっていたのです。大きさは2cmくらいでしょうか?それが直径30cmほどの範囲にごちゃまんと! (A君の言っていたのはこれだったのか!) 私は納得をしました。 (そうか!これだったんだ。) さて、この編隊の動きを観察していますと、規則正しいというか何というか、例えば近くの釣り人が糸を投げる時の気配を察してか、実に整然と移動をするのですね。上から見ていると、黒っぽい円盤がヒュ、ヒュッと向きを変えるように見えるのです。何度も捕まえてはいる魚ですが、私もこれだけの大編隊を見るのは初めてで、私はすっかり夢中になって円盤の動きを目で追いました。 そこでふとA君のことを思い出した私。今度はちょっと大きな声で彼を呼びました。 「お、おじさん!いる、いる、トビウオの編隊!」 するとその声にとっさに反応したのはトビウオの赤ちゃんではなく、隣で糸を垂れていた釣り少年でありました。少年は一瞬私の顔を覗きこむようにして、それから私がA君に向って指し示す水面に目を移しました。なにやら嫌な予感・・・。そしてA君が私の元へ辿りつこうとしたその時! 何と、かの釣り少年は自分の足元にあった小石を幾つも拾い上げると、その円盤に向ってポイポイと投げ始めたのでありました。 「あ〜あ〜あ〜、アにすんだよう!!!逃げちゃうじゃないか!!!」 私のあまりの血相に恐れをなしたか、この少年、舌をペロリと出して、釣り竿を肩に脱兎のごとく逃げ出したというワケですが、おかげでトビウオ君たちはピョンと飛び跳ねながらはるか沖…。結局A君の再確認はかなわなかったということなのでありました。 トビウオは輸送に弱くて家に持って帰るのも難しく、また飼育するのも餌の問題で大変に苦労をいたします。だから私は採集をするつもりなんてのはサラサラなくて、ただただ観察していたかっただけなんですけどね、いったいあの少年は何をするつもりだったんでありましょうか?それにしてもなんてガキだ…。 それはともかく、 「ビデオ持ってきたんだから、撮っておけば良かったネ…」 こう嘆きの呟きを漏らしますとですね、A君すかさず次のように答えたのでありました。 「あ、ダイジョブ、最初めっけた時にちゃんと撮ってあるから」 あ〜あ、良かった。
(00.08.20) |
| ■あのオレンジ色の憎いヤツ bbsにも整理のとおり、水面下で行なう「採集」の世界にもルールとか良識みたいなものがあるのだと「私」は思っておりまして、今日はちょっとその辺に絡むお話です。 仲間のTさんやA君と、 「少し違うところへ様子を見に行ってみようよ!」 という話になり、いつもよりもズッと南へ下がった磯を目指したのは、8月頭のことでした。 普段はA君のお抱え運転手に徹する私ですが、この日はTさんの運転する車の後部座席で (こりゃ楽チン!) とばかりに、グウグウと鼾をかかせて戴いて、気が付いたらもう海のそば。いやはや大変に良い思いをさせて戴きました。仲間の運転で海に連れて行ってもらったなんて、随分と久しぶりなワケでして、これはもう感謝感激雨あられですな。 それはともかく、 「ちょいと覗いてみましょうか?」 というTさんに案内されたのはE漁港。そこは蠣殻の付き具合から判断してまだまだ歴史の浅い港と思われましたが、覗き始めてスグにチョウハン君の姿を発見した私達には、 (お、これは!) と何やら良い予感です。そして続いて覗いたコーナー付近ではアケボノ君の大小!早速に大の方をgetすると、私達は安堵の笑顔を浮かべたのでした。 (うへ、幸先良いね。次も期待できるかな?) さて、途中いくつかの港を寄り道しながら着いたのはSの磯です。私達は空いたスペースに車を停め荷物を降ろし始めました。ここは去年サザナミ君が採れた場所です。3人とも急いた気持ちでワサワサと準備にかかったのは言うまでもありません。 と、その時でした。すぐ近くで同じように着替えをしていたオジさんが近寄ってきて、一番近い私に声をかけました。 「こら、ここは海に入っちゃ駄目なんだよゥ。」 (???) と私。 オジさんは繰り返します。 「あのね、ここはね、オレ達しか入れないの。分かった?」 言われるまでもなく、私は全てを悟っておりました。でもちょっと悔しいので聞き返しました。 「何故ですか?」 すると、私の持つウェットスーツに目を落としながらオジさんが答えます。 「何故も何もないの!ここはね、オレ達しか入れない決まりなの。とにかくアッチ行って。早く早く!」 私はとうにアッチに行く気になってましたが、尚も食い下がってみました。(こりゃ我ながら珍しい) 「ボク等は貝やイセエビなどは採りません。採るのは小魚だけです。それでも駄目なんですか?」 そしてやはり思っていたとおりの返事が返ってきました。 「駄目駄目。ウェットスーツなんか、絶対駄目!」 「じゃ海水パンツなら良いですか?シュノーケリングなら良いですか?」 でも同じです。オジさんの答えは、 「駄目なものは駄目!」 そして最後のトドメを私達に刺したのです。 「これがネ、オレ達のユニフォームなの!