| ■防波堤ギャラリー・・・警官篇 ある年の秋のことでした・・・。 「お泊り採集」に出かけた私達は、就寝前のお仕事である「採集魚の水換え」をするため、近くの漁港へと行ってみることにしました。手には懐中電灯とバケツ、そしてもちろん網と竿を持って・・・。 到着した漁港の水銀灯はまばゆいばかりに水面を照らし、人っ子一人いない状況では妙に不気味な雰囲気がありまして、 (そのうち気味の悪い魚でも現れるんじゃないか?) なんて、臆病なsyunさんはちょっとビビってしまうのでしたが、それでもこわごわと覗き込んでみますというと、舫綱の陰にはハリセンボン君たちがボーッとしてますし、コンクリート・ブロックの隙間にはサラサエビの大群が、照らす懐中電灯に目を光らせて屯していたりします。 (夜更けの漁港というのも結構楽しめるもんだなあ・・・) 私が改めてそう感じ入っておりますと、数メートルほど離れた場所からA君の囁くような声が聞こえました。 「お、おい!いるぞ!」 そこで私が抜き足差し足で近づき、彼の指差す方向を、それこそ身を乗り出すようにして覗き込んでみると・・・。目の下2mくらいの少し窪んだ場所に4本の真っ白な「ヒゲ」が見えます。それはオトヒメエビでした。 A君は懐中電灯の光をオトヒメにあてたまま、私に目配せをしました。 (状況的にはマズイな。どうする?) つまり、その窪みは奥が相当に深そうで、 ・持っている網で蓋をして、そのまま引きずり上げる という方法では捕らえることができそうもなかったからです。 でも私の答えはもちろん「GO!」です。だって、やってみなけりゃ分からないじゃないですか?それにこういう時のために網を持ってきたのですものね。 さてそうと決まったら話は早い。私たちは懐中電灯を照らす人と、網を操る人に役割分担をして捕獲作業に入りました。そしてそーっと網を水に入れ、徐々に間隔を狭めて行き・・・・・・、その間隔が30cmくらいになったときでした。網の気配を察したオトヒメはススッと窪みの奥に隠れてしまったのです! 「あやや〜。やっぱり駄目か〜?」 私たちはため息を漏らしたものの、しばらく様子を見ることにしました。すると予想していたとおりに徐々に姿を現してきます。そこで網。また隠れてしまうので、また網・・・。そんなことを何回か繰り返したでしょうか? 「もういい加減に諦めようか?」 どちらから言うともなく佇んでおりましたところ、私達たちの横手から二人の人影が現れ、懐中電灯を手にこちらに近づいて来たのでありました。 「あ〜、君たち?こんなとこで何してるですか?あん?」 詰問口調のそれで分かるように、私たちの横に現れたのは地元のおまわりさんでありました。パトロールの途中、夜更けに漁港で這いつくばっている私たちを不審に思ったのに違いありません。 私は別に悪いことをしてるワケじゃありませんが、恥ずかしい格好であることは十分過ぎるほど承知をしておりますので、その質問に少々弁解気味に答えたのでした。 「あ、あのですね、エビを採ってるんです。ちっちゃいのです。ちっちゃくて綺麗なヤツ。飼うヤツ。」 つまり、 (食用のエビを採ってるのではないですよ!) っていうことを強調したかったのでありますが、そのうちの一人が私の指し示すオトヒメエビに気が付いた様子。私はそばに置いていたバケツの蓋を開け、その日の昼に採ったオトヒメのベイビーを見せて差し上げました。 「これと同じヤツです。」 さてコレを見たおまわりさん、バケツの中味にはかなりショックを受けたご様子で、 「お、ほほ〜!え〜?、コレがエビですか?また随分と変わった姿をしてますなあ・・・。コレを採る?どうやって?ああ、その網ですか?どれ、やって見てください。」 私は、 (これは思い出になるかもしれない!) 一瞬そう思いましたね。だって護衛付きで採集が出来るのですからね。そこで私は網を水中に入れ、ふたたびみたび姿を現したオトヒメ君を採集しようとしたのですが、さっきも述べたように状況的にはよろしくないワケで、結局彼のオトヒメ君は網には入ってくれませんでした。 「こりゃ、やっぱり駄目ですね・・・。」 私は網を地面に下ろして言いました。するとそのおまわりさん、驚くべき言葉を口走ッたのです! 「気合が足りません。『駄目』じゃイカンです。潜って採らなイカンです。私が仕事中じゃなかったら、潜っとりますな。」 この意外なお言葉に、A君も私も、言葉には出さなかったものの、 (えええ〜!?) とブッ飛んだのは言うまでもありませんが、フト横を見ますというと、さっきまで一緒だった「The other」おまわりさんの姿がありません。と今度は、少し離れたところからそのおまわりさんが駆け寄って来て、 「あ、すんません。