----- ウニと一緒に逃げたヤツ … ハシナガウバウオ -----

 ウバウオという魚がいます。和名の由来は知りませんが、英名はClingfishで、直訳すると「くっつき魚」。大変に強力な「腹吸盤」というのを持っていて、それで岩などに吸い付く習性がある魚です。
 
 さて、このウバウオの仲間にハシナガウバウオというのがおりまして、今日はそのお話。

 今から2年前。仲間と南島遠征をしたときのことです。
 小さな船着場を偵察していると、水底にガンガゼの一団がおりました。ガンガゼというのは長い棘を持ったウニ。その棘には毒があって、刺されるととても痛いので、普段は相手にすることなどはありませんが、なにか予感めいたものがあったのか、我が仲間は目を凝らして見つめることしばらく……。

 すると、
 「お、ハシナガウバウオがいるぞ!」
の声。駆けつけると、棘の間に魚らしきもの。それは確かにハシナガウバウオであったのでした。濃茶の地に黄色のラインはなかなかに映え、観賞魚としての価値は十分過ぎるほどの美しい魚です。こりゃ捕獲しないわけには参りません。コンディションとしては最高です。ガンガゼごと網で掬ってしまえばこちらのものなのですからね。

 ところがです。そんな僕等の気配を察したか、ガンガゼの一団は棘の間にハシナガウバウオを抱いたまま、ズンズンと深みの方角へと移動をはじめたのでした!それも結構なスピードで!
 これには大弱りです。慌てて採集作業にかかったものの後の祭り。かの一団は手間取る僕等を尻目にズンズンと深いほうへ…。とうとう網におさめることは出来なかったのでした

 しかし一向に悔しい気がしないのが不思議といえば不思議。
 なぜなのだろうか?と考えてみると、ウニという表情のない生き物のスタコラサ!とばかりに逃げる様がたまらなく可笑しくて、悔しさに勝ってしまったからなのだと思うのですね。

 かくして、採集という趣味は採れても採れなくても、まったく面白いものだということを教えてくれたこの一件。僕はいつまでも忘れないと思うのでありました。



別の年に捕まえたハシナガウバウオ。水槽で飼っているとガラス面にひっついている姿を観察できる。微小生物が湧く水槽で飼ってやれば、長期飼育が可能だ。画像は、向って左が頭だよ。くちばしが長いウバウオだから「ハシナガウバウオ」ってワケ。



移動の様子。
1)の黄色の部分にハシナガウバウオが
  いた。
2)手間取っている間に「ずんッ」ってな
  感じで移動した
3)結局「ずんッ、ずんッ」で逃げられた。
1から3まで、ほんとにわずかな時間だった。恐るべしガンガゼ!





 
Vol.26
02.06.29



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