これ着てない人は入れないの!」 オジさんは胸の一ヵ所を摘むと、自慢気にふんぞりかえったのでした。。 おお、そうなのです!すっかり説明を省いておりましたが、このオジさんのいでたちというのが、上下ともジャイアンツ・カラー、つまりオレンジ色もオレンジ色の、それはそれはド派手な衣装だったのです・・・! なぜ?どうして?そんなことを考えてはいけないようですね。ただただ大人しく引き下がるしか道はないのです。私達は出したばかりの荷物をシブシブと積み直しまして次へと向ったのですが、釈然としない気持ちはつのるばかりでした。 どうしたら良いんでしょうね?いやいや、やはりどうしようもないのです。あのオレンジ色の憎いヤツにはかなわないのでありますから・・・。 あ〜あ、何か良い方法はないものですかねえ?・・・。 (00.08.25) |
| ■しでえじゅんぐり 「採集2000」の速報のとおり、8月の27、28日の両日にわたり、WはSの磯で「お泊り採集」を実施してまいりました。実はこの企画、1ヶ月ほど前に実行寸前まで行ったのですが、台風の余波を受けて延期になったという経緯がありまして、まあ言ってみれば「難産」の末の遠征行というワケだったのですね。 で、そんな背景で、メンバーも当初からは入れ替わっちゃったりして、その結果参加かなわずギリギリしている仲間もいらっしゃることでしょうが、そこはまあカンベンしてください。ダイジョブ、また企画しますから。 さて今日は一緒に連れて行った息子を見ていて感じたことをお話します。それは「しでえじゅんぐり」というお話。 「しでえじゅんぐり」というのは耳慣れない言葉ですね?私はこの言葉をOに住むおばあちゃんに教わったのですが、字にすると、おそらく次のようになるのではないでしょうか。(違ってるかもワカリマセン。私の勝手な想像です。) ・次第順繰り で、これはどういう意味かと申しますと、これも私の解釈ですが、 「好むと好まないに拘らず、子は親と同じような道を歩むものなのだ」 となるのでしょう・・・。 この遠征で2番目に訪れた磯でのことでした。深場へ散って行った私やメンバーから取り残された息子は最初のうちは水際で遊んでおったようです。ところが彼には「見極める目」がありません。やがて面白くなくなって、小高い岩山の上で私達の帰りを待つことにしたようでした。 一方の私も深い場所での採集は全くの不得手です。水深6,7mの場所で上から見下ろす光景というものは、それはそれは素晴らしいものですが、いくら頑張っても無理なものは無理。そのうち岸近くに残して来た息子のことが気になりだして、 (転んでケガでもしてないだろうか?) とか、 (一人で心細くないだろうか?) なんて気になって来ました。そこでふと水面から振り返りますと、遠くの岩山に膝を抱えてポツンとする緑のポロシャツの息子が見えます。 私は何だかいとおしいような気持ちになって、引き返して彼と遊んであげることに決めました。 さてようやくのこと、岸に泳ぎ着くなり息子に、 「どうだ、何か採れたか?」 と尋ねますと、彼は詰らなそうにかぶりを振りました。 「駄目だよ。何にもいないもん。あそこにさ、おっきなプールがあるんだけどさ、見たんだけど何にも居ないよ・・・。」 指差す先には確かに大きなプールがあります。 私は再び尋ねました。 「ほんとか?ほんとにじっくり見たか?よおし分かった。じゃ、もういちどお父さんと見てみよう。」 そこで私は、彼の言う「おっきなタイド・プール」へと向いました。そして、 (ふふん。いそうな雰囲気だゾ・・・。どれどれ・・・) と、ある割れ目を覗いた時でした・・・。間に挟まったウニのトゲの間に、私のメモリに刻み込んである「かたち」と「色」にマッチングするものが・・・。 それはサザナミヤッコでした・・・。 私は振り返って、後から付いてくる息子を呼びました。 「居るじゃないか。サザナミだぞ!」 そして息子の仰天の声。 「え、ほんと!?どこどこ?」 私はサザナミの居場所を教え、後のことは息子に任せることにしました。もちろんそばに付いて、最後の仕上げは手伝いましたがね。 「ああああ!やったやった!と、採れたよ、お父さん!サザナミだよ!」 そう叫んで、あまりの嬉しさに尻餅をついて喜ぶ息子を見ながら、私は「しでえじゅんぐり」を思ったのでした。 そうなのです。私もそんな風にして最初のサザナミを採ったのです。今から30年前、今息子が尻餅をついている磯から程近いWの磯・・・。照りつける太陽の下、A君が見つけたサザナミ。壁に張り付いてじっとするサザナミ。更に間隔を狭める私達・・・。そして掌の上の小さな紺色の魚体。 つまりですね、「親子」と「仲間」という違いはあっても、これは本質は全く同じことなのでありまして、まさに「しでえじゅんぐり」。採集家の血は引き継がれて行くのかなあ・・・ということなのです。 ああ、やっぱり「採集」って楽しいですね。
(00.08.30) |