そこにイカがおります。網使わないんだったら、貸してクダサイ。」 とノタまうではありませんか。そして戸惑う私たちには構わずサッサと足元の網を手に取ると、イカのいる場所へと小走りで去って行ったのです。 で、気になる「The other」おまわりさんの結果はというと、 「に、逃げられました〜。」 というものでありまして、もう私はこの一連の出来事がお腹がよじれるほどに可笑しくてなりませんでした。 さてその後しばらく一緒に行動をした私達でしたが、完全にペースを奪われたカタチの私とA君にはもちろん何の成果もなく、結果的には所期の目的どおりただ単に水を換えただけに終わってしまったワケですが、久々の「笑える防波堤ギャラリー」に、重いはずのバケツも軽々と帰途に付いたのはご想像のとおりです。 こういうギャラリーばっかりでも困るんですけどね。でも、 「東京くんだりからですかあ?ここまで?このために・・・・・・?そりゃあご苦労なことです。気をつけてお帰りなさい。」 かけて下すったそのお言葉は、トテモ暖かいものであったのでありました。
(00.11.09) |
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| ■「しおどき」が肝心 かつて日本各地の内湾で行われていた漁法に「石干見(いしひみ)漁」というものがあって、それは干潟などに石垣を組み上げ、潮の干満差を利用して魚を採るというものであったそうな・・・・・・。 私が仲間と出かけたある遠征先でのことでした。目指す磯へと海岸沿いに車を走らせ、一つ目の長いトンネルを抜けた先の右側には見慣れた「干潟」の一部が見え始めました。それから少し進み、時刻はちょうど最干潮時。潮の引き切ったそこには、湾口部に向かって広大な干潟が出現していたのでした。 「おおおおお!いい感じだねえ!」 私は今いる場所が海辺であるにも拘わらず、まるで山奥の湖でも眺めているような不思議な感覚に囚われ、思わずそう呟いてしまいました。何故って、あたりは意外なほどに水際近くまで緑が迫っていて、一角だけを見ていると、海にいることを忘れてしまいそうな雰囲気であったのですから・・・。 一方隣の仲間はというと、干潮の干潟の様子に別の見方をしているようで、 「う〜ん、随分引いてるねえ!こりゃ早く磯に行かないと・・・。潮が満ちてからじゃ魚が採れなくなってしまう!」 心すでにここになく、彼は一刻も早く磯に行きたいという様子でした。 海辺でありながらその感じがしない、あまりの「不思議さ」に一瞬時間が止まってしまったような私でしたが、 (あ、そうだった!) 仲間のその一言に気が付いて、さてそれからしばらくの間海岸線を走っておりますと、進行方向右手に先ほどの干潟が再び姿を現しました。と、そこに見慣れぬ人工物を見つけた私は、側道に車を止めコンクリートの堤防に勢い良く駆け上がったのでした。 「こ、これが『石干見』か!」 目の下にあったのは、完全に干上がってしまった泥地に、整然と積み上げられ弧状に延びた「石垣」、つまり『石干見』で言うところの「垣」であったのです。私は『石干見』などという漁法は、もう日本では見られないものだとばかり思っておりましたから、まるで「秘境」か「遺跡」でも発見したような、それとどこか懐かしいような気持ちになってしまいました。この感じ、わかるでしょうか? 思いは仲間も同じだったのでしょう、今度は彼もその「垣」をジッと見つめておりました。 が、いつまでもそうしてばかりはいられません。モタモタしてると満潮の時間が来てしまいます。何はともあれ「潮溜まり採集」がメインの私達が勝負に出る「行動時間」というものには制限があるのですからね。そこで、 「最後の日に写真を撮りに来よう。逃げるもんじゃあるまいし。」 そう申し合わせて、 「とにかく磯、磯、早くしなきゃ!」 と目指す磯へと向かったのでした。 ・・・・・・・・・・・・ さて2泊の後、搭乗機へのチェックイン時間ギリギリまで遊んで、 「さあ最後の仕上げ!『石干見』の写真撮影!」 と件の干潟へと勇んで向かった私達でしたが、ああ、何ということでしょう!私達がそこに到着した時には既に最満潮となっていて、お目当ての被写体である「垣」は完全に水面下に没し、輪郭すらも判然としないじゃありませんか! 考えてみれば当たり前の話なのですが、 「あ〜あ、そりゃそうだよね、『満ち潮』がこっちの都合に合わせてくれるわけないものね・・・」 嘆くようにして私達が呟いたのは言うまでもないことでした。 満潮・干潮ってのは、魚採りの時だけに気にするものじゃないってことですね。ま、いいです。今度は写真を撮ってから磯に向かうことにしますから。 何事にも「しおどき」が肝心!!
