----- 誤植の憂き目 … ホンソメワケベラ -----


 ホンソメワケベラは、他の魚の寄生虫を食べる奇妙な習性を持つ魚。紺地に水色のラインが走るだけの、どちらかというと単調な配色パターンだが、光の加減でメタリックに輝く様はまぶしいくらいだ。

 他の魚にはこの配色パターンが目印になるらしい。ホンソメワケベラを見つけると、近寄って身体を委ね、寄生虫を取ってもらう。これは自然の海でも水槽でも同じで、せっせ、せっせとわき目も振らずに仕事に励むホンソメ君と、陶然とした表情で寄生虫をとってもらう魚の対比は、見ていて微笑ましいというか、何というか、とにかく笑える。



ホンソメワケベラも「死滅回遊魚」の1種。独特の「ツンツク泳法」も、自分が掃除屋であることを他者にアピールする行動であるらしい。

 さてこのホンソメワケベラ、行動のほかにも面白いエピソードがある。
 もともと彼の名前は「ホソソメワケベラ」(わかりにくいですか?じゃ、ひらがなで書きましょう。「ほそそめわけべら」です)だった。ところが、ものの本に載るときに誤植の憂き目に遭い、「ソ」と「ン」を間違われて紹介されてしまった。そしてそれがいつしか標準和名になった、というわけだ。
 
 誤植がきっかけで名前を変えられてしまうなんて可哀想、とは思っても、それは人間の世界での話。彼は我関せずと、一生懸命にお仕事に励む毎日なのである。

Vol.10
02.02.13



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