| ■遅刻の言い訳 一時期のこと、何でもかんでも魚や水槽に関連づけてしまうという病的状態に陥ってしまったことがありまして、新聞や広告に出ているバリア・フリーをバリア・リーフに間違えるなんてえのは序の口。街中(まちなか)に魚の字がある看板を見ると、それが鮮魚店のものであるのは分かり切っているのに、 (おおおお!新しいショップか!) と胸をときめかせてみたり、はたまた病院のベッドで横たわりながらも、 (あ、この点滴セット、硫酸銅の滴下に使えるううう!あいててて。) なんていう始末でありました。 さて、そんなクセはいつまで経っても抜けないようで…。 眠い目をこすりつつ、朝のラッシュに揉まれるという生活を続けていたときのことでした。ホームに入ってきた電車に滑り込みセーフで乗り込んだは良いものの、寝不足がたたったか、或いは珍しく朝食をとったのが悪かったか?、私のお腹はグルグルと鳴り出し、そのうち額からは脂汗が滲んできて、次の停車駅までまだあるというのに、もうこれがど〜にもならない状態。いささかビロウな話で申し訳ありませんが、誰かにチョイと押されでもしようものなら、 (ピュル、ピュルリ〜!) の、まさに爆発寸前の状態になっちまったのですね。 私は自分でも顔色が青ざめて行くのが分かりました。そして次の駅までの時間の長いこと!ヘロヘロの状態で、階段の手すりにすがり付くようにトイレに辿りついてはみたものの、ああ何と!間の悪さというのは重なるものでして、そ、掃除なんかしてやがる〜!(あ、そんな話が目的ではありませんでしたね。ごめんなさい、もう直ぐ終わりますからね。) とにもかくにもお掃除のオバさんにお願いをして何とかことなきを得た私が、ふと時計を見るというと、これがかなりのロス!このまんまじゃ遅刻をしてしまいます。でも、いい年こいて、 「お腹が痛くなっちゃったので…」 なんて、そんなの格好悪くて言い訳になんかできません。そこで私は急遽通勤ルートを変更し、都営地下鉄を利用することに決めました。そちらなら少しはロス・カバーが出来ると思ったからなのですね。 さてお腹の調子も回復してきた私は、そこで少し駆け足で都営地下鉄へのホームへ駆け上がって行きました。と、見覚えのある物体を見つけた私…。 (ありり?何だ?あれ…) それは線路を挟んだ向こう側の、1辺1mほどの四角い穴ポコであったのですが、そこには白いポリタンに繋がれた、iwakiだか、sansoのポンプが鎮座ましましておったのです。 こりゃアクアリストとして放ってはおけません。 (うーむ、あのアクアリストにもお馴染みのポンプは、得体の知れない装置の中で一体どんな役割を致すのであろうか?) つまりそういうことですね。で、今度は遅刻のことなんかすっかり頭になくなって、このヘンテコな装置をシゲシゲと眺めておったというワケなのですが、いかんせん、文系も文系の私には想像すらつかず、いくら頭をひねろうとも正体の片鱗さえ掴めないのでありました。 しかたなく、ショルダー・バッグから「車上荒し」で盗まれる以前のデジカメを取り出して、気になる装置の写真を撮った私は、結局は遅刻をして仕事場に到着したのでしたが、 「ちょっと気になる物体の写真を撮ってまして…」 なんてのは、口が裂けても言えないのは言うまでもなく、やはり会社の上司には次のように謝ったのでありました。 「すいません、お腹が痛くなっちゃったので…」
(00.09.05) 後日譚:やはりど〜にも気になって仕方がないので、「古い仲間」で鉄道関係に強い「よしりんさん」にお聞きしたところ、ご親切にも調べてくださって、その結果、 ・地下鉄の延伸工事に伴う地盤状態を計測する為の計器に水を送る装置であるらしい。 ということが分かった。が、う〜ん、むじゅかしいにゃあ…。 でも、よしりんさん、ありがとう御座いました。 やっぱり仲間は偉大だ…。 (00.09.24) |
| ■牛舌魚はとにかく変! 2000年の某月某日のことでした。非常に奇妙というか奇態というか、とにかく「ヘンテコな魚」とご対面をして参りましたので、今晩はその顛末をひとくさり。 その日の海も大荒れの荒れ模様。海面は大きくうねり、「壁」のように立ち上がった波は繰り返し繰り返し岸辺を襲う有様です。 (うひひ、こ、こりゃ、昨日と同じで、ひでえコンディションだ・・・) 私はほとんど自虐的になって、心の中でそう呟やいたものでした。 が、ここでくじけちゃなりません。それに何を隠そう、すでに私達はホテルでウェットに着替えちゃってます。つまりスッカリ水に入る準備でいるワケでして…。(フロントのお兄さん、随分ビックリしてましたっけ…。そんな格好の人物のチェックアウトの受付なんかしたこたないでしょうからね。へへ。) しかし、やっぱり恐い・・・。 (この辺は外海とは繋がってないからだいじょうぶだよね・・・) と自分に問うてはみるものの、どうもすぐには結論が出ません。時折高波が周囲の岩を乗り越えてやってくるワケで、恐いものは恐いというのが本音なのでありました。