(00.11.15) |
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| ■紆余曲折T 磯採集をしている時に、タイドプールの中の石ころを何気なくひっくり返してみると、その裏側には「ウバウオ」という魚がくっついていたりします。英名は、clingfish。つまり「くっつき魚」というワケで、大変に強力な「腹吸盤」というのを持っていて、それで岩などに吸い付くのです。したがってコレを捕まえて水槽で飼っても、岩の裏側などに隠れてしまい、その姿を拝むことはチョイと難しい話なのですな。
ところが同じウバウオ科でも「遊泳型」の子もいるのでありまして、それが「ハシナガウバウオ」。特異な体型に加え、色彩的にも美しく、特にリーフ・タンクに向いております。今回はその彼を捕まえた時のエピソードをお話いたしましょう。 この魚、私は以前から、 (一度はこの手で捕まえてみたい!) と念じておったのですが、今まで30年間「魚採り」をやっているのに、その姿さえ見たことがない幻の魚でありました。図鑑などには、 「ガンガゼのトゲの間にいることが多い」 とありますから、ガンガゼを見つけてはトゲの間を覗き込んだりしていたのですが、どうにもお目にかかれないで今まで来てしまっていたのですね。 さて本題。 (2000年シーズンの仕上げじゃあ!) とばかりに出掛けた遠征先でのことでした。普段の行いが災いしたのか、またしても悪天候に見舞われてしまった私と仲間でしたが、案の定というか何というか、初日、二日目の成果はほとんどゼロ。財津一郎じゃありませんが、 「淋しい〜〜!」 の一言に尽きるバケツの中味を見つめては、 「このまんま帰るのかあ?」 二人の口から出るのは長い長い溜息だけなのでした。 そうして迎えた最終日。 (せめて1尾でもいいから、何とか思い出に残る魚を・・・。これじゃ帰れるに帰れない〜) と、早朝の漁港探索を続けていたところ、私は目の下数メートルのところに大きなガンガゼが集団でいることに気が付きました。それはこの辺りではごく普通に見られる光景なのですが、良く見てみると何か少し「変な」感じがします。「違和感」とでも言ったら良いでしょうか?ガンガゼの放射状に延びたトゲの間に、それとは直角に交わるようにして「異物」のような物が見えるのです。この「感じ」というのは採集家の誰でもが持っている「第六感」みたいなもので、こういう場合大抵はズバリと的中しちゃうもので、やっぱり予感どおりソレは「ハシナガウバウオ」であったのでした!!
さあ、この時の私の興奮ときたら!私は震える声で仲間を呼ばわりました。 「おおお、お〜い、ハハハ、ハ、ハシナガウバウオがいる!」 反応した仲間も、私の指し示す先を見て、 「おおおおお、ホントだ!」 一瞬自分の目を疑ったようでした。 もちろん私たちは即座に網の準備にかかりました。用意したのはデカ枠の岸壁網。 (これでウニごと掬っちゃえば間違いなし!!) そう思ったのです。とにかく大きな網ですから、ガンガゼの2個や3個くらいは入っちゃいますものね。 私は期待に胸を膨らませながら、網をソ〜ッとウニに被せました。 (やった!だはは!) トゲの間からは魚が逃げた様子もありません。 (いひ、いひひ〜) 私はだらしなく笑いながら、ズリズリと網を上げて行きました。 (これさえ採集できれば、もう帰っちゃってもいいぞ〜!) ほとんどそんな気持ちでした。 そして爆発寸前の気持ちを抑えながら中を改めてみますというと・・・。 (つづく) (00.11.18) |
| ■紆余曲折U 「あ、あれえ・・・?」 確かに網の中に入ったはずのハシナガウバウオの姿が見えないのです。私はもろともに上げたガンガゼのトゲの間に挟まっているのかもしれないと思い、怪我をせぬよう壊さぬように丹念に改めてみましたが、やっぱり見当たりません。 「ってことは・・・?春先のチャガラと同じで、網の目から抜けたか!?」 私は仲間の言葉に力なく頷き返しました。あの時も確かにそうでした。 「ああ、どうもそうみたいだね・・・。」 何ということでしょう!せっかく網に入ったと思った獲物は、テグス製の細かい網目すらも抜けて、逃げてしまったのです。 この時の私の意気消沈ぶりをご想像できるでしょうか?初日からの収穫ときたら、いつもの遠征と比べたらほとんど「ゼロ」に近く、やっと見つけた「幻」の魚も、あとちょっとのところで逃してしまったのです・・・。遠征に行けばいつも必ず面白い魚が取れるのだとは限りませんが、何かしら思い出に残る魚は捕まえてきたのです。今までにこんな経験はありません。私はもう泣き出したいような気持ちになってしまいました。 こうなったら、残された時間の磯採集に全てを賭けるしかなさそうです。私は気持ちを奮い起こして仲間に語り掛けました。 「さ、次へ行こう!頑張るっきゃない!」 そして網を片付けると、西へ西へと車を走らせたのでした。 ところが私たちが得意とするところの干潮時間まではまだ時間があります。そこでまた時間調整のつもりで、ある漁港に寄ってみたのですがね・・・。すると先を歩いていた仲間が振り向きざまに、ものすごい形相で私を睨み返してきたではありませんか。そして彼の口を衝いて出た言葉というのが・・・。 「あ、あわ、あわ・・・。い、いる!は、ハシナガウバウオだあ〜!」 この声に私がとっさに反応したのはいうまでもありません。さっき見たばかりの魚影、彼が見間違うハズなんて100%もないことです。私はすぐさま車に取って返し、網を引っつかむと仲間のもとへと駆けつけました。そしてそこに待っていたのは・・・・・・。 すごい!すごい!1尾や2尾ではありません。その周囲だけで7,8尾も屯しているのです!さっきまでの意気消沈はどこへやら、私は狂気乱舞したいような気持ちに駆られました。 (こ、これだけいるのなら1尾くらいは連れて帰ることができる!) しかし、しかし、やってみるとこれがうまく採れません!回りには何の障害物もなく、最高のシチュエーション。壁に沿って這うように逃げるだけの彼らなのに、コンクリートの継ぎ目に隠れたり、ヒョイッと網をかわされたり・・・。 でも「その時」は意外とすぐにやってきました。業を煮やした私と仲間が、操る竿先を我ら自慢のフレキシ網に変えたそのとたん、なんと!驚くべき容易さで網におさめることができたのです!
(つづく) (00.11.21) |
| ■紆余曲折V・・・ガンガゼ、ずんずん! こげ茶の地に鮮やかな黄色のライン・・・。 夢にまで見た「幻」の魚を捕まえた私たちは、しばらくの間その場に立ち尽くしました。振り返れば一瞬の出来事のようでもありましたが、そこに至るまでの経緯や、実際に網におさめるまでの時間を考えてみると、何だか随分と長い道のりであったように思えてならなかったからでした。達成感みたいなものに浸りたいという気持ちだったのでしょう。サイズにしたら、4,5cmほどの小魚なんですが、私たちにとってみれば、大きな大きなものであったのですからね。 さて時計を見ると、もうお昼近くです。 「お、こうしてばかりはいられない。あと2時間しかないぞ。さ、磯に行こう!!」 私たちは手際良く道具を片付けると、眼下に屯する他のハシナガウバウオを残して、今来た道を東へと戻ったのでした。 そうして目指す磯まであと2,3分の場所まで来たとき、助手席の仲間がふと言葉を洩らしました。 「あのさ、もう1ヶ所だけ。そこの船着場だけ覗いてみないか?」 それは普段ならためらうことのない申し出でしたが、私は一瞬、 (どうしようか?) と迷いました。なぜなら残された時間は僅かなのですから。仮にあとすぐで磯に着くとしても、準備や何やらで10分はかかってしまいます。もったいないじゃありませんか?でも私は考え方を変えることにしました。 (ま、いいか?ここで準備しちゃってから行っても良いし・・・) そして答えたのです。 「いいよ。意外と何かがいたりするかも知れないからね・・・」 結局それが良かったのですがね。 というのも、車から荷物を降ろしてその船着場を見てみると、まず右側にフウライとチョウハン。なんか幸先良いじゃありませんか?そして目を左に移して行くと・・・。小さな階段の下、水がヒタヒタと寄せている場所に、なんとハタタテダイの赤ちゃんがいるではありませんか!それも水深50cmもない場所に・・・。更にその横にいくつかいる「マックロ・クロスケ」ガンガゼのトゲの中には、再びハシナガウバウオ! 私は誰憚ることなく着替えにかかりました。フリチンです。前を隠すなんて面倒くさくって。でも目はハタタテとガンガゼに向けたまま。見失ってはなりませんものね。そして仲間の方が先に着替えを終え、ハタタテの捕獲へと「柄」付きの立て網を持って向って行きます。私は着替えにグズグズと手間取ってしまいましたが、何とか出で立ちを整え、おっとり刀で駆けつけますと・・・。ああ、大丈夫。仲間はしっかりとハタタテをgetし、携行生簀にそれを入れているところでした。 (やった!あとはウバウオだ!) 私は気になっていたガンガゼに目を向けました。が!いない!4、5個はいたと思われたガンガゼが、階段の下にいないのです!と、少し先にそれと思しきガンガゼの群れ!そうなんです。彼らは隊列を組んで、 (ずんずん!) という感じで、沖へと向って行進を始めたのです!もちろんトゲの間にハシナガウバウオを潜ませたまま。これには先に水に入っていた仲間も大慌て。彼は水の中から私に携行生簀を、私は彼らを追おうと焦る仲間に岸壁の上から目の細かい網を手渡しました。まだマスクを付けていない私は、彼に全てを託した方が得策だと判断したのです。ところが、たったそれだけのこと、時間にしたって1,2分のことなのに、彼らガンガゼはさらに、 (ずんずん!) と沖へと向って進み、深い淵へと姿を隠してしまっていたのです。 「は、早え〜!!」 意外な猛スピードぶりに、すっかり肝を抜かれた私たちでしたが、でも、 (くやしい〜!) とか、 (こんちくしょー) という気は、不思議と起こらなかったですね。なぜかというと、もちろんすでに1尾を捕まえているという安心感もあるのですが、少なくとも私には、 (ウニのような生物には「駆け引き」的な面白さがないんだもん・・・) という気持ちがあるからでして・・・。ふふふ、負け惜しみかもしれませんね。いやいや、およそ生き物とは思えないような彼らが、まるで私たちが見ていることを知っているように、 (スタコラサ!) とばかりに逃げる様が、悔しさを通り越してあまりにも可笑しかったからなんですね。ほんとうは・・・。 ま、その辺は今後の採集活動に活かして行くことにして、「syunさんのハシナガウバウオ紆余曲折の編」長々と失礼いたしました。
(00.11.23)・・・この編おわり |