もちろん仲間も同じ気持ちだったに違いありません。そこで私達は波打ち際から遠く離れたプールで遊ぶことに決めました。そこなら波の影響が少ないと思ったからです。 ところが、それほどまでに酷い天候ではあったのですが、いざ水の中に入ってみるというと、コレが意外なことに魚影が濃くてビックリ。私達は珍しく必死になって魚を追いかけ回ったのでした。なぜって?そりゃ決まってます。 (私達には限られた時間と場所しかない!) そういうことだったのですから。 (でも絶対に真似しちゃいけません。ほんとにアブナイです。) さてそうしてお魚さんたちと戯れておりますと、やがて満ち潮となり、安全と思われていたプールにも大きな波が立つようになりました。そろそろ切上げないと本当にアブナイことになってしまいます。そこで仲間に 「おーい、もう上がろうか?」 と声を掛けますと、 「へ、変なヤツ捕まえた!なんだこりゃ!?」 返ってきたのは驚きの声でした。 で私がこけつまろびつ駆け付けますと、彼は携行生簀を傾けてその「変なヤツ」の姿を見せてくれまして、さてその様子というのが・・・。 薄茶色の扁平な魚体に白い目。その白い目の中央には小さな小さな黒い点。見るからに人を馬鹿にしたような表情のソイツの泳ぎときたら、ヘラヘラと実に軽率に、まるでヒラムシのように生簀の底を旋回しているのでした!しかも良く見ると、赤い突起のようなものが目の付近にくっついているじゃありませんか!? 「な、なんなんだ?こ、こいつ?」 尋ねる私に仲間の返事。 「わ、分からん!メガネウオのような顔してやがる!」 しかし私達が不思議な面持ちでコレをあらためてみますと、どうもこいつ「ウシノシタ」の仲間であるらしいことが分かりました。が、もちろん名前などは皆目分かりません。いずれにしても、仲間も私も初対面のお魚であることには間違いがなく、数少ないその日の成果の中では一際光る「珍品」でした。大きさは3cmくらいのまことに可愛らしいサイズ。こりゃ連れて帰って正体を確認しなけりゃなりませんねえ。 そして仲間がこれを大事そうにバケツに移そうとした時でした。私の頭にピンとくるもの…。それは何かの本で読んだ 「ウシノシタの仲間には毒腺を持つものがいる」注) という記述でありまして。他魚への影響を恐れた私は、 「ちょっと待った!そ、ソイツは別にして運ぼう!」 そう叫んだのは言うまでもありません。 注)あとで確認したら、毒腺をもっているのは「ミナミウシノシタ」でありました。相当強烈な毒を持ってるようですな。 というような経緯がありまして、さてコイツは仲間の家に引き取られて行ったというワケでありますが、帰宅した私は荷物を片付けるのも忘れて、その日の記憶をたよりにこいつの正体を調べにかかりました。時刻は午前2時、ページを繰って行きますというと・・・。いました、載ってました、「ツノウシノシタ」。 いや〜、ほんとはネ、 (し、新種かな?) なんて期待もなかったワケじゃありませんが、とにかく正体が分かって安心した私は、疲れた体を布団の上に横たえ、 「しかし世の中には不思議な生き物がいるもんだあね。」 ポツリと呟くと、深い深い眠りに落ちて行ったのでありました。
(00.09.18) 後日譚:「ツノウシノシタ」だとばかり思っておりましたら、一緒に行った仲間が写真を撮っておりまして、それをもとに調べてくれた結果では「サザナミウシノシタ」であるようです。謹んで訂正させていただきます。お詫びに全体の写真を掲載します。有眼側の赤い突起は、「前鼻管」というものだそうであります。申し訳ありませんが、上記の記述のうち「ツノウシノシタ」を「サザナミウシノシタ (Soleichthys heterorhinos)」に、「背鰭第1軟条」を「前鼻管」に読み替えてください。m(_ _)m。でも、どっちにしろ変なヤツだね? (00.09.23) |
| ■薄暗がりのラグビー・ボール 高校生から大学生の頃にかけてアルバイトをしていたショップには、幅と奥行きがそれぞれ1mほど、高さが2m以上もある大変に大きな水槽が2本ありました。入り口を通り淡水魚の水槽を見ながら奥に入ってふと左手を見るというと、件の水槽が少し間隔を置き、丁度古寺の参道で辺りを睥睨している仁王さんのような一種厳かな雰囲気で屹立している様子は、このお店を初めて訪れる多くの人達の度肝を抜いたものでした。 さあそれほどまでに大きな水槽ですから、中に入っている魚というのも、普段私達が使っているような60cm水槽なんかには入らないほどの大きな大きなチョウチョウウオやヤッコばかりで、値段の方もそこそこ(というか、かなり)いたしますから、これがなかなかハケません。つまり一旦収容してしまうと中の魚も殆ど変化がなく、毎日見ている者にとってみれば飽きちゃうのでありました。まあもともとディスプレイのために置いた水槽ですから、それはそれで仕方がないのですが… それでも偶に分厚いお財布を持ったお客様や小売のショップが現れ中の魚を指定して買って行くことがあって(これを掬うのがまた大変です。なにせ割烹店においてあるような竹竿の付いたデッカイ網で梯子の上から追うのです。相手も大きいですからね、一筋縄じゃいかんのですよ)、やがて2、3ヶ月もすると水槽内も閑散としてくるのでしたが、ある時期のこと、どうしてもどうしても売れ残って、たった1尾で水槽上部の見上げるような場所にジッと動かずにいる魚がおりました…。今夜はそのお魚さんにまつわるお話です。 ご自慢の伝家の宝刀「黒網地柔軟枠国綱」(なんじゃそれ)を携えて磯をほっつき回っていたときでした。普段は寒くなっちゃったりすると、自分の中で納得した時点でサッサと上がってしまう私なのでしたが、その日は悪コンディションということもあって、思うように魚が採れずにおりましたから、どうも消化不良。珍しくも先に上がった仲間をおいて、私はいつまでもいつまでもタイド・プールを覗き回っておりました。 何よりも悔しかったのが、あるプールで採ったチゴベニハゼのことでして、それこそ棚の天井に張り付くようにして苦労の挙句網に入れたというのに、どうもこのテのハゼは取扱いに注意が必要なのか、移動の途中で弱ってしまうのですね。その日採った1尾のチゴベニも、上がろうとする頃にはかなりアブナイ状況になってしまったので、急遽リリースしたばかりなのでして、だからもう一度、うまくお連れできるようにチャレンジしたかったというワケだったのです。 そこでもう一度チゴベニ君のいそうな場所を覗き込んでおりますと、直感というのは恐ろしいものでして、そこに1尾のそれが待っていてくれたのですね!喜んだ私は彼を難なくgetし、今度はそれはそれは丁寧に生簀の中に入れました。白い生簀の中に日本的情緒の真っ赤なチゴベニハゼ…。ああなんというコントラストの妙!私はダラシナク目尻を下げたのでした。 さて私はそこで上がっても良かったのですが、それが習いなのでしょうか? (あと1回だけ覗いて見よっと!) と腰を屈めて水中に没したときでした。奥の薄暗がりで何かが動いたようです。チゴベニなどよりはるかに大きな個体?色は黒?でもそれはいつも私達が追いかけている魚とは一風変わった動きと、そしてカタチでした。手の平大の大きさ、形状はちょうどラグビーボールのよう…。 と、薄暗がりの中のそれの身体の輪郭が一瞬大きくなったように感じました。そして私はその様子を見て初めて気が付いたのです。 (おおお、シモフリタナバタウオだ!) 自分には、 (深い場所にいるものだ) そういう先入観があったので、チットモ想像していなかったのですね。 私は一瞬、 (どうしようか?) と思いました。つまり採るべきか?見るだけにするか?です。考える余裕は十分ありました。全然動かないんですものね。そして出した結論というのは、 (見るだけにしとこ) でした。だって連れて帰ったって、私には飼える環境はありませんし、割れ目の奥はズッと続いているようで、仮に網を出したところで、入ってくれそうにはなかったのですから。 岩の割れ目に頭を突っ込みながら覗く薄暗がり。そしてその奥には黒くて目の大きな魚…。ちょっと恐いシーンでもありましたが、一瞬の間、冒頭に述べたような記憶が甦ってきて、私は懐かしいような気持ちでしばらくの時間を過ごしたのでした。
(00.10.03) |
| ■まぼろしの big hit シマウミヘビというアナゴの親戚みたいなお魚を捕まえたのは1999年のこと。 もともと「長虫系」は不得意な私、デッカいヤツはチョイと遠慮イタしますが、小さな個体ともなると気持ち悪さも半減、というかグッと可愛らしくなりますので、これが大変に好きなのでありまして、南方へ行くたびに、 (シマウミヘビでなくても良いから、どっかに似たようなのいないかなあ…?) なんて求め回っておったのですが、こういうのは忘れ物を捜してるときと同じで、あちらこちら居そうな場所を、それこそ目を皿のように探してもチットモ見つからない。そこで、 (忘れ物と同じなら、そのうち『出て』くるかなあ…?) なんて思っておりましたら、ヤッパリ『出て』来ましたデスね。似た子が…。 今夜はその辺のお話をいたしましょう。 その磯は私のような「タイドプール派」には最高の場所で、幾筋もできる水路ときたら最干潮時には一方が行き止まりになってしまいますから、これはもう嬉しい限り。地形を頭に入れてさえおけば、そこに追い込んで、後は退路を断つだけなものですからね。 さてそんな水路の一つを覗きこんでいたときでした。私の目に飛び込んできたのは1尾のニジハギ君。ところがコレがちょっとデカイ。でもふとイケスを見るというと、その中には何も入ってません。 (こ、これでは仲間に笑われてしまう〜) と思ったワケではありませんが、 (ちょっくら肩慣らしでもすべえか?) と袋小路にコレを追い込んで、いざ網に収めようとしましたところ、ビュッとばかりに逃げられてしまいまして、ありゃりゃのりゃ。 