| ■お魚になった、わ・た・し ようやく潮が引き始めた頃でしたでしょうか? 「syunちゃん!ここにはね、ハゴロモハゼがいるんだヨ!さあ、入ってみよう!」 そう言って仲間が指し示したのは、コンクリートの岸壁に囲まれた小さな小さな湾。私は、もう既に水に浸かりズンズンと進んで行くその人の大きな背中を見ながら、岸壁に設けられた小さな石段を1歩ずつ降りて行きました。 朝の水は、そこが泥底だなんて思えないほどに透き通っていて、濾過食者やカニさんたちが作ったであろう大小の穴が無数に見えました。 (う〜ん、ちょっとまだ寒いかな?) 私は少しためらった後、思い切って体全体を水に沈めてみました。するとあら不思議、ひんやりとしたのはホンの一瞬のことでありまして、むしろ陸にいた時の方が寒かったように思えます。 (あ、良かった〜) 私の口から思わず安堵の溜息がもれたのは言うまでもないことです。 (それにしても・・・) 私が思ったのは次のようなことでした。 (こんな泥地の湾で泳ぐなんて、なんか格好悪くなあい?) と、辺りを見渡してみるというと、そこには人っ子一人おりません。つまり、その心配は全く不要なことであったのでして、私は再び体を沈めて「ハゴロモハゼ探し」を始めたのでありました。 さて、透き通った水の向こう側の掃き均したように平らな泥底に無数にあいた穴。私はそれらを丹念に覗き込んで行ったのですが、どうもそれらしき魚は見当たりません。 (むむ、変だぞ?何にもいない・・・。まだ朝早いからかなあ・・・) 私はそう感じまして、少し方向を変えて、朝陽の当たっているコンクリートの護岸の方へと泳ぎ進んで行きました。そして、まもなくその壁に辿り着こうというその時・・・。私は妙な感じに襲われたのです。何か誰かに付きまとわれているような・・・。それは人とかそういう大きなものじゃなくて、犬とかネコとか、とにかくそのようなものが後から付いてくるような、不安の伴わない違和感みたいなものでありました。 (なんか変な感じだなあ?) 私は泳ぎながら首を傾げました。 と、おお!私の胸の下に1尾の山吹色の魚!それは体調7cmほどのカイワリの幼魚だったのです。これを何とお思いになりますか?そうですね?パイロット・フィッシュである彼女は、私のことをお魚さんだと勘違いして、ぴったりと寄り添って泳いでいたのですね。 (何時の間に?) 最初は不思議に思ったものでしたが、全く臆する風もなく、ある時は私の胸の下、またある時は目の前を、じゃれるように泳ぐ姿に私はスッカリ心を奪われてしまいました。だから続けて次のように思ったんですね。 (ハゴロモハゼもいないことだし、少し遊んでみようかな?) 私は試しに網をかざしてみました。するとやっぱり、思っていたとおり、逃げる様子もなく網の中に入ってしまいました。で、彼女を網から放してやると、面白いことにまたまた私の胸の下に入って、一緒に泳ぎはじめました。 これは面白いです。さっきも書きましたがね、魚じゃなくて、まるで犬かネコの類の「ペット」のようであるんですからね。 そうやって10分ほども戯れておりますと、遠くの方で私を呼ぶ声が聞こえます。 「お〜い、syunちゃん〜、こっちにネオンテンジクダイが沢山いるよお!早く来て手伝ってよお!」 そこで「カイワリちゃん」と遊ぶのを辞めた私は、呼ばわるその人のもとへと向っていったのですが、何だか残してゆくことがトテモためらわれたのはどうしてでしょう?一瞬のこと、 (連れて行ってしまおうか?) そう思った私なのでしたが、 (連れて帰っても、飼って上げられない) そう気付いた以上は、そのままにしておくのが良いような・・・そんな気がしたんですよね。 「その人」と一緒にネオンテンジクダイを捕まえて戻ってきたとき、もうすでに彼女はどこかに行ってしまっていまして、私はホロリとした気持ちになりました。なんでなんでしょうかね? やっぱり連れて帰るべきだったんでしょうか? 目に焼きつくばかりの山吹色があまりにも強烈過ぎて、カイワリちゃんのことが忘れられなくなってしまった私なのでした。
(00.12.01) |
| ■珍妙ハイブリッド 何時だったか?「ああ、勘違い」の項で、クィーン・エンゼルをサザナミヤッコと称して載せているテレホン・カードのお話をしたことがありますよね? ワタクシ、アレには結構笑わせていただいたものでしたが、ついこの間のこと、いつもの遠征先で似たような面白い物を見つけてしまいまして、それはあるホテルの壁に貼ってある「イラスト」なんですが、コレが珍妙というか何というか、 (おい、おい、ちょっとヘンテコすぎるぞ!) というくらいに不思議な「絵」なのでありました。そこで今夜はそのお話。 私たちが遠征に行くと、大抵は一つの宿泊先をベース・キャンプにして採集活動に励みます。でも今回はちょっとした理由があって、初日と2日目は違う宿を予約したのでありましたが、その初日の夜、現地で生活している友人と「焼肉ぱーちぃー」なんぞをやらかして、さてそれから食後の腹ごなしで、 「港を覗こう!」 と宿泊先近くの漁港への道を車で走っていた時のことでした。 「あれ?このホテル、確か海水タンクがあったよなあ?」 そう声を掛けてきたのは助手席で「良い気分」のA君です。ビールですっかり出来上がっている風ですが、その彼の視線の先にはホテルのロビーが見えています。落ち着いた照明の内部は閑散として、何だか淋しいような雰囲気を漂わせているようでした。 私は彼の視線を追うように、ハンドルを操りながらそのロビーの様子を横目で眺めました。確かに以前に訪れた時には大きな海水タンクがあって、ツノダシとかハタタテが泳いでいたような記憶がありました。が、サラッと見た限り、彼の言うとおり、今はソレらしきものの姿はありません・・・。あるのは「水草」水槽だけ。 