仕方なくしばらく待っておりますと、かのニジハギ君、私を嘗め切っているのか、またもや同じように水路の中に入り込んできまして、私は、 「よっしゃ、よっしゃ」 と再び同じようにして捕らえようとしたのですが、これも駄目。 で、三度(みたび)待っておりますと、これがまた悔しいことに平然と戻って参ります。私はいささかムキになりまして、普段は使わない巻網なんぞを取り出して逃げ道を完全に塞いじゃう荒技に出ました。そして彼が袋小路の一番奥まで入るのを確認してから、出口を厳重に塞いでしまったのです。 私は内心、 (どうだ!これで君はもう逃げられないのだゾ!) と確信しました。さっき奥まで入るところは見てますしね。 しかしです、その奥まで入った彼が、今度は全然出て来ない!いくら待っても出て来ない。 (おっかしいなあ?さっきのは見間違いかなあ…) でも結局いくら待っても出てきません。 私はいつまでもそこにいるのをやめることにしました。何も無理して大きいのを採らなくても良いですものね。それに良く探せばもっと小さい子もいるかもしれません。そこで (よし、また後で来よう!) と、巻網を片付けようとしたときでした。 網の最下部に付けた錘に絡みつくようにしてウニョウニョと蠢く物体!まるで紐か何かが絡まって、波に揺られているような・・・。 「あやややや!モンガラドオシだあ!」 私は嬉しさのあまり、ちょっと大きな声を出してしまいました。それはクリーム色の字に、チョコレート色の斑をまぶした、「モヨウモンガラドオシ」であったからです。サイズは全長20cmほど!こりゃたまりませんね。私はしばらく彼がウニョウニョする様を観察して、それから網に収めたのでありました。 さてそこで、 (こういう big hit は是非とも仲間に見せてやらねばならぬ!) 私はそう思いまして、自慢のフレキシ網に入れて口を絞り、逃げ場のない別のプールに浮かべ、仲間を呼びに走りました。 (きっと皆ビックリするだろうなあ!) そう思いながら、私は小高い岩の上に立ち上がって仲間を探しました。が、皆も魚採りに夢中の様子で、姿なぞ見えません。 そこで再びしかたなく、 (ま、いいか?後で見せても良いし・・・) と元の場所に戻って網を取り上げた時でした。 「い、いない!」 捕まえたはずのモンガラドオシ君がいないのです。網の目から抜けるわけがありません。ああ、なんという不覚! 「こんだけ口を絞っておけば・・・」 という甘い考えが間違っていたのです。僅かにできた隙間から身を捩じらせて出たのでしょう。こりゃ完全に私のミスです。仮に逃げ出した場所がどうにも「逃げ場」のない場所であっても、もう見つかりっこありませんやね。 (なんちゅうこっちゃ・・・) 満ち始めた潮がチョロチョロと入り込む水路に足を浮かべながら、私が大きくため息をついたのを、逃げ出したプールの細い岩間のモンガラドオシ君はきっと聞いていたに違いないでしょう。 ああ、それにしても思い出す度、悔しいなあ。
(00.10.10) |
| ■オペ大成功! これを読んでいる方に前もって謝っておきますが、お食事中でしたらゴメンナサイ。あと、「気持ち悪がり」の人は読まないでくださいね。夜泣きしたって、アタシャ知りませんゼ・・・。 私達が採集するお魚さんに寄生虫が付いてるのは良くあることでして、例えば高校生の頃に採集してきたミノカサゴに「口中虫」ならぬ「タイノエ(ウオノエ)」というダンゴムシみたいなものが寄生していた…なんてことについては以前にもお話しておりますね。 口の中に、あの足の沢山あるヤツが常駐してるだなんて、見ている人間の目には大変に不自然に映るのであり、またひどく気色が悪いものですが、それも考え方によっては良い方で、ちゃんとした虫という生き物であるワケですからまだ「理解」ができる範囲です。しかし中にはどう見ても生き物とは思えないような寄生虫もいるものでして、今日はそのお話。 それは、ある日A君と一緒にお魚を追っかけていたときのことでした。 午前中から水に浸かってアッチコッチを探索していた私達でしたが、少々疲れてきたこともあって、どちらから言うともなく小休止ということになり、木陰に置いていた缶コーヒーなどをぐびぐびと飲んでおりますと、 「さっき良いサイズのチョウチョがいたけど、見た?」 とA君。私はすかさず、 「見た見た!肩の辺に何か変な寄生虫が付いてたやつだろ?」 と応えました。A君はコックリと頷き返しました。 それはちょっと見4cmくらいのニセフウライ。水槽飼育にはもってこいのサイズです。普段であれば迷わず追いかけて網におさめようとするところなのですが、私もA君も、 (うーん、ちょっとなあ…) と逡巡してしまったのは、肩の付け根にしっかりと根を張っているらしき「寄生虫」のせいなのでありました。 その形状は何と表現すれば良いのでしょう?色は濃いコゲ茶というよりも黒に近い感じで、逃げるニセフウライ君の身体半分以上の長さでピラピラとしておりました。つまりそれほど目立つワケでして、こりゃもう遠慮するのが普通というものです。何と言っても気持ち悪いやね。 