私はそれを確認すると、 「手間だったんじゃないか?」 とワケの分かったような答えを返したのですが、さてそのホテルの前をとおり過ぎようとしたとき、再びA君が私に次のように同意を求めてきたのです。 「何時見ても変な『絵』だよな・・・?」 彼の見ていたのはそのホテルのシンボル・マーク。私も以前から、 (何か変だよなあ・・・) と思っていたのは、それが、 「何の魚を表現しようとしているのか、見れば見るほど分からなく」 なってしまう『絵』だったからなのです。 要するに、 (いったいこの『絵』の描き手は何を表現したいのか?) それが分からないんですね。 でも何故だかその時の私の頭に浮かんだのは、 (そんなことを知ったって仕方がないような・・・?) ということなのでありまして、逆に、 (たった1枚のヘンテコな『絵』でも、色々と思いを巡らしてみるのも面白いぞ!) って思えるのでありまして、そして実際不思議なことに、これがナカナカ味のある『絵』に見えて来ちゃったりして・・・。 私は視界から遠ざかって行く「おかしな『絵』」に最後の一瞥をくれて、緩めていたアクセルをポンッと強く踏み込みました。 すると、 「わはは!やっぱり『ハイブリッド』だな!こりゃ!」 気分よさ気なA君の笑い声は、少し開け放した窓からこぼれ、後方へと流れて行ったのでありました。
(00.12.10) |
| ■また今度の今度ナノダ 『画廊』のページでご紹介の「オウゴンニジギンポ」。私が彼に初めて会ったのは家族旅行で出掛けた南の島でした・・・。 家族の寝息を聞きながらゴソゴソと起き出した私は、まだ薄暗い漁港を、片手に竿、もう一方の手に携行生簀をブラ下げて歩いておりました。すると眼下の水面に見覚えのある魚影・・・。いえ魚影というのはイメージ的に違います。普通に言う『魚』とは大いに異なった姿をしたそれは「オイランヨウジ」であったのですからね。 何度も申し上げているように私は「ヨウジウオ」の仲間が大変に好きなのでありまして、今までにも「普通のヨウジウオ」の他に、「ヒバシヨウジ」、「アマクサヨウジ」、「ダイダイヨウジ」、「イシヨウジ」、それから「ワカヨウジ」などを捕まえては「通ぶって」喜んでおったのですが、どういうワケだかこの「オイランヨウジ」にだけは縁がありませんでした。 そんなワケで、 (ああ、何とかお目にかかりたいものだ!) と常々思っていたのですが、意外にも目の前を、 (連れてって!) とばかりに泳いでいるのですから、これはもう「千載一遇」の大チャンス!私は早速に網の組み立てにかかって、難なく初物の1尾をgetしたのでありました。さあこの時の私の嬉しさといったら、それこそ天にも上るような気持ちとはこのこと。すぐさまホテルに引き返し、寝ている息子を叩き起こして、 「どうだ!」 と見せてやろうとまで思ったほどでしたからね。 ところが、ふと私の頭をよぎったのは、 (もしかすると、もっと面白いのがいるかもしれない!) という期待感でした。そこでさらに岸壁の先の方へと歩いて行きますと、水面下約3、4mのところに、鼠色の地に、頭部が黄色い「魚」の姿が見えたのでした。それは紛れもない「オウゴンニジギンポ」。私の予感は見事に的中したのですね。 (うう、オイランヨウジに、オウゴンニジギンポ!こりゃ最高の日だ!) 私の興奮が最高潮に達したのは言うまでもありません。 が、再びしかし! 困ったことに彼がいる場所というのが、網をいっぱいに伸ばしても届きそうにない距離なのです。試しに少し離れたところでコッソリ練習してみたのですが、腹ばいになったところで一向に届きそうにもありません。これではどうにもなりません。私はこの有様に、 「ま、いいか?ジャマイカ族!」 などとワケのわからぬギャグを一人ごちながら、結局はコレを諦めたのでありました。 (また会える日がきっと来るからサ!それがいつかは分からないけどね。) ついさっきオイランヨウジを捕まえたばかりです。そんなに良いことばっかり続いたらバチが当たってしまいますものね? が、それから約半年後のある日、その場所とは全く違う、しかも遠く離れた磯で、私は再びこの「オウゴンニジギンポ」に遭遇してしまったのです。 それは某漁師さんに連れて行ってもらった「離れ小島」の磯でした。タイドプールのような場所は一つとしてなく、魚を採ろうと思ったら「潜る」しかないような、私にとっては全く不利な場所なのですが・・・。 私が網を手にノンビリとシュノーケリングしておりますと、ちょうど岩で囲まれた部分に見覚えのある姿。つまりそれがあの「オウゴンニジギンポ」であったのですが、そこは水深にして2〜3mはあろうかという場所。「潜り」の得意な人ならばワケのない深さでしょうが、タイドプール専門の私にはちょっと・・・。でも、シチュエーションとしては最高です。しかもビュンビュン逃げ回る風もありません。 そこで私は負けを覚悟でチャレンジしてみることにしました。幸いに「フレキシ網」の改良バージョンを持って来ています。 (コレに賭けてみるのも良いかも知れない) そんな思いもありましたからね。で、一旦潜り、岩にしがみ付きながら網枠を曲げ、波で動かないように裂け目にセットしました。そして浮上。水面で彼の出てくるのをジッと待ったのです。 そして5分ほど・・・。様子見で出てきた彼が網の近くまで来たとき!私は急降下攻撃をかけたのです。もちろん相手は「逃げ」に出ましたが、行く手を遮るように両手を広げて網の方へと追って行くと、意外にも素直に従うではありませんか! 私は息が苦しくなるのをこらえながら追って行きました。が、こちらが限界に達したのを知ってか知らずか、彼は網の入り口のところで私をじらすようにホバリングを始めました。 (あとひと息!) 私は自分自身に言い聞かせましたが、いかんせん苦しくてなりません。で、仕方なく浮上です。 さてそこで 「ひいはあ〜」 と呼吸を整えながら浮かんでおりますと、一旦は姿を見失った彼が「ノコノコ」という感じで出てきましたから、またもや大きく息を吸い込んで、ガバッ!・・・・・・・とやったんですが、やっぱりさっきと同じ様に失敗です。 私はそんなことを5,6回繰り返したものの、とうとう根が尽きて、なんだかどうでも良いような気持ちになってしまいました。さらにいつしか、 (もっと良いロケーションがあるに違いない!) つまり、 (ここにいるのなら、別の場所にもいるハズだ!) という、諦めの気持ちに包まれてしまっていたのです。 おりしも、 「お〜い!ちょっと手伝ってよう!」 という仲間の声・・・。私はその声をキッカケに、結局はそこを後にして仲間の加勢に向うことにしたのでした。 そしてもちろん加勢している間の私の頭の片隅には、あの「オウゴンニジギンポ」の姿が焼きついて離れなかったのでありまして、その後に同じ場所に戻ってみたりもしたのでしたが・・・。 (よう!また来たのかい?) と言わんばかりに上目遣いに見上げるその姿に、私の諦観は最後の最後とも言うべき「ダメ」をおされてしまって・・・。 「また今度の、今度ナノダ!」 そう呟くのが精一杯の私だったのでありました。
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| ■覆水盆に還る 採集家の誰でもが一度は経験をする「悔しさ」というものがありまして、さんざん苦労した挙句、やっとのことで一旦網にしたり或いは生簀に収めたりするものの、何かの拍子や油断で取り逃がしてしまう失敗というのがそれ。採った瞬間は最高潮に達したテンションが、急転直下泣きたくなるような気分にまでダウンしてしまうその落差というのは相当なもの。私なんぞ、ツメの甘さは「定評」のあるところですから、そういうことはしょっちゅうなのでありますが・・・・・・。 その年の秋、仲間と出かけた磯での出来事でした。ゴロタ石が広がるその磯の、木立の陰に荷物を下ろし、 「さてやるか!」 出で立ちを整え、ジャブジャブと水に浸かって行きますと、進むこと20mほどのところには大きな「根」。その回りには、私好みのテンジクダイ系小魚がワンサカとばかりに群れておりました。 そういった状況ならば、私としては先ずその彼らをターゲットにするところなのですが、さらに底の方へと目をやると、ちょうど4cm位の飼育するにはもってこいの『チリメンヤッコ』!しかもアーチ状の窪みを棲家(すみか)にしているのか、そこを出たり入ったりの絶好のシチュエーションです。私には不得手の「素潜り採集」となりますが、これはチャレンジしないワケには参りません。 私はプカプカと水に浮かびながら、フレキシ網枠を適度な角度に曲げ、さらにこれを彼の棲家の入り口にセットすべく潜りにかかりました。で、セットは無事完了。一度水面に戻り、チャンスを待ちました。 すると間もなく彼が現れて、スーッと網の方へと移動を始めました。不意に出現した「異物」に多少の戸惑いはあるようでしたが、意外なほど無警戒に近づいて行きます。私にはそれが、 (何者か?) てなことをチェックしに行っているようにさえ見えました。 しかしこれは私にとっては願ってもない成り行きです。そこで迷うことなく水面下に没し、 「それ!」 と追いますと、おお、難なく網の中へと自分から入ってくれたではありませんか! 私はもうスッカリ興奮しておりましたが(何といっても初物であったワケですからね)、こういう時は慌てるのが一番良くありません。で、慎重に網を扱い、枠をピッチリと閉め、彼を袋のネズミとしたうえで浮上をいたしました。念のためにもう一度網を改めてみましたが、ダイジョブ、ダイジョブ、ちゃんと網の中にいます。 さあこれで安心ですね。私は気分的にも落ち着いてきて、少し離れた仲間にコレを見せてあげようと、肝心の獲物を水から出さないよう、網を目の前に掲げて泳ぎ出しました。 とその時でした。一瞬態勢が乱れた瞬間にホンの僅かな隙間を掻い潜り、かのチリメン君が脱出してしまったのです!この時の私の狼狽といったら!慌てて空いた手を伸ばしてコレを手掴みしようと試みてみたものの、もちろんそんなことで捕まるわけがありませんし、彼ときたら一目散に水底めがけて猛ダッシュです。そして近くにあった「根」のてっぺんに開いている穴に逃げ込んでしまったのでした。 (万事休す!) この時の私は、まさにそんな感じ。 (ああ〜ん、せ、せっかく採ったのに〜!) 私は歯軋りをしました。 が!よくよく見ると、逃げ込んだ穴からは黄色の尾びれが見えるじゃありませんか!そう、つまり逃げ込んだまでは良かったのですが、その穴は全く浅いものだったので、チリメン君、姿全体を隠すことが出来なかったんですね。 さて私はどうしたか?といいますと、言うまでもありません、尾びれを出したままピクリともしない彼に近づき、やや強引ではありましたが、尾びれを摘んで引っ張ってみたんですね。そしたらいとも簡単に引き抜くことができちゃって・・・。つまり、 「チリメンヤッコの掴み採り」 ってヤツですかな?当然キズついてないかどうか確認をしてみましたが、ふふ、これもダイジョブ、ダイジョブ。 かくして覆水は盆に還っちゃった、というか生簀に入っちゃったワケですが、 「一粒で二度おいしい」 ってのは、このことなんですかね? もちろん私のテンションは、 (ここぞ!) とばかりにピンッと跳ね上がったのでありますが、 「だはは、だはは!!」 というだらしない笑い声が波紋に乗って仲間の耳に届いたかどうか?狂気がかった私には、どうでも良いことのように思えてならなかったのでした。
(01.01.03) |
| ■「マドンナ」に遭遇! 今夜は「採集」に関するお話ではありません。悪しからず。 何年前のことだったかはよく憶えていないのですが、「W」というショップに偵察に通っていた時期がありました。そのショップは「卸」をメインとするショップでしたが、当時は個人である旨を告げると小売にも応じてくれて、入荷日ともなると入り口には長蛇の列ができるほどの繁盛ぶり。家からそう遠くないというのも有難く、「確かな目」を以って利用するには、つまり状態の良いものを選ぶのなら、結構「役に立つ」ショップなのであったのです。 ある日曜日のことでした。少しばかり用事のあった私は車を走らせておったのですが、急に、 (あれ、確か昨日か今日は「W」の入荷日じゃなかったかなあ・・・?) ムクムクと変な病気が頭を擡(もた)げて参りまして、こうなるともう用事なんてのはどうでも良くなるものでして、 (なんか面白いのが入ってるかもしんない) この思いに駆られた私は、目的地へ通じるのとは違う道を走り始めていたのでした。 さて走りながら時計を見るというと、すでにお昼はとうに回っています。すると私はちょっと諦め気分になりました。 (うーん、もう片付いちゃってるかも・・・) 要するに、行ってみても「売り切れ」状態である可能性が大きかったものですからね。でも、せっかく途中まで来ていることですし、そのまま引き返すのも何だか悔しいじゃありませんか?そこで私は気を取り直して「W」に向ったのですね。 が、到着をしてみると、やっぱりお店の中は閑散としています。ガラの悪そうなお兄ちゃんたちが、隅っこの方で競馬新聞を咥えタバコで読んでたりしてる姿を見ればそれも歴然です。 それでも私は、 (なんか良いのいないかなあ・・・) なんて気持ちで店の中をフラついていたのですが、ふと横を見ると、マスターと話している一人の男性・・・。 (あり?どっかで見たことあるぞ・・・?) しかし私には彼が誰であるか?ということがとっさに浮かびません。 しばらくの間、私は彼のことを横目で盗み見しながら記憶を辿ってみました。しかしどうもハッキリしません。その彼は水槽に泳ぐ「シマハギ」の姿を見ながら、 「飼育が難しい魚なのかどうか?」 ということを一生懸命に店のマスターに尋ねている風でした。 (ああ、誰だっけかなあ・・・) 私はもどかしく思いながらも「観察」を続けておりましたが、もう一人、彼とは少し離れ、店の奥の水槽を覗き込む人物に気が付いて、そしてそれが誰であるかを瞬時に知ったとき、思わず叫んでしまったのでした! 「うう、うひふひふひ〜、ぎ、ぎぐぢももご〜!!!」 その神々しいまでの美しさといったら、私はなんと表現してよいやらワカリマセン。TVなんかよりズッとズッと綺麗でしたね。喩えようもないくらい・・・。 さすがの私もしばらくは凍ったように立ち尽くしてしまって、もう一人の男性が、あのプロゴルファーのN氏であったことに気が付いたのは、それから随分とあとのことでした。 そしてさらに後のことは・・・。 実はよく憶えておりません。「マドンナ」に遭遇したことが余りにも強烈な印象として残ってしまって、帰りの車までの出来事というのがスッカリ欠落しちゃってるんですね。 でもね、帰りの車の中で感じた次の点だけはよおく憶えておりますよ。 (おうちに帰りたくない・・・) 理由は・・・ご想像にお任せします。妙にハンドルが重かったのは言うまでもないことです。 しかしシーズン中の日曜日、プロゴルファーがあんなとこにいて良かったんでしょうかね?そういや最近はお名前を拝見いたしません。ここは一つ奮起を期待しましょうかね? ところでN氏、今でも魚飼ってんでしょうか?あの時声を掛けておけば良かったですね。 「あの、シマハギでしたら、一緒に採りに行きませんか?もちろん奥様もご一緒に。」 なんて・・・。 (01.01.06) |