が、しかし! ああ、A君はなんとやさしい人なのでしょう!それからしばらく経って再び散って行った我々でしたが、帰って来た時の彼のイケスにはしっかりと「虫付き」のニセフウライが入っていたのです。目的ですか?それは決まっています。そうです、私に面白い題材をくれるとともに、 (手術してやれよ…) ということなのですね。そんなこと敢えて言わないでも分かりますって…! さて帰宅した私ですが、写真を撮ると、水で薄めた赤チンを用意してコレの切除手術にかかりました。先ず海水を漬した布にニセフウライ君を乗せます。そして軽く包むようにして彼を押さえます。そしていよいよ手術の開始です。ピンセットで「虫」の根元を摘み、引っ張りました。が…。 (固い!) そうなのです、「足糸」状のものがかなり強く根を張っている状態です。私はやっぱりためらいました。 (ど、どうしよう…) でもこのままにしてはおけませんね。私は勇気を出して、思いきり引っ張りました。 と、ブチッという軽い音と共に「虫」は離れました!大成功!ああ、恐かった。ハコフグなどに付いた似たようなヤツは良くあることですし、コチラの方はあまり難儀をしないのですが、今回のは付いてるヤツが結構デカかったので、その分強力に張りついてたんでしょう。 私は用意していた赤チンを、ニキビの潰れたような彼の傷跡に塗り、しばらく様子を観察した後に水槽に放したのですが、何事もなかったようにスイスイ泳ぐ姿を見て安堵のため息をついたのは言うまでもありません。 さあ、それがどんな物体であるか?大いに気になるところではありませんか?お待たせしました、それではお目にかけましょう。ハイどうぞ。うう、気持ち悪い…。
(00.10.16) |
| ■水の嫌いなお魚さん 普通「お魚さん」と言えば水の中にいるのが相場なのでありまして、ほとんどのお魚さんはその一生を水の中で過ごしております。が、中には (どうも水が苦手ならしい…) というヤツがおりまして、トビハゼなんていうのはその好例でしょうね。私の家でもミナミトビハゼを飼育しておりますが、彼らというと水の中にいる姿を見るのは本当に稀で、こっそり水槽を覗き込んだりすると、大抵は岩の上にチョコンと座ってギョロリとコチラを睨み返してきたりするのでありますね。 さて今夜はトビハゼではないのですが、やっぱりお水が苦手なお魚さんについてお話をいたします。 その名はイソギンポ科の「ヨダレカケ」(ちなみにトビハゼはハゼ科でありんす)。この魚、随分と変な名前を冠されちゃってるワケですが、 (なんでこんな変な名前を付けられちゃったんだろう?) なんて目で見てみると、どうってことのない煮〆たような地味〜な体色は、 (赤ん坊のか、お地蔵さんのか分らないけど、薄汚れたヨダレカケに似てなくもないカナ?) というようなもので、syunさん妙な納得などをしてしまうのでありますね。注) それはともかく私がこの魚に初めて会ったのは、夏も終わりを告げようとしている南の島のとある漁港でした。 確か採集した魚の水を換えようと、夕食後に宿舎近くの港を歩いていたときのことです。外海に面した岸壁の下の方で何かがバシャバシャと音を立てて逃げて行く様子…。まるでカエルが逃げて行くような。そこで手に持った懐中電灯の光を当ててみますというと、既にそこには何もなく、再び歩き出すとまたまたバシャバシャッという音…。 私は初めのうちは、 (ミナミトビハゼかな?) と思っていたのですが、よくよく考えてみますとココは港。しかも外海に面していて、始終波に洗われている場所ですから、彼らの生息しているような場所ではありません。 (じゃ、何なのか?) と考えてはみるものの、どうも思い浮かびません。そこで三度歩みを進めようとした時です。私は面白いことに気が付きました。というのも、目を凝らしてみると「それらしき」生き物が岸壁のアチコチ、水のかからない部分にへばり付いているのが分ったのです。その姿は夜目にも細長くて格好はミナミトビハゼそのものでしたが、へばり付き方が違います。垂直に切り立った岸壁に、横向きで、しかもかなり「強力」に貼り付いているのです…。 私達はここでどうしたか?というと、そこは準備万端、たとえ水換えであっても網だけは持って歩いてますからね。 (とりあえず採っておくか?) というワケで網におさめてしまったのですが、さあ翌朝コレを仔細に改めてみますと、案の定ナミトビハゼじゃありません。仲間曰く、 「タマカエルウオに近いナ…」 で、彼をお家に連れて帰り『タマカエルウオ』をキーワードに調べてみますと、冒頭述べた「ヨザレカケ」という奇妙な名前のお魚さんであるらしいことが分った!という次第なのですが、さて魚水槽に入れて観察していたある日のこと、私はまたしても面白いことに気が付きました。というのもホッタラカシで緑苔ビッシリの水槽が徐々に綺麗になって行き、2週間も経った頃には前面はピッカピカなんですからね! 普段は濡れない場所で時間を過ごしていて、お腹がすくと水中に没して苔を食べていたのですね。器量は悪いが働き者!こりゃ良いアイテムをめっけました。 でも普通の魚水槽では駄目ですよ。なにせお水が嫌いで、しょっちゅうガラス面を這いずり回るヤツです。ある日お布団の中で一緒に寝てたりなんかして…?。ふふ、あり得ない話じゃないですね。
(00.10.23) |
| ■私説・・・エビ君の擬態? たぶん歳のせいだと思うのでありますが、最近、 「思い出せそうで思い出せない!」 とか、 「喉の辺まで出かかってるんだけど・・・何だっけなあ!?」 というようなことがよくありまして、例えば友人と昔の映画の話なんかで盛り上がってた時に、 「あの俳優、名前なんていうんだっけ?」 と聞かれたとしますよね?で、尋ねられた私もそれが「誰」であるか?というのは十分わかっているんだけど、さあ肝心の名前がなかなか思い出せない。喉仏のところまで「その名」が来てるんだけど、出てこない。そのじれったさときたらどうしようもないほどで、 (後ろからチョイと押してよ!そしたらポロッと出るんだから・・・) というような状況に陥ってしまうんですね。 こういう時というのは「便秘のウンチ」と同じで、ヒネリ出そうとすればするほど「出て」来ないのでありますが、意外にアッサリと解決してしまうというのもまた事実で、突然夜中などに、 (ああああ、思い出した!) とガバと跳ね起きて、忘れちゃイカンとばかりに件の友人に電話をかけたりするんですな。 「おおお、おい、思い出したぞ!○○ ○だった!」 もっとも相手は大抵怒ります。 「お、お前なあ・・・、今何時だと思ってんだよ〜。」 なんてね。 さていささか前置きが長くなりましたが、私が以前に捕まえたエビ君のお話をいたしましょう。 それは全長1cmくらい、地はほとんど透明に近い肌色で、背中には白いラインが入った淡いばかりのエビ君です。 このエビ君を捕まえたのは南の島の外海と繋がったタイドプールでした。 潮の流れに右に左に触手をなびかせる大きな大きなイソギンチャクの根元付近で魚を追いかけておりますと、網か体の一部がそのイソギンチャクに触れたのでしょう。ヒラリと舞い上がったスカートの下に、私は今まで見たこともないような姿のエビ君が、ヨタヨタという感じでダンスを踊っているのに気が付いたのです。数は4、5尾ほどでしたでしょうか?大いに興味を感じた私は、そこで1尾を掬ってこれを仔細に改めてみたのでした。 さて間近でこのエビを見た時に抱いた私の印象というのが、実は上にも述べたような、 ・思い出せそうで出せない感じ だったのでありまして、 (あれ〜?なんかどっかで見たことがあるんだけどなあ・・・。なんだっけかなあ?) 幾度となくそう心の中で繰り返してはみるものの、それが何であるかがシカとしないのです。 私はこのムニャムニャした感じを払拭したくて、家にある図鑑の表紙を思い浮かべてそのキッカケを掴もうとしたのですが、結局駄目なものは駄目・・・。 その状態はエビ君を連れて帰って隔離ケースで飼育を始めても同じことでした。そして何度見ても同じこと。どんなに記憶を呼び起こそうと試みてみても思い起こせないのでした。 ところがです。それから2週間ほど後のことです。 (あ〜、もうヤダヤダ。考えるのイヤになっちゃった。) 半ば諦めた私は、 (こんな隔離ケースに入れてたんじゃ可愛そうだから・・・) と静かにリーフタンクへ移し、その彼が近くのエダサンゴへ向かって頼りなげに泳いでいる姿を見ていると・・・。私は突然に「その事」を思い出してしまったのです。 「あ、そうか!こしがや、せんげんだい。この模様、ハナビラクマノミと同じだ!」 そうなのです!上から見たエビ君の模様というのが、ハナビラクマノミのそれと酷似してるのです!それならシッカリと記憶に焼きついているはずなのに、何で今まで気が付かなかったんでしょうか?エビから魚への連想ができなかったんでしょうかねえ。 そしてもうひとつの閃きが私に訪れました。 (も、もしかしてコイツ・・・。ハナビラクマノミに擬態してるんじゃ・・・?) 何と言っても彼がいたのが大きなイソギンチャクのスカートのすぐ近くですもの・・・。 私は自分の気付きにスッカリ嬉しくなってしまったのですが、ああ、時すでに遅し!もはや彼は私の視界から姿を隠してしまい、どこへ行ったのやら・・・。もう確認などできなくなってしまったのですからね。 さて「私説・・・エビ君の擬態?」、その真相やいかに?
(00.11.01) 後日譚:上を書いて数日のちのこと。家の近所の書店に行ったら、「ネイチャーガイド 海の甲殻類」(著者:峯水 亮 発行:(株)文一総合出版 平成12年11月1日初版 価格\3,800 税別)という本を見つけ、syunさん思わずコレを買ってしまった。すると、ななな、なんと、このエビの写真が載っていた。「ホシナシイソギンチャクエビ」がそれ。この本、写真も綺麗で面白い!syunさん、エビ・カニにハマりそう・・・。って、もうハマってる? (